APO EL Nikkor 105mm F5.6N     4

元箱とレンズ揃い一式

コレクターズガイド

レンズ収集家のために完品の姿を説明しておきたい。 元箱、検査合格証、プラスチック製収納ケース。レンズ本体。 キャップではなくフタ、フタ押さえのスポンジ。 Nikon のロゴ入りシリカゲル。以上で揃い一式の完品となる。

元箱とレンズ揃い一式

レンズは未使用の新品、デッドストック、 北海道の天然防湿庫で静かに眠っていたもので完璧な保存状態だった。

レンズ本体に刻印された製造シリアル番号。 元箱にも製造シリアル番号が印字されたシールが貼ってある。 検査合格証にも同じく製造シリアル番号がスタンプされている。 番号がすべて同じであることは重要である。

元箱とレンズ揃い一式

製造シリアル番号が本体と元箱と一致していることが重要と書いた。 そんなの当たり前でしょう、と考えるのが普通である。 ところが、私が実際に体験した話。1979年のことだった。 ニコンF2チタンボディが限定発売となり購入した時の話である。

出来立てのカメラを店で受け取り、自宅に飛んで帰り、開封の儀。 よく見たら、カメラのボディに刻印された製造シリアル番号と、 元箱に貼られたシールの番号が一致していなかったのである。 すぐに購入したカメラ店に相談したら、 後日、正しい番号が印字されたシールを店で受け取ることができた。 元箱には自分でシールを貼った。そんなことがあった。 気にしない方はそれでよい。 気にしない方は革靴を右と左、逆に履いても気が付かないものだ。 でも番号は一致していた方がよい。気分の問題ではあるが。

検査合格証

1980年代。検査合格証のサインはこの時代、森さんである。直筆サイン入り。

検査合格証の裏面

サイズの比較

1971年に発売された旧タイプのアポエルニッコール 105mm F5.6と、 1980年にデビューした新タイプとなるアポエルニッコール 105mm F5.6Nの、 サイズの違いを見ていただきたい。 重量では半分以下となっているが、その外観を比べるといかに小さいかがよくわかる。

旧タイプ(左)と新タイプ(右)の比較
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35.5mmフィルターのこと

本記事ではアポエルニッコール 105mm F5.6Nの現物をもとに話を進めている。 第二世代は Newバージョンの末尾に Nがついたアポエルニッコール 105mm F5.6Nである。 このレンズは実際に使い始めてすこしばかり困ったことがあった。 アタッチメントサイズ、つまりフィルター径が 35.5mm P=0.5 なのである。

いまでこそたくさんのメーカーから豊富に 35.5mmフィルターから出ているが、 レンズを入手した2005年当時は少数派だった。 なんとかオリンパス光学製のスカイライトフィルターを手に入れてみたものフードがない。 オランダのドクターから送っていただいた、 ツァイスの工業用レンズの専門資料ホワイトペーパーをみてみると、 フィルター径が 35.5mm P=0.5 なのは、S-PLANAR 60mm F4、S-ORTHOPLANAR 50mm F4、 それに S-ORTHOPLANAR 60mm F4の 3本ぐらいではないか。

ニコン Z 6 を購入してからは、 アポエルニッコール 105mm F5.6Nでヌケの良いスコーンとした絵が撮りたくなり、 レンズフードを探した。 結局期待していた深めのフードが見つからないので、 ステップアップリングで、35.5mmを 40.5mmに拡張することにした。 最初にアマゾンで購入したのは合わなかった。 35.5mmではあるがネジピッチが P=0.75だったのである。 ねじ込んで途中でスタックしてしまうのはよろしくない。

35.5mm P=0.5 → 40.5mm P-0.5 ステップアップリング

結局、カメラアクセサリーの在庫が豊富な名古屋の八仙堂さんで購入。 35.5mm P=0.5 径を 40.5mm P=0.5 径にスムーズに変換できた。 40.5mm が確保できれば現行品のニコン純正のフィルターを装着できるし、 40.5mm から 52mm の変換は簡単だ。 すぐに手持ちの、ニコン製 52mm径汎用フードが使えるようになった。

ちなみに、35.5mm径のアポエルニッコール 105mm F5.6Nには、 ピタリと装着できるニコン純正のキャップは存在しない。 収納時には、丸い大きなプラ板の蓋をレンズ前玉の上にポンと置き、 その上に丸く切ったスポンジを入れて、 プラスチックケースのフタをぎゅっと閉めて完了となる。これで正規。 なんとも芸がない。詫び寂びをかんじる。

しかし、最初からフィルター径を一般的な 40.5mmにしてほしかった。 なぜレンズキャップさえ用意できないような 35.5mm径にしたのであろうか。 日本光斈の時代からニコンがこの 100年間に製造したレンズでフィルター径が 35.5mm径なのは、 このアポエルニッコール 105mm F5.6Nだけである。 だれも褒める人がいないだろうから私が言う。あんたはエライ。

レンズをリバースする

意外と知られていないようなので言及すると、 アポエルニッコール 105mm F5.6Nはレンズ前玉まわりの化粧リングのねじをゆるめて外すと、 ライカL39スクリューマウントが出現する。 ほんらいの目的はレンズを逆さにして(リバースして)カメラにマウントするための装備である。

外した化粧リングはそのまま今までマウントだったところにねじ込めばよい。 今までマウント側だった後玉が前玉になるわけだが、 ちゃんと 35.5mmのフィルターねじが切られているので、 フィルターとかステップアップリングの装着が簡単にできる。

レンズをリバースする

アポエルニッコール 105mm F5.6Nは対称型のレンズである。 レンズをリバースした状態でも無限遠はきちんと出るし性能は変わらずよく写る。 しかしながら、接写ではさらなる威力を発揮するようで、 NikonGearなど海外のマニヤが集まる国際掲示板には、 アポエルニッコール 105mm F5.6Nをリバースして、 驚くべきシャープな画像をもってマクロ撮影をされている方が登場している。

リバースしたアポエル 105mm F5.6Nの姿

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