APO EL Nikkor 210mm F5.6     4

APO EL 210mm F5.6,   ASA 200   F8   1/800 sec.   -0.3

新鮮な光線下で

ニコン Z 写真帖の前段では落ち着いた光線下の画像を見ていただいたが、 盛夏真夏日 南南西の風 風力 2 晴れ 1020ミリバール 炎天下午後2時過ぎの情況で、 マイクロコントラスト特性に優れたアポエルニッコール 210mm F5.6レンズで ゼットした画像を見ていただきたい。

APO EL 210mm F5.6,   ASA 400   F5.6   1/500 sec.   +0.7

絞り開放の F5.6で撮ってみた。 絞り開放からキレッキレのカミソリのように鋭利な絵が出てきた。 もともと絞り開放 F5.6から最高性能が出ると、睨みを添えて日本光学が口上を述べたレンズだ。 ほんとだった。

APO EL 210mm F5.6,   ASA 800   F8   1/1000 sec.   -0.7

アポエルニッコール 210mm F5.6は精密な科学写真を撮影するのに適している。 本物のアポクロマートレンズなので、色彩の再現性は完璧だ。 思想的には太いものがあるが、繊細で緻密な描写をする。 木の幹に映る強い影さえも意思と風情を構成している。

アポエルニッコール 210mm F5.6の撮影姿

APO EL 210mm F5.6,   ASA 800   F8   1/250 sec.   -0.3

夏の生命感まる出し。ただ緑の草木である。名前はないし誰も見ていない。 ましてや写真に撮るなんて人はいない。 アポエルニッコール 210mm F5.6の精密描写にふさわしい被写体はただの草木かもしれない。 気配を写せるレンズはそうはない。 1970年代のエクタクローム 64のような涼し気で品格ある写りが嬉しい。 アポエルニッコールの持つ優れたマイクロコントラスト特性がよく出ている絵といえる。

APO EL 210mm F5.6,   ASA 800   F8   1/2000 sec.   +0.3

乾いたクレイの小道。風の通り道でもある。 その先はよくわからない。 日常に存在する結界が見えてくるようになった。

本格派レンズ・シェード

もともと暗室とか管理された光線下の室内で使用することが前提のレンズである。 レンズ前玉がかなり前に出ている。 野外で撮影すると予期しない光が前玉にかぶっている。 これではいくら超高性能レンズでも実力を発揮できない。 ぜひレンズ・シェードを付けたい。レンズフードではない。 ハレ切りには言葉の意味から言ってシェードである。

アポエルニッコール 210mm F5.6はフィルター径が 77mmである。 この径用のレンズフードを持っていない。 本格派であればムービーキャメラ用の非常に高価なレンズに装着するレンズ・シェードを付けたいところだ。 ハッセルブラッド用の蛇腹式レンズシェードもいいかもしれない。 でもここは夏涼しい黒い帽子を活用した。 こんな簡単なシェード(余計な光遮蔽装置)を使うだけで、写真画像のヌケは極めてよくなった。

理想的アポクロマート

色収差その他の諸収差がほぼ完全に補正されている。 繊細な花の微妙な昭和浪漫ただよう色彩再現から、 ダイナミックな力強い、コダクローム64のような重厚なカラー表現もかるくこなす。 理想的アポクロマート。頼りになるレンズである。

ダイナミック・アンド・エレガンス
アポエルニッコール 210mm F5.6

1971年(昭和46年)6月。東京新宿に超高層ビル「京王プラザホテル」が開業。 そして理想的アポクロマートレンズ「アポエルニッコール 210mm F5.6」の発売。 それから半世紀は 50年が経過したいま。 写真暗箱の主流は、フィルム式の一眼レフからデジタル一眼レフへ、 そしてミラーレス機に変わった。

だが絶対色音感を誇るレンズの色収差補正波長域は変わらず、 定年退職もせずに現役時代そのままの孤高のハイエンド最高解像力まる出しの働きをしている。 すこしは休んでください、と言ってはみたが聞いていただけなかった。

APO EL 210mm F5.6,   ASA 800   F5.6   1/640 sec.   -0.3

理想的アポクロマートレンズ
アポエルニッコール 210mm F5.6

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