APO EL Nikkor 105mm F5.6N

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

A small but Big Optical Jet Engine
APO EL Nikkor 105mm F5.6N
Excellent Micro contrast Lens
You can get
Brilliant and Gorgeous Images

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

北の国で眠っていたアポエルニッコール

すでにはるか昔は2005年の話である。2005年(平成17年)初夏の候だった。 北海道にお住まいの当サイトを応援いただいている方から、 レンズの検査合格証(通称サガワカード)について問合せを受けた。 アポエルニッコール105mm F5.6Nに付いていたという検査合格証のサインのことなど、 そんな内容だったと思う。

ご縁はスピードが命。 この小さなご縁がきっかけとなり、2日後には事態が急速に展開し、 なんとレンズをお譲りいただくことになった。 最初の問合せをいただいた日からじつに5日後。 レンズを梱包したゆうパックの箱が手元に届いた。 ずっと探し続けていたレンズがストンとやって来たのである。 ご縁はスピードが命である。

「北海道は全体が防湿庫みたいなところですから」とのお話をくださった。 たしかに、レンズは未使用の新品、デッドストック、天然防湿庫で完璧な保存状態だった。 もちろん、元箱、検査合格証、Nikon シリカゲル、プラスチック製収納ケース、 キャップではなくフタ、フタ押さえのスポンジまで揃いの欠品無しの完品である。 北の国で眠っていたアポエルニッコール105mm F5.6Nはミュージアムコンディションだった。

元祖「レンズポエム」
アポ エル ニッコール 105mm F5.6N
(撮影年は2005年12月)

どこに行くにも

私が初めてデジタル一眼レフを購入したのは2005年の1月のことだった。 普及機としての位置付けの機種であったと思うが、ニコンD70である。 さっそく、アポエルニッコール105mm F5.6NをニコンD70に装着して撮影する日々が続いた。 シンプルなセットで広義の無限遠も出るし、 もちろん接写撮影では優れた絵が出てくる万能レンズだった。 小さく軽い超高性能レンズということで、どこに行くにも持って行ったものだ。

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N
(撮影年は2005年12月)

ニコンD70の絵(撮影年は2005年12月)

この時代なのでフィルムで撮影したような雰囲気がほしくて、 カメラはマニュアルモードに設定し、ホワイトバランスを晴天、 露出は0.7段から1段ほどアンダーに切り詰めて撮影した。 CCDの特性というよりも、画像処理ソフトウエアのコンセプトなのだろう。 かなり落ち着いたトーンの絵が出てきた。

ニコンD70の絵(撮影年は2005年12月)

ニコンD70の絵(撮影年は2009年10月)

ニコンD70の絵(撮影年は2009年10月)

スマホの彩度の高いメリハリのある絵がよい写真と一般ピープルに認識されているのは承知しているが、 実際に肉眼で見た風景の印象(色彩)はこのとおりだった。

数学的無限遠の世界

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N
(撮影年は2009年8月)

2009年の夏に開催された 特別展「小穴純とレンズの世界」展 。 上の画像は、会場となった東京大学駒場キャンパスで撮影した。 会期中「小穴純とレンズの世界」展には、 おかしなレンズを持ったおかしな人たちが多数集まったと当時話題になったものだ。

2012年になると、本格的天体写真をアポエルニッコール105mm F5.6Nで撮影する方が出現した。 日本の天体写真愛好家の方であるが、星雲を工業用ニッコールレンズで撮影するとは思いもしなかった。 それも極めてクオリティの高い美しい星野写真である。 「Star Cloud Apo-EL-Nikkor 105mm F5.6」で検索していただけると、 flickr に投稿された画像を見ることができる。

よく無限遠撮影が可能と言うが、たかが134キロメートル程度で無限と言われても困る。 こちらは253万光年とか距離のスケールから言って格が違う。 最高の性能を求めた結果としてのアポエルニッコール105mm F5.6Nだったのである。 このいわば事件をきっかけに、 急激に市場でこのレンズの人気が高まり再評価が始まった印象と記憶がある。

ニコン Z 写真帖

ニコンのミラーレス機ニコン Z シリーズと工業用ニッコールレンズの相性はすこぶるよろしい。 アポエルニッコール105mm F5.6Nによる撮影画像のアガリを見ていただきたい。 撮影に使用した機材は以下のとおり。シンプル極まりない。

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

ニコン Z 6 にはニコン純正のFTZマウントアダプターを装着。 カメラボディがFマウントになったので、 ニコンの接写リングE2で延ばしてBORGのM42ヘリコイドを入れた。 M42ヘリコイドのカメラ側はニコンFマウントで、 レンズ側がライカL39スクリューマウントにセットしてある。 そのままアポエルニッコール105mm F5.6Nを装着した。

Nikon Z 6 + FTZ + E2 + BORG M42 (F to L39) + APO EL 105mm F5.6N

お花のアップの接写撮影時にはE2リングの先にPK-12リングを1個追加した。 上の画像はPK-12が入った状態で、八重桜のアップを撮影した時の撮影体勢となっている。

レンズには後述するが特殊な35.5mm - 40.5mm のステップアップリングを取り付け、 ニコン純正の40.5mm NCフィルターを付けた。 さらにマルミ光機製の 40.5mm - 52mm のステップアップリングを取り付け、 画像のヌケがよくなるので深めのフードを装着した。 旧製品ではあるが手元にあったニコンのHS-14を選んだ。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/640 sec. +1.0

いきなりこんな素敵なフレッシュな絵が出てきて驚いた。輝いている。 生きた空気が写っている。酸素分子も見える。 すべてJPEGの撮って出しである。なにも手を加えていない。 アポエルニッコール105mm F5.6Nの色彩表現へのこだわりは只者ではない。

ブリリアントでゴージャスな色彩

2010年頃の話と記憶しているが、優れた性能を有するデジタル一眼レフ機が出揃った背景で、 海外では本格派フォトグラファーの間で、 高性能レンズの一つの評価指標として 「マイクロコントラスト(Micro contrast)」を提唱する人たちが出てきた。

数値的な測定値では表わせない概念ではあるが、 アポエルニッコール 105mm F5.6N を使うようになってからは、 マイクロコントラストに優れたレンズというものが理解できるようになった。 画像処理ソフトでこのあたりは簡単に操作できてしまうが、 レンズネイティブで優れたマイクロコントラスト特性を有する描写を見ていただきたい。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/500 sec. +1.7

アポエルニッコール105mm F5.6Nの色収差補正波長域はきわめて広い。 近紫外域(380nm)からなんと近赤外域(750nm)までの色収差が補正されているのだ。 この総天然色映画のようなブリリアントでゴージャスな色彩はどうだ。 ファインダーを覗いただけでも何か凄みのある映像だということがわかる。 肉眼で見た感動的な色味がそのまま再現できる。 アポエルニッコール105mm F5.6Nは只者ではない。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/640 sec. +1.7

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/500 sec. +2.0

アポエルニッコール105mm F5.6Nの設計目的は、 忠実度を高め、より正確な色彩と豊かなトーンを再現するレンズの実現である。 アポエルニッコール105mm F5.6Nによる「空気撮影」がこれだ。 もうレンズポエムまる出しの描写なのである。 二次元のデジタル画面から咲き誇る花の香りがただよってきた。 きわめてデリシャスな色彩。高精細な生命感と情感表現はさすがだ。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/640 sec. +1.7

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/640 sec. +0.7

理想的アポクロマート

ここでレンズのことを説明しておきたい。 そもそも、アポエルニッコールとは何か。 アポニッコールと違うのか。エルニッコールとの関係性はどうなんだろう。

アポエルニッコール105mm F5.6は2種類存在する。 アポエルニッコール105mm F5.6とアポエルニッコール105mm F5.6Nである。 ニコンでは前者を旧タイプ、末尾にNがついている後者を新タイプと称している。 末尾のNはNewタイプ(バージョン)という意味だと思う。

正確に話をするために、一次資料である日本光学が発行した資料から、 旧タイプの製品セールストークをまとめた。 色枠内に原文のまま引用させていただいた。

アポ・エル・ニッコール

小型のカラー原稿をもとにして10倍前後の拡大印刷版を造るには、 従来エル・ニッコールが使用され好評を得ておりますが、 技術の飛躍的な進歩とともに、さらに高性能なものが要求されるようになってきました。 これに応えるべく開発されたレンズがアポ・エル・ニッコールです。

アポ・エル・ニッコールは特殊な光学ガラスの組合わせにより、赤、緑、青 3色だけでなく、 可視光全体にわたり色収差を除去した拡大分解専用レンズです。 従って、大きく拡大しても色によるピントのずれや寸法誤差はありません。 また、このレンズでは画角を欲張らず、 必要な画面内において他の収差も良好に補正されているため、 現在得られるどんなカラー原稿をも上回る高い解像力をもっております。

さらに表面反射によるカブリを防止するため、レンズ面に多層膜コートが施されており、 原稿のディテールを忠実に再現するヌケの良い画像が得られます。 アポ・エル・ニッコールは、これらのすぐれた特性により、 ほぼ完全な拡大分解製版を可能にします。

特長

●拡大分解専用のレンズで倍率変化による差が少ないため、 指定倍率内なら、ほぼ完全な拡大分解製版が行なえます。

●理想的アポクロマートですから拡大にも色によるピントのずれや寸法誤差はありません。

●開放絞りで、色収差その他の諸収差がほぼ完全に補正されていますので、 次のようなお使い方をおすすめします。

  レンズの焦点距離と絞り   原稿サイズ
  APO EL 105mm F5.6   35ミリ判
  APO EL 105mm F8   6 X 6 判
  APO EL 210mm F5.6   6 X 6 判、35ミリ判
  APO EL 210mm F8   4 X 5 インチ判

出典:
日本光学工業株式会社発行 「Nikkor」カタログ
昭和49年(1974年)2月1日発行
資料コード 8200-01G JC 403-2 2

次に新タイプの説明を見ていただこう。 きわめて優れた性能をこれでもかとてんこ盛り。 特定のマニヤ層に向けて、もう煽りに煽りまくっていて実に好ましい。

アポ・エル・ニッコールについて

アポ・エル・ニッコールは、カラー原稿の、より精密で色収差の小さい拡大像を得るために 研究開発された高解像力アポクロマートレンズである。 アポ・エル105mm F5.6Nと210mm F5.6Nは旧タイプのアポ・エルに替わり、 昭和55年に性能がさらに向上され、かつコンパクトになって登場した。 オルソメタータイプをさらに発展させた4群8枚構成で、 つぎに述べる2つの大きな特長をもっている。

(1)自社製の異常分散の性質をもつEDガラスを2枚使用することにより、 アポクロマートの色収差補正がなされている。 このため、波長380〜750nmの範囲にわたり軸上色収差、 倍率色収差ともに完ぺきなまでに補正されている。

(2)コマ収差、像面湾曲等の諸収差がきわめてよく補正されているので、 絞り開放から非常に高い解像力をもち高コントラストの像を生み出す。

上記の大きな特長に加えて、対称型のレンズ構成を採用しているので、 大きな包括角度をもつにもかかわらず歪曲収差が非常に小さく、 歪みのない像を再現する。 また倍率が変化しても性能の変化が非常に小さいので、 基準倍率以外の倍率においても優れた性能を発揮する。 ニコン独自の多層膜コートと優れて内面反射防止技術により、 コントラストを低下させるカブリなどもきわめて少ない。

このほか、引伸し用レンズとして必要な要素を充分考慮して設計がなされており、 周辺光量も充分である。 したがって、カラー原稿からの精密な引伸し作業にはもちろんのこと、 写真製版での精密カラー拡大分解等に最適で、その性能を遺憾なく発揮する。 黒白の拡大作業にも優れた性能を示すことはいうまでもない。

ますます高解像力でしかも色収差の少ないレンズが要求されているので、 このアポ・エル・ニッコールの活躍する場がさらに広がっていくであろう。

●アポ・エル・ニッコール105mm F5.6N

絞り開放で6×6cm判、F8で6×9cm判をカバーする高性能カラー用引伸しレンズである。 従来のアポ・エル105mm F5.6に替わり、さらに性能を向上させ、 かつコンパクトにして昭和55年に発売された。 旧タイプはF8に絞っても6×6cm判しかカバーできなかったので、 この新タイプはその使用可能範囲を大きく広げたことになる。

4群8枚構成で、そのうち2枚に自社製EDガラスを使用することにより、 2次スペクトルを除去したアポクロマートになっているので、 波長によるピントの差がきわめて小さく、また画面全体にわたり色のにじみがほとんどない。 そのうえ、コマ収差、像面湾曲等の諸収差が非常に小さいので、 絞り開放からきわめて高い解像力と高コントラストの像を再現する。

周辺光量も充分で、F8に絞れば6×9cm判画面内で口径食は0%になる。 歪曲収差もきわめて小さい。 したがってカラー伸しだけでなく、 写真製版の精密カラー拡大分解や精密拡大複写等に最適である。 前後部両府にライカマウントのネジが切ってあり、 ライカマウントの装置にはどちら側からも簡単に取付く。 基準倍率は10倍、標準使用倍率は5〜20倍である。 重さは140gで旧タイプの半分以下である。

出典:
ニコンテクニカルマニュアル
*英数字の大文字と小文字の使い分けは原文のまま。

テクニカルデータ

前で述べたとおり、アポエルニッコール105mm F5.6は2種類存在する。 アポエルニッコール105mm F5.6とアポエルニッコール105mm F5.6Nである。 ニコンでは前者を旧タイプ、末尾にNがついている後者を新タイプと称しているのでこれに従う。 まずは旧タイプのレンズについて説明しよう。

(1)旧タイプのレンズ

アポエルニッコール105mm F5.6

−焦点距離: 105mm
−最大口径比: 1 : 5.6
−最小絞り: F45
−絞り目盛: 1/3づつのステップ
−レンズ構成: 4群8枚
−基準倍率: 10X
−標準使用倍率範囲: 5X〜20X
−画角: 40度
−色収差補正波長域: 380nm〜700nm
−口径蝕: 0%(F8にて)
−歪曲収差: +0.06%
−原稿サイズ: 80mm⌀
−基準倍率における原板から画像までの距離: 1265.6mm
−フィルター径: 40.5mm P=0.5mm
−マウント: ライカL39スクリューマウント
−重量: 315g
−直径: 51mm
−長さ: 60mm
−発売時期: 1971年6月
−当時の価格: 207,000円(1974年6月)
−当時の価格: 207,000円(1977年12月)

(2)新タイプのレンズ

レンズ本体にNの刻印が入っているわけではなく、カタログや価格表などの紙資料だけに見ることができる。 外観が大幅に異なる。性能諸元で注目すべき点は、色収差補正波長域である。 近紫外域の380nmから近赤外域の750nmまである。750nmまで補正するレンズはあまり見当たらない。 このあたりはプリンティングニッコール(なんと800nmまで補正)と同じ意気を感じる。

アポエルニッコール105mm F5.6N

−焦点距離: 104.8mm
−最大口径比: 1 : 5.6
−最小絞り: F32
−絞り目盛: 1/3づつのステップ
−レンズ構成: 4群8枚
−基準倍率: 10X
−標準使用倍率範囲: 5X〜20X
−画角: 47度
−色収差補正波長域: 380nm〜750nm
−口径蝕: 0%(F8にて)
−歪曲収差: -0.07%
−原稿サイズ: 80mm⌀(F5.6にて)
−原稿サイズ: 100mm⌀(F8にて)
−基準倍率における原板から画像までの距離: 1265.3mm
−フィルター径: 35.5mm P=0.5mm
−マウント: ライカL39スクリューマウント
−重量: 140g
−重量実測: 139.5g
−発売時期: 1980年
−当時の価格: 207,000円(1987年1月)

アポエルニッコール105mm F5.6Nのレンズ構成図

価格という情報は時代背景や製品の立ち位置を理解するのに役立つ。 1987年当時の価格は20万7000円。 時代のフラッグシップ機ニコンF3HPのボディ価格149,000円より高価だった。 業務用なので、と言われてしまうとそれまでだが。 ちなみに、1987年当時最新鋭の通常のEL Nikkor 105mm F5.6Nが27,500円だった時代である。 かるく7倍を超える価格差がある。やはり別格と言うしかないだろう。

サイズの比較

1971年に発売された旧タイプのアポエルニッコール105mm F5.6と、 1980年にデビューした新タイプとなるアポエルニッコール105mm F5.6Nの、 サイズの違いを見ていただきたい。 重量では半分以下となっているが、その外観を比べるといかに小さいかがよくわかる。

旧タイプ(左)と新タイプ(右)の比較
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

35.5mmフィルターのこと

本記事ではアポエルニッコール105mm F5.6Nの現物をもとに話を進めている。 第二世代はNewバージョンの末尾にNがついたアポエルニッコール105mm F5.6Nである。 このレンズは実際に使い始めてすこしばかり困ったことがあった。 アタッチメントサイズ、つまりフィルター径が 35.5mm P=0.5 なのである。

いまでこそたくさんのメーカーから豊富に35.5mmフィルターから出ているが、 レンズを入手した2005年当時は少数派だった。 なんとかオリンパス光学製のスカイライトフィルターを手に入れてみたものフードがない。 オランダのドクターから送っていただいた、 ツァイスの工業用レンズの専門資料ホワイトペーパーをみてみると、 フィルター径が 35.5mm P=0.5 なのは、S-PLANAR 60mm F4、S-ORTHOPLANAR 50mm F4、 それに S-ORTHOPLANAR 60mm F4の3本ぐらいではないか。

ニコン Z 6 を購入してからは、 アポエルニッコール105mm F5.6Nでヌケの良いスコーンとした絵が撮りたくなり、 レンズフードを探した。 結局期待していた深めのフードが見つからないので、 ステップアップリングで、35.5mmを40.5mmに拡張することにした。 最初にアマゾンで購入したのは合わなかった。 35.5mmではあるがネジピッチが P=0.75だったのである。 ねじ込んで途中でスタックしてしまうのはよろしくない。

35.5mm P=0.5 → 40.5mm P-0.5 ステップアップリング

結局、カメラアクセサリーが専門の名古屋の八仙堂さんで購入。 35.5mm P=0.5 径を 40.5mm P=0.5 径にスムーズに変換できた。 40.5mm が確保できれば現行品のニコン純正のフィルターを装着できるし、 40.5mm から 52mm の変換は簡単だ。 すぐに手持ちの、ニコン製52mm径汎用フードが使えるようになった。

ちなみに、35.5mm径のアポエルニッコール105mm F5.6Nには、 ピタリと装着できるニコン純正のキャップは存在しない。 収納時には、丸い大きなプラ板の蓋をレンズ前玉の上にポンと置き、 その上に丸く切ったスポンジを入れて、 プラスチックケースのフタをぎゅっと閉めて完了となる。これで正規。 なんとも芸がない。詫び寂びをかんじる。

しかし、最初からフィルター径を一般的な40.5mmにしてほしかった。 なぜレンズキャップさえ用意できないような35.5mm径にしたのであろうか。 日本光斈の時代からニコンがこの100年間に製造したレンズでフィルター径が35.5mm径なのは、 このアポエルニッコール105mm F5.6Nだけである。 だれも褒める人がいないだろうから私が言う。あんたはエライ。

レンズをリバースする

意外と知られていないようなので言及すると、 アポエルニッコール105mm F5.6Nはレンズ前玉まわりの化粧リングのねじをゆるめて外すと、 ライカL39スクリューマウントが出現する。 ほんらいの目的はレンズを逆さにして(リバースして)カメラにマウントするための装備である。

外した化粧リングはそのまま今までマウントだったところにねじ込めばよい。 今までマウント側だった後玉が前玉になるわけだが、 ちゃんと35.5mmのフィルターねじが切られているので、 フィルターとかステップアップリングの装着が簡単にできる。

レンズをリバースする

アポエルニッコール105mm F5.6Nは対称型のレンズである。 レンズをリバースした状態でも無限遠はきちんと出るし性能は変わらずよく写る。 しかしながら、接写ではさらなる威力を発揮するようで、 NikonGearなど海外のマニヤが集まる国際掲示板には、 アポエルニッコール105mm F5.6Nをリバースして、 驚くべきシャープな画像をもってマクロ撮影をされている方が登場している。

リバースしたアポエル105mm F5.6Nの姿

遠くに鉄橋を望む

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

冬日の光線の具合が好きなのである。 一月の終わり。首都圏でも空気が澄んでいる。 いつもの無限遠テストの定点に立つ。 京王線多摩川橋梁。無限遠と言っても500メートルから600メートル先の風景だ。 すこし深めのフードということで、手近にニコンF時代の古いフードがあったので装着した。 期待通りの重量感のある絵が出てきた。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F11 1/2500 sec. -0 +0

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F11 1/1250 sec. -0 +0

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F11 1/2500 sec. -0 +0

季節がたった3か月進行しただけで風景の色が変わる。 春四月ともなると、空気の緊張感がゆるみ、空の色がおだやかになる。 川の土手には自生している菜の花が春を構成していた。 アポエルニッコール105mm F5.6Nは正確に色彩を撮像素子に伝えた。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/5000 sec. -0 +0

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F8 1/3200 sec. -0 +0

重厚硬派な描写

アポエルニッコール105mm F5.6Nは重厚硬派な描写も得意なのである。 航空機の識別監視から、名もないただ古いだけの建造物の写真記録にも、 超高性能レンズの存在感は揺るぎない。

APO EL 105mm F5.6N, ASA 800 F11 1/1600 sec. -0 +0

APO EL 105mm F5.6N, ASA 1000 F8 1/4000 sec. -0.3

アポエルニッコール105mm F5.6Nは、日本光学株式会社が文書で言い切っているとおり、 「理想的アポクロマート」を製品化した究極の姿なのである。 ブリリアントでゴージャスな色彩表現から重厚硬派な社会派描写まで活躍の場は広い。

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

基本的には、科学写真用レンズだと思っている。 ヒトの目でみたものがそのまま映像化できる。 とくに、輝く感動的な事象にたいしては、最適な映像ソリューションを提供するものと信じている。 美しいレンズは超高性能である。石の上でも美しい。

アポ エル ニッコール 105mm F5.6N

道行にオレンジ色が派手なレンズ展示ディスプレイ台が設置されていた。 おもわずレンズを置いてしまった。 この舞台装置でもピタリときまるのはレンズの風格である。

アポエル・ギャラリー

産業用ニッコールレンズほか世界のハイエンドレンズで鉄道写真を撮る方を紹介したい。 写真共有サイトflickrで活躍されている martini038さんだ。 ウルトラマイクロニッコール135mm F4の作例掲載でもご協力いただいた。

アポエルニッコール105mm F5.6Nで撮影した鉄道写真である。 画像の掲載につきご承諾をいただいたのでご覧いただきたい。 画像上をクリックするとすこし大き目のサイズの画像を表示するが、 さらにオリジナルサイズも参照いただきたい。

JR貨物 EF66形電気機関車(EF66-26)撮影年は2014年9月
Nikon D810 + APO EL Nikkor 105mm F5.6N(絞りF6.3)

オリジナル画像(7360 x 4912, 10.4MB)は こちらからどうぞ
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

実に優れたマイクロコントラスト特性を有するレンズの描写そのものである。 鉄道写真にアポエルニッコール 105mm F5.6Nとは豪快な話だが、 銀河系宇宙の果てまでアポエルニッコール 105mm F5.6N で撮影する大家もおいでなので驚く話ではない。 夏の伊吹山の色彩と力強い鉄道車両、そして田畑の風景が、 マイクロコントラストまる出しの作品となっている。

貨物を引くEF64-1017 #8865 + EF66-33 撮影年は2013年4月
Nikon D800E + APO EL Nikkor 105mm F5.6N(絞りF8)

オリジナル画像(7360 x 4912, 18.4MB)は こちらからどうぞ
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

伊吹山雪景色 撮影年は2010年1月
Nikon D3 + APO EL Nikkor 105mm F5.6N(絞りF5.6)

Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

冬の伊吹山 撮影年は2018年1月
Nikon D850 + APO EL Nikkor 105mm F5.6N(絞りF8), ISO 200

オリジナル画像(8256 x 5504, 32.2MB)は こちらからどうぞ
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

JR東海 N700A 試運転 撮影年は2012年9月
Nikon D800E + APO EL Nikkor 105mm F5.6N

オリジナル画像(7360 x 4912, 8.6MB)は こちらからどうぞ
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

東邦亜鉛安中製錬所 撮影年は2018年8月
Nikon D850 + APO EL Nikkor 105mm F5.6N

オリジナル画像(8256 x 5504, 7.2MB)は こちらからどうぞ
Photo: Copyright (c) 2020, martini038/flickr, All Rights Reserved.

アポエルニッコール105mm F5.6Nと高画素機の組合せは無敵である。 高精細でダイナミックな絵が素晴らしい。 martini038さん、画像の提供ありがとうございました。

あとがき

本記事の初稿は2020年8月にリリースしました。 レンズを入手してから実に15年越しの公開となりました。

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Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2020