F2ウエムラスペシャル ● 植村さんのレンズ この時代、1970年代の中盤に、植村さんが極地行に携えたレンズが興味深い。 旧ニッコールオートから、 新しい Ai 方式の Ai ニッコールに変わる過渡期に登場した、new ニッコールである。 金属ソリッド感まる出しの旧ニッコールオートから、 new ニッコールはレンズの外装が大きく変わった。 がっしりしたゴム巻きの鏡胴が特徴。 よく、Ai ニッコールと間違える方がいるが、絞りリングがまるで異なる。 植村さんのレンズは、カニの爪(露出機構連動用)が取り外され、化粧ビスがねじ込まれている。
new ズーム ニッコール 28〜45mm F4.5 このレンズが出現した背景は、「ニッコール千夜一夜物語」に詳しい。 第十五夜 <New> Zoom Nikkor 28-45mm F4.5。 佐藤治夫さんがお書きになっている。 サブタイトルは、世界初の本格的なワイドズームレンズ 〜先駆者たちの夢〜。
植村さんの 3本のレンズ
new ニッコール 50mm F2
new ニッコール 28mm F2.8
new ニッコール 28mm F2.8
標準 50ミリと広角 28ミリレンズ ● F2ウエムラスペシャルの美 さてここで、写真集「ニコンF2チタンウエムラスペシャル」 の後半にいかせていただく。 約30枚を超えるカメラ本体と関連の写真画像だけ構成された記事は、 紙の文献書籍、ネットの媒体を見回してもこのサイトしか存在しない。 世界的な有形文化遺産「F2ウエムラスペシャル」の美に注目していただきたい。
F2ウエムラとズームレンズ
ペンタプリズムに大きな傷
美しい軍艦部
new ニッコールにはまだ Ai連動機構がない
カニの爪は外されている
巻き上げクランクの美 ● ニコンF2チタンウエムラスペシャル そうは言っても写真集はまだ続く。 簡単な動画も撮影したのでご覧ください。
世界初の金属チタン外装一眼レフカメラ
F2ウエムラスペシャル(mp4 形式、89MB)
ニコン極地探検モデル
ウエムラスペシャル F2 7733380 号機 F2ウエムラを撮影した画像は、まだまだ多数ストックしてあるが、 ひとまずはここまでということで納めていただきたい。 ● 当時のニッコールレンズの話 この文節は、植村展レポートとは直接関係ないので、 物好きな方以外は読み飛ばしてください。 本章の文頭で、植村さんが使用したレンズを、 「旧ニッコールオートから、 新しい Ai 方式の Ai ニッコールに変わる過渡期に登場した、new ニッコールである」 とアバウトにざっくりと説明してみた。 しかし、いま書いておかないと、後世に禍根を残すことになりかねないことがあり、 あえて書いてみる。 ニッコールレンズの名称、製品名のことである。 ニコンは過去二度において大きな過ちを残している。 new ニッコールと Ai ニッコールである。 (1)new ニッコール ニコンの社史 75年史と 100年史によると、 new ニッコールは1974年(昭和49年)11月に発売となっている。 社史をそまま信用するわけにはいかないので、一次資料で裏付けを取ってみた。 ニコンシステム価格表(昭和49年11月15日現在版)で、 いきなり全 6本の newニッコールが新製品として登場したことを確認した。 レンズに冠された「new」は、マルを少しつぶして楕円のようなマルの中に、 半角の英小文字で new と入ったロゴである。 以下、マル new として話を続ける。 このレンズが販売されていた時代は、マル new の版下が存在していて、あらゆる紙の印刷物には、 このマル new が生きていて問題はなかった。 しかしその後、この版下は使われることがなくなった。 特にインターネットの時代になると表記が不可能になった。 その結果、ニューニッコール、New ニッコール、 はては <New> ニッコールと言う書きぶりまでもがオフィシャルに存在している。 少なくとも半角英文字の世界で、<>はHTMLのタグと混同するので、極力避けたい記号だ。 (2)Ai ニッコール
ニコンの社史 75年史と 100年史によると、
Ai ニッコールは1977年(昭和52年)3月に発売となっている。
社史をそまま信用する素直な私ではあるが、社史に誤植はつきもので過去にヒドイ目に合っているので、
いつもの行動原則、一次資料で裏付けを取ってみた。
ニコンシステム標準小売価格表 (8)(昭和52年3月25日現在版)で、
いきなり全 19本の Ai ニッコールが新製品として登場した。 レンズに冠された「Ai」は、 黒いシカクの中に白抜きの半角英大文字と英小文字で Ai と入ったロゴである。 2023年に急激に進化した ChatGPTなどに代表される AI ではない。Ai なのである。 以下、黒シカク Ai として話を続ける。 このレンズが販売されていた時代は、黒シカク Ai の版下が存在していて、 あらゆる紙の印刷物にはこの黒シカク Ai が生きていて問題はなかった。 しかしその後、この版下は使われることがなくなった。 インターネットの時代となると、ドット絵で作り込まない限り、 黒シカク Ai の表記は不可能となった。 その結果、Ai ニッコールと表記されるようになった。 黒シカク無しの Ai はまだ許容の範囲であるが、AI はいただけない。 残念ながら、いま現在ニコンでは、AI ニッコールとの表記になってしまった。 ニコンのオフィシャルページで 「AI 方式レンズと非 AI 方式レンズの見分け方」なんていう記事を見ると、ハズカシイ。 (3)今後の製品名 日本語(ひらがな、カタカナ、常用漢字)、および英数字で製品名を開発してほしい。 絵文字とかドット絵、標準のタイプでは打てないような文字を使うことを禁止してほしい。 でないと、また同じ問題が起きる。 話のついでに書いておきたいことがある。 レンズの F値の表記だ。当該レンズが現役だった頃と比べると大きく異なる。 ニコンの社史ではこうなっている。
75年史 50mm F1.4 F1.4 → f/1.4 。 こういうことを勝手にされては困る。 なにか日本の法律で決まったのだろうか。 そもそも表記に一貫性と言うのか、覚悟がない。 もちろん、意味するところは同じと承知はしているが、どうか変えないでほしい。 一介のニコン・ヒストリアンとしてせつに願う。 ● 記事のご案内 画像の上で左クリックすると、大きいサイズの画像を表示できます。 細部までを確認したい方はどうぞ拡大してご覧ください。 → 終章です。 第 7 章 おわりに ショートカットはこちらからです。
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