1:10 f=286.0 mm Nippon Kogaku No. 4 Nikkor
●匿名ニコン・コレクターのスーパーコレクション ドイツ在住のニコン研究家であるウリ・コッホ氏が取材したニコンコレクションを紹介したい。 ここで掲載した画像はすべてウリ・コッホ氏が撮影したものである。 また説明文もウリさんのオリジナルだ。 掲載したすべてのレンズは、1人のニコン・コレクターの個人コレクションである。 名前を出すことを望んでいないが、ドイツの人ではないということだ。 さて、いきなりトップに置いたのが、このコレクションで目玉のニッコール286mm F10である。 "Nippon Kogaku" と"NO. 4" そして"Nikkor"の刻印がある。 このレンズは、まったくもってよく分からない。 ウリさんの推測では、民生用のレンズではなく、昭和15年前後の軍用レンズではないかとのことだ。 ただし、焦点距離がセンチではなく、ミリ表記である点が気になると言っている。 私も軍用レンズである可能性が高いと思うが、 それにしても焦点距離が286mmでF10とはいかにも暗い。 写真偵察だったらこの明るさでは無理である。 ひょっとしたら広角レンズかもしれない。 絞りはないようだし、全天の雲量測定とか、 防空システムを前提とした気象観測用途も考えられる。 手元にある日本光学社史にも説明がないようだ。 どちらにせよ、ミステリアスなレンズである。 こういうレンズが、世界のどこかで残っていることに、私は素直に感動してしまう。 Anonymous Nikon Collector These pictures and the description were made by Uli Koch. The collector of this items wants to be anonymous. Uli Koch thanks the Nikon collector for showing these items to the public. Nikkor 286mm F10 A lens for an unknown purpose. The lens has a shutter "NO. 4". The lens engraving is unusual as it says: "Nippon Kogaku" and "Nikkor", both with initial capital letters. Usually the word "NIKKOR" was written in capital letters and after the brand name always "JAPAN" was added. On this lens "JAPAN" is missing. The focal length is in "mm" as Nippon Kogaku engraved their (photographic) lenses from 1964 onwards. The lens looks like it was made in the 1940, but why did they engraved the focal length in "mm"? Usually Nippon Kogaku engraved the purpose of the lens as "AERO" or "Apo", but not on this lens. This huge lens is a mystery. ●APOニッコール・コレクション APOニッコールのコレクションだ。 APOニッコール 150mm F9木箱入りフルセット。 APOニッコール 210mm F9木箱入りフルセット。 APOニッコール 360mm F9のレンズ単体。 APOニッコール 480mm F9のレンズ単体。 こう並ぶと壮観である。 コレクションは数を集めて、そして系統的に集めてこそ、新しい価値が生まれてくるものである。 小型のレンズから中型のものまでを、まず見ていただきたい。 Apo-NIKKOR 150mm F9 This Apo-NIKKOR is of the asymmetrical type with "Nippon Kogaku Japan" engraving and the focal length in "mm" with the serial number engraved on the front. It came in the wooden case with the waterhouse plates and the base plates.
Apo-NIKKOR 210mm F9 This Apo-NIKKOR is of the asymmetrical type with "Nippon Kogaku Japan" engraving and the focal length in "mm" with the serial number engraved on the front. It came in the wooden case with the waterhouse plates and the base plates.
Apo-NIKKOR 360mm F9 This Apo-NIKKOR is of the symmetrical type with "Nippon Kogaku Japan" engraving and the focal length in "mm". The serial number is engraved on the side of the lens.
Apo-NIKKOR 480mm F9 This Apo-NIKKOR is of the symmetrical type with "Nippon Kogaku Japan" engraving and the focal length in "mm". The serial number is engraved on the side of the lens.
●APOニッコール1210mm F12.5 さて、このサイズになると、APOニッコールのコレクションとしての価値は高いものがある。 大きさを示すために、ニッコールの標準レンズが置かれている。 レンズの金属製フタの上にちょこんと乗っている。巨大なレンズである。 重量は3.8キロ。最小絞りがF128だからえらい。 このクラスのレンズはもともと製造数も少なく、 木箱入りで関連パーツ付きのフルセットとなると、日本ではまず見ることができない。 米国あたりだと、いまだに倉庫のデッドストックで出てくるものがあり、注意が必要だ。 こういったレンズは鑑賞用である。 はじめから、カメラに装着することよりも、床の間に置くことを考えるべきである。 そういうレンズが1本あるだけで、かくじつに気分は豊かになるし、 運気も宿るものだ。 Apo-NIKKOR 1210mm F12.5 This Apo-NIKKOR is of the symmetrical type with "Nikon" engraving and the focal length in "mm". The serial number is engraved on the side of the lens. This huge and heavy lens came in the wooden case with the waterhouse plates, the base plates and the control certificate. The Nikkor 50mm F1.4 lens was used for comparison.
●COMニッコール37mm F1.4 Computer Output Microfilm (COM) と冠せられたニッコールレンズだ。 鏡胴の黒塗装とクロームのバランスが美しい。 標準撮影倍率が赤い文字で刻印されているのは、後期型である。 フィルター径は40.5mm 、マウントはライカL39スクリューマウントで、 実用にも最適な超高性能マクロレンズである。 COM-NIKKOR 37mm F1.4 Computer Output Microfilm (COM) photography is defined by certain distinct conditions, such as the color, intensity, and contrast of the traced images. These constitute the distinct performance limits of COM-Nikkor lenses. The range of aberration correction is from 400 nm to 650 nm. The contrast between the traces and the screen background is maximized. High resolution is attained by using a large, high-speed aperture, which also takes care of adequate exposure of the fairly high framing speed of moving traces on the CRT. The COM-Nikkor 37mm F1.4 covers a field diameter of 15mm with standard magnification of 1/8X.
●Faxニッコール160mm F5.6 350nmの近紫外光での撮影が可能な特殊ニッコールレンズである。 バルブ(B)のみであるがメカニカルシャッターを内蔵していることでも、 その外観と合わせて個性的で特徴的なレンズだ。 原稿をスキャンする静電方式の画像処理、つまり複写機用のレンズや、 写真製版用のレンズとして使われたようだ。 元箱付き新品となると、極端にコレクションの価値は高まる。 Fax-NIKKOR 160mm F5.6 This is Fax-NIKKOR with "Nikon" engraving and the focal length in "mm". The Fax-NIKKOR lenses were used for taking pictures with silver chloride film, electro-photographic film and other emulsions used for copying of more sensitive to near ultra-violet ray than to visible ray materials. Those lenses were made from special glasses absorbing very little ultra-violet ray. The (wide-angle) Fax-NIKKOR lenses have been designed and produced as lenses for copying machines and compact photo-engraving cameras. This lens has a mechanical shutter (only "B"). The serial number is engraved on the side of the lens.
●Faxオルソ・ニッコール400mm F5.6 このレンズは、今回紹介するレンズの中でも、最も稀少で市場でも高額なレンズである。 造船用に使われたレンズである。 詳しくは、 ここを参照して いただきたい。 新品未使用。木製の元箱、検査証(サガワ・カード)、専用キャップ付きである。 これには驚愕してしまう。 無粋なツッコミを入れると、熱プロテクション専用フィルターはあるのかな? というところか。 Faxオルソ・ニッコール400mm F5.6専用に製造された、特殊な大型サイズのフィルターだ。 それはとも角、 レンズだけでも重量は4キロ近い。横綱級の重量感。 イメージサークル3メートル。巨大タンカー造船用レンズという使命をもつ。 しかしながら、その物言わぬ静かな佇まいは美しく、そして繊細である。 むかしもいまも、マニヤ垂涎の逸品なのである。 Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6 This Fax-Ortho-NIKKOR has "Nippon Kogaku Japan" engraving and the focal length in "mm". The serial number is engraved on the front. This huge and heavy lens came in the wooden case with the control certificate. Those Fax-Ortho-NIKKOR lenses were designed for high fidelity reproduction of drawings requiring large magnification (covering area several square meters). Therefore, they were mainly used in making-off of steel plates for shipbuilding. The Nikkor 50mm F1.4 lens was used for comparison.
Beautiful Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6 and Sagawa Card
●マイクロニッコール70mm F5 じつは、珍しいのはレンズではなく、木製のオリジナル収納箱である。 この画像を見て、このレンズにも木箱があったことを知った。 ウルトラマイクロニッコール用の木箱と同じ仕様である。 ぶ厚い高級木材を使用し、非常に頑丈に造られている。 ていねいな塗装の木箱には、専用の金属製銘板、そして頑強な金具が取り付けられている。 もちろん、内装はゴージャスなビロード張りだ。 Micro-NIKKOR 70mm F5 This Micro-NIKKOR lens was the successor of the Micro-NIKKOR 7cm F5. This lens came with a wooden box as for the Ultra-Micro-NIKKOR lenses.
●リプロニッコール85mm F1.0 リプロニッコール85mm F1.0が2本もある。 そのうち1本には専用の元箱、革ケース付きだ。 箱の底に、Repro Nikkor 85m/m F/1.0のゴム印が押してあり、 製造番号はボールペンで手書きで書いてある。 このレンズを2本集めるのは、かなり難しかったと思う。 現在では、1Xの倍率で、しかもF1.0の明るさをもつレンズということで、 科学技術用途、科学写真用途で探している方々が世界中にいるようだ。 Repro-NIKKOR 85mm F1.0 A collectors delight: Two Repro-NIKKOR lenses and one of those came like new in the box and with the case. Those Repro-NIKKOR lenses were exclusively designed for life-size reproduction in 35mm format. It has a maximum aperture ration of f / 1 (effective aperture ratio: f / 2 at 1 : 1 reproduction) and is several times brighter than a Micro-NIKKOR lens and has a higher resolving power. However, due to the high-speed and correction of aberrations in the lens, magnification is limited within the practical range of 0.9 x - 1.1 x. The entrance and exit pupils are located far behind the lens, which makes the principal ray (rays passing through the center of each pupil) run almost parallel to the optical axis. This feature gives the Repro-NIKKOR lens a great advantage when used as a relay lens.
Construction: 12 elements in 8 groups
Repro-NIKKOR 85mm F1.0
●Xeroニッコール135mm F2 明るい大口径比の、特殊用途の長焦点レンズである。 Xeroニッコール135mm F2の前期型と、レンズ構成が改善された後期型だ。 このレンズは、CRTニッコールと同様に、 CRTスクリーンの画像撮影用に開発されたレンズだ。 イメージサークルが25センチもあるので、 大型カメラにマウントされて使用されたのだろう。 当初は5群7枚構成だったレンズも、1970年代初頭に設計が変更となり、 レンズが1枚追加されて5群8枚のレンズとなった。 細かい差異は、以下に示すデータを参照していただきたい。 数値データから、設計変更となった背景とその成果を想像するのは、 少しばかりマニアックな気分になる。 前期型と後期型では、マウントのサイズまで変えてしまっているので、 別な製品として見たほうがよいかもしれない。 いずれにせよ稀少なレンズであって、 しかも前期型と後期型の両方ともに、 元箱とオリジナルキャップ付きのコレクションであるから、 画像だけでも貴重なものである。 Xero-NIKKOR 13.5cm F2 and New Xero-NIKKOR 135mm F2 The Xero-Nikkor is designed expressly for reproduction of CRT traces on the 127mm (5-inch) diameter screen of the Charactron Tube. It can also be used, of course, with an osilloscope or any other CRT. Its hight speed of f/2 affords adequate exposure of the high framing speeds of the relatively low-light level traces on the CRT. Standard magnification ratio is 2X at which corrections are optomal, but aberrations remain well corrected from 1.5X to 2.5X. Vignetting is insignificant in CRT reproduction applications. Resolution is comparable to or better than that of the CRT tubes encountered in practice. Color correction is 400 nm - 650 nm. The lens is thereaded at both ends for convenience in normal or reversed mounting. The Xero-Nikkor 13.5cm F2 has been improved at the beginning of 1970's. One lens element was added to improve the feature of the distortion. This lens is called "New Xero-NIKKOR 135mm F2" in Japan.
Xero-NIKKOR 13.5cm F2
Special Thanks to Mr. Uli Koch
------------------------- ● 赤プリの時代の話 ドイツのウリ・コッホ(Uli Koch)さんの名前についてすこし。 2004年の2月にウリ・コッホさんが来日した時に、数日をごいっしょさせていただいた。 直接お会いして話を聞くまでは、 ユーリー・コッホさんとか、ウーリー・コッホさんと呼ぶのかと、 文章でもそう書いていた。
赤坂プリンスホテルの新館横の庭園に続く小道で、
名前を何て呼ぶのか(どう発音するのか)ご本人に直接お聞きしたところ、
ドイツ語の授業のような発音丸出しで、 赤坂プリンスホテルの新館といえば、バブル期当時は赤プリと呼ばれ、 トレンディスポットとして人気があった40階建てのホテル。 丹下健三設計。開業は1982年11月。 栄枯盛衰いろいろに、2011年3月に閉館となった。 2013年夏に取り壊し解体が完了し跡形もなく消え、 跡地にはザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町が2016年7月に開業した。 時は流れるものである。 2004年2月当時に赤坂プリンスホテルで撮影した画像が出てきたので、 この機会に掲載しておきたい。 バブル時代のお約束は白いグランドピアノ。 生演奏で豊かなピアノの音が響く赤プリのロビーで、 ウリ・コッホさんと初めてお会いした時を思い出した。
バブルの時代の様式美を誇る赤プリ新館の勇姿
白を基調とした赤プリ新館のロビー ● 記事のご紹介 → 元に戻ります。 第 0 章 トップページ ショートカットはこちらからです。
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● 2021年のあとがき このコンテンツのオリジナルは2004年4月に公開したものです。 2016年のサイト移転に伴う見直しで画像を原板から作り直しました。 2020年に手直しを行い、画像をクリックするとオリジナルのサイズで表示するようにしました。 2021年には4本の記事の入口を1つにまとめ、4部構成に編集し直しました。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2004, 2021
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