船と顕微鏡 ● 船と顕微鏡 船と顕微鏡の話である。船といっても「矢切の渡し」ではない。 矢切の渡しだとサイエンス&テクノロジーと言うよりも、昭和の情念の話になってしまう。 それではと、マグロ漁船とかクルーズ船なら確かにわかりやすい。 しかしここはRED BOOK NIKKOR部屋である。どうも方向性が違う気がする。 一般人では乗船する機会はまずないが、いわゆる研究船の世界で顕微鏡を考えてみたい。 南デンマーク大学理学部准教授の小栗一将先生(理学博士)から船の画像をご提供いただいたので紹介したい。 「船と顕微鏡」。 かなり無理な舞台設定である。 小栗博士の古巣である、JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)で撮影された画像である。 念のため申し添えるが、 ここに掲載している画像および記事本文は、JAMSTEC 広報課様の許可承諾をいただき掲載している。 ● 「かいれい」と「かいめい」 深海調査研究船「かいれい」と海底広域研究船「かいめい」。 船の説明は正確を期するために、JAMSTECのサイトから説明文を引用させていただいた。
深海調査研究船「かいれい」 深海調査研究船「かいれい」は、 最大潜航深度7000mまで潜航調査することができる無人探査機「かいこう7000II」の支援母船として、 海溝域の海底調査を行っている。 また、マルチチャンネル反射法探査システムを搭載し、 形状が複雑な沈み込み帯の海底下深部の構造調査を行っている。 他にも深海底表層、断層地形や地質構造を解明するための様々な機能を持ち、 深海・海溝域の総合的な調査観測研究を行うことができる。
海底広域研究船「かいめい」 海底広域研究船「かいめい」は、海底資源の分布等海底の広域調査を効果的に行うとともに、 鉱物・鉱床の生成環境を捉える総合的科学調査を可能とする最新鋭の研究船である。 最先端の調査機器を装備し、採取した試料を新鮮な状態で分析・解析できる洋上ラボ機能を有するとともに、 汎用研究船としての機能を兼ね備え、気候変動研究、地震・津波に対する防災・減災研究にも貢献している。
JAMSTECの研究船とニコン携帯顕微鏡 H型 研究船を背景にしたニコン携帯顕微鏡 H型の姿は美しい。 ちなみにここに登場しているH型は初期型である。 丸いプレートにある銘がNippon Kogakuのいわゆる富士山マーク、 クレンメルが板バネ、接眼レンズのトップの加工が角ばっている、 照明スイッチが白色、などいくつか初期型オリジナルの特徴を満たしている。 ざっくり言うと、丸いプレートにある銘がNikon、 クレンメルがゴム押さえ付きの構造、接眼レンズのトップの加工に丸みがある、 照明スイッチが黒色、などの特徴は後期型となる。 ニコン携帯顕微鏡 H型は、個人で改造を加えているケースを目にする。 初期型の本体に後期型の部品を乗せ換えたりしている例もある。 文献等でいくつかの種類に分類している事例を承知しているが、私は参考程度に留めている。 正確を期するならば、元箱の形状形式や、元箱の底に手書きされているシリアル番号の筆跡、 本革ケースの色(最後期は黒)まで加味する必要があり、なかなか難しい。
ニコン携帯顕微鏡 H型 ● 新青丸 オレンジ色の夕日にJAMSTECの研究船が美しい。 この場に顕微鏡があったらきっと大漁だろう。 と思ったら、いた。航海のご無事と安全を祈る。
東北海洋生態系調査研究船「新青丸」 「新青丸」は、「東日本大震災復興関連事業」として、 また、東日本大震災の地震・津波の影響で海洋環境が劇的に変化した東北沖の漁場復興に、 大学等に蓄積された科学的知見を有効に活用するため復興支援のネットワークとして構築された 「東北マリンサイエンス拠点形成事業」においても活用される船舶として建造された。 東北地方の新たな発展に寄与すると共に、 長きにわたり活躍し2013年1月に退役した「淡青丸」の後継船という意味も込めて「新青丸」と命名された。
美しい船と顕微鏡のある風景
「新青丸」とニコン携帯顕微鏡 H型
ニコン携帯顕微鏡 H型 ● しんかい6500 テレビのニュースやプチ科学番組、さらには新聞・雑誌によく登場するので、 一般にもよく知られているのが「しんかい6500」だろう。 耐圧殻コクピット内の質実剛健無機質丸出しな操船機器を背景に、 ニコン携帯顕微鏡 H型の姿が際立って美しい。
有人潜水調査船「しんかい6500」 「しんかい6500」は、深度6,500mまで潜ることができる潜水調査船である。 1989年に完成し、日本近海に限らず、 太平洋、大西洋、インド洋等で、海底の地形や地質、深海生物などの調査を行い、 2017年には通算1500回目の潜航を達成した。 現在運航中の大深度まで潜ることのできる有人潜水調査船は、世界でも7隻しかない。 その中で「しんかい6500」は、日本のみならず世界の深海調査研究の中核を担う重要な役割を果たしている。
「しんかい6500」とニコン携帯顕微鏡 H型 ● よこすか 「しんかい6500」が子供だとすると、彼女のお母さんは「よこすか」となる。
深海潜水調査船支援母船「よこすか」 深海潜水調査船支援母船「よこすか」は、 最大潜航深度6500mの能力を持つ世界最高水準の大深度潜水調査船 「しんかい6500」の支援母船として深海底の調査を行っている。 他にも深海底表層・断層地形や地質構造を解明するための様々な機能を持ち、 深海・海溝域の総合的な調査観測研究を行うことができる。
「よこすか」とニコン携帯顕微鏡 H型
ニコン携帯顕微鏡 H型
「よこすか」の後ろ姿にニコン携帯顕微鏡 H型
昭和三十年代の日本映画のラストシーンは港に船ときまっている。 それも船の到着、入港ではなく、船は出てゆく出港がお約束である。 安定安心よりも、これから先どうなるか未来志向なのである。 そんなシーンにはニコン携帯顕微鏡 H型がよく似合う。 ● 船と顕微鏡 巨大で豪華なクルーズ船にくらべたら科学研究船の乗り心地は想像がつく。 静止した据置型の顕微鏡だと荒れる航海の中で検鏡するのはかなり難しそうだ。 船酔いも半端でないだろう。 ところが、ニコン携帯顕微鏡 H型は手で持てる。 ヒト(観察者)と顕微鏡は一体になる。 接眼レンズを覗くと、顕微鏡も観察者も同じく揺れて、問題なく検鏡できるという。
JAMSTECとニコン携帯顕微鏡 H型
船とニコン携帯顕微鏡 H型 バルナック型ライカのカメラに似て、手で持って使うことを前提に設計されたニコン携帯顕微鏡 H型は、 野帳とともに今でも科学者・研究者のフィールドバッグに収まっている。 どんな場所でも顕微鏡観察が可能となるのは強みだ。 ニコン携帯顕微鏡 H型の試作機が、第二次南極地域観測隊(1957年)で使われたと記録が、ニコンの社史に示されている。 昭和三十年代は三丁目の夕日のような時代から、半世紀以上も経過したこの時代になっても、 フィールド研究の現場でニコン携帯顕微鏡 H型を使っている人たちがいる。 私はそんな人たちをたくさん知っている。
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