Uli Koch Collection Vol. 2

Gallery and Collection, Super Nikon Fans Social Club

Anamorphic Adapter Type 1, Nippon Kogaku Japan
Photo: Copyright (c) 2003, Uli Koch, Germany, All Rights Reserved.

ウリさんのスーパーコレクション第二弾

ドイツのウリ・コッホさんのコレクションの続きを紹介したい。
まずいきなり出てきた大型レンズが、日本光学製のアナモフィックレンズだ。 いまさら、アナモフィックレンズの説明をするのもアナクロな気がする。 このサイトをご覧の方ならば、映画カメラといえば、 アリフレックスはもちろんだが、パナフレックス、ムービーカム、 カメフレックスそしてパナアリさえも個人所有しているかもしれない。

アナモフィックレンズはシネマスコープ用のレンズだ。 35ミリスタンダードサイズのフィルムを使い、撮影時には横を圧縮して写し込み、 映写時には横に伸長して横長の迫力ある映像を投影する。 ある時代のワイドスクリーンには必須のレンズだった。 このレンズは劇場用映画映写機に実際に搭載されていたものだが、 日本光学製というのは珍しいのかもしれない。 シネマスコープを採用した映画の登場が1953年であるから、その後の製品だとして1950年代中旬の製造か。 古いレンズ1本には、語る物語と歴史がある。

Anamorphic adapter

This adapter is for a 35 mm cine-projector for wide-screen projection. The lens formula is unknown, its weight is 2,150 g. Engraved is: "ANAMORPHIC ADAPTER Type 1 NIPPON KOGAKU JAPAN" and the serial number.

Photo: Copyright (c) 2003, Uli Koch, Germany, All Rights Reserved.

ファックスニッコール300mm F7

静電写真複写方式用のレンズだ。開放絞りがF7というのも、風情がある。 むかしの複写機には、これほど重厚で高級なレンズがマウントされていたのだ。 見えないところで、きちんと"Nippon Kogaku"と刻印され、責任を果たしているところがえらい。

重量1.7キロの大型レンズで、絞りはない。F7に固定となっている。 バルブのシャッターが付いているのが珍しい。 レンズ鏡胴にノブはショックアブソーバ機構が付いたシャッターレリーズである。 連結したシャッターレリーズの振動を伝えないための仕組みだ。芸が細かい。

Fax Nikkor 300mm F7

Fax-NIKKOR lenses have been developed for use on office copying machines. Copying machines in the 1960's and 1970's were classified: one that makes contact copies and the other that makes photographs of the original by using a lens. For the latter type high speed lenses for short exposure time were designed by Nippon Kogaku.

The 300mm f/7 Fax-NIKKOR has 6 elements in 4 groups. The picture angle is 50° with an image area of 630 mm and a working distance of 1,200 mm. It has no diaphragm, but a slit for slip-in aperture control plates. With the little button on the side of the lens a simple internal shutter (only "B") is released. The weight is 1,700 g. Unusual for a Nippon Kogaku lens: the lens engraving is found on both sides of the lens, including the serial number!

Fax Nikkor 300mm F7
Photo: Copyright (c) 2003, Uli Koch, Germany, All Rights Reserved.



Shock Absolver Unit

鏡胴にあるノブはシャッターレリーズ。 ショックアブソーバ機構付きで、ソフトに電磁レリーズを切ることが可能になっている。

The knob of side of lens is soft shutter release unit (shock absolver unit). You can press down the shutter release button gently. This unit is usually connected with an electromagnetic shutter.
Photo: Copyright (c) Uli Koch

アポニッコール60センチとアポニッコール21センチ

アポニッコールは写真製版のために設計された大型レンズだ。 また、大型写真機に装着して、精密な大判写真撮影も得意なところである。 レンズ構成で区別すると、テッサータイプの非対称型と、完全対称型が用意されていた。 アポニッコールには、専用のミラーボックスやプリズムが用意されていた。 光軸を直角に曲げたり画像を反転させるためのものだ。 こういったミラーボックスやプリズムなどもコレクションの対象になる。

下の写真には青い表紙のカタログが登場している。 1960年に日本光学が発行したアポニッコールのオリジナルカタログだ。 これは非常に貴重なもので、写真でもめったに見ることはできない。

APO Nikkor 60cm F9 and Apo Nikkor 21cm F9

Apo-Nikkor lenses were specially designed for use in photo-engraving work and were available in a large range of focal length. Both symmetrical and asymmetrical lenses were manufactured.

Nippon Kogaku offered several prisms and mirrors for this lenses for right-angle and with or without reversed image which were used as a single prism or mirror or in combination.

APO Nikkor 60cm F9
Photo: Copyright (c) 2003, Uli Koch, Germany, All Rights Reserved.

Apo Nikkor 60cm

このアポニッコール60センチは、センチ表記からも分かるとおり 1950年代後期から1960年代の初めにかけて製造されたレンズである。 注目すべきは、オリジナルの木箱だ。留め金を見てほしい。 金具はクロームめっきではなく、黒塗りのそれは岩谷堂箪笥の彫金金具を思わせる。 こういう芸が渋い。

This 60 cm lens was manufactured in the late 1950's or early 1960's. The style of the lens engraving is like the one used on Nikon rangefinder lenses. At 1 : 1 reproduction ratio the image area is 80 cm. A brochure from 1960 (60.10.B) shows the same 60 cm Apo-NIKKOR lens with a little different engraving.



Apo Nikkor 60cm Box

Max. aperture f/9
Min. aperture f/90
Lens construction 4 elements in 3 groups
Standard magnification 1X
Standard wavelength 380 nm - 750 nm
Distortion -0.2%
Image area 800 mm
Overall working distance 2,400 mm
Weight 1,120 g
Photo: Copyright (c) Uli Koch

Apo Nikkor 21cm

このアポニッコール21センチも初期のレンズで、コンプリートセットは珍しい。 フィルターホルダーがセットで木箱に納まっている。 ドイツはくるみの籠に置いてみた。 くるみといえば、シュトーレンはドイツのクリスマスには欠かせないリッチなお菓子だ。 ビールもいいが、ドイツはお菓子もおいしい。 シュトーレンはドライフルーツやナッツ、くるみがたっぷり入り、 粉砂糖で真っ白に飾ったクリスマスのお菓子。 お菓子文化を語れないようではレンズも理解できないではないか。

This 21 cm lens comes with a wooden case and a few filter holders for gelatine filters and waterhouse plates (additional diaphragm). One of those can be inserted in a small slot on side of the lens. The image area at 1:1 reproduction ratio is 35 cm.



Apo Nikkor 21cm Box

Max. aperture f/9
Min. aperture f/90
Lens construction 4 elements in 3 groups
Standard magnification 1X
Standard wavelength 380 nm - 750 nm
Distortion -0.2%
Image area 350 mm
Overall working distance 840 mm
Weight 185 g
Photo: Copyright (c) Uli Koch

ウルトラマイクロニッコール155mm F4

ウルトラマイクロニッコールは、 半導体製造プロセスにおけるフォトマスクを作るために開発された極超高解像力レンズだ。 極超精細の世界に突入すると、撮影に使う光源の光の波長が重要な要素になってきた。 光といってもただ明るいだけではだめなのだ。 最初に登場したウルトラマイクロニッコールは、波長546.1nmのe線を使うことを前提に開発されている。 もちろん、もっと豊かな太陽光線を使用しても、 それはそれで極めて優れた写りをするので安心してほしい。

家庭でもフォトマスクを製造される方は波長546.1nmのe線を使ってほしい。 しかしフォトマスク製造ではなく、 花の撮影や可愛い生態系の写真を楽しむ方ならば太陽光線を使うべきである。

なお、ウルトラマイクロニッコールも後期になると、 より極超精細の世界を満足するために、 波長404.7nmのh線や波長435.8nmのg線を使うことを前提に開発されるようになった。 シャープなレンズに、シャープなナイフの光が美しい。

Ultra-Micro Nikkor 155mm F4

The Ultra-Micro-NIKKOR lenses were designed for the highest correction of aberration and sharpness for use to make photomasks. The problem of designing the lenses of large aperture with highly corrected aberrations has been solved by limiting the range of wavelength of light to be used as a light source.

For that the Ultra-Micro-NIKKOR lenses were usually designed for a wavelength of 546.1 nm (e-line). Later lenses were manufactured for other wavelength as h-line with 404.7 nm and g-line with 435.8 nm.



Ultra-Micro Nikkor 155mm F4

The lenses have an extreme resolving power of 300 lines/mm for the 155mm lens up to 1.200 lines/mm for the 30 mm lens. Of cause they were very high priced lenses at that time and represents the top of research and development for a lens manufacturer. This 155mm f/4 lens is extreme sharp, has 7 elements in 4 groups, an object area of 560 mm and a weight of 1,090 g.
Photo: Copyright (c) Uli Koch

Special Thanks to Mr. Uli Koch

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Photo images and text : Uli Koch, Germany

記事のご紹介

 では次にいきましょう。   第 3 章   ウリさんのコレクション 第三弾

ショートカットはこちらからです。

第 0 章      トップページ
第 1 章      ウリさんのコレクション 第一弾
第 2 章      ウリさんのコレクション 第二弾
第 3 章      ウリさんのコレクション 第三弾
第 4 章      ウリさんのコレクターレポート

2021年のあとがき

本コンテンツのオリジナルは2003年4月に書いたものです。 ウリ・コッホさんはちょうどその頃、ニコンFの豪華本の印刷中とのことで、 忙しいなかでコンテンツのチェックをしていただいたものです。 そのニコンFの豪華本は、3部作から構成され世界最大のニコンFエンサイクロペディアとなりました。

2016年のサイト移転に伴う見直しで、画像を再び原版から切り出して加工し直しました。 2021年には4本の記事の入口を1つにまとめ、4部構成に編集し直しました。

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