October 2011, Nikon Kenkyukai     5

野辺山 45メートル電波望遠鏡

天文台の現在

さて、歴史的天文観測装置・施設の数々を見学させていただいたわけですが、 現在ではどのような観測装置が使われているのでしょうか。

三鷹キャンパスの常時公開コースには、天文台展示室があります。 すばる望遠鏡や野辺山 45メートル電波望遠鏡、ALMA、TMT計画など、 その多くは非常に大きな装置・施設となるために、 模型と説明パネルが展示されていました。

野辺山 45m 電波望遠鏡の巨大な模型

超大型望遠鏡 TMT 計画の精密な模型

すばる望遠鏡の模型を前に熱く語る中桐先生

中桐先生とすばる望遠鏡の関係は非常に深い。 1980年頃から 20数年にわたって、「すばる」の予算要求から建設に携わっているのです。 すばる望遠鏡はハワイ・マウナケアに建設されましたが、中桐先生は その建設期間の1994年から2002年の実に 8年間ハワイに滞在しているのです。

アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 完成予想模型

太陽観測衛星ひので

これも中桐先生の思いが詰まった観測衛星。 中桐先生は2002年から2006年まで SOLAR-Bの開発に参加。 そして2006年 9月23日の打ち上げに成功し、 Solar-Bは「ひので」と命名され観測が始まったのです。 太陽観測衛星ひのでは、コロナの成因を探る、 太陽磁場・コロナ活動の起源を探る、 宇宙プラズマの素過程を探る、など、研究課題に挑んでいるのです。

感動の見学ツアーを終えて

とてつもなくエキサイティングで、スーパー・ディープな勉強会となりました。 文明は買うことができます。しかしながら文化は買うことができません。 江戸の昔から、明治、大正、昭和の時代。 そして平成の時代まで、紡いできた文化は継承されていくのでしょうか。

利益とか効率とか経済面でしかものごとを見ていないのではないか。 国立天文台博物館計画にも、予算面で非常に厳しいものがあると聞きます。 納税者が使い道を指定して税金を納められるならば、 日本の科学遺産、技術遺産の発掘・復元・保存・公開、 そして継承と啓蒙活動に、ぜひとも使ってほしいものです。

最も古い第一赤道儀室の前で記念写真
国立天文台中桐正夫先生とニコン研究会歴史的天文施設探索チーム

日本文化を救う熱き人

2010年の夏。閉所となった乗鞍コロナ観測所から、 日本光学製 25cmクーデ型コロナグラフが救出されました。 標高2876m。乗鞍山山頂の観測所に置き去りにされ朽ち果てる運命だったものが、 中桐正夫先生の御尽力、国立天文台OB、ニコン歴史資料室、 ニコン技術者OBの協力と助力により、生きたまま三鷹に帰還したのです。 山頂から総重量 14トンにも及ぶコロナグラフをどう運び出すか、 分割解体にするにも 40年前に製造された装置。 山頂に重機が到達するための数々の通行許可申請、 天候の安定した時期を狙い限られた時間との勝負。 この救出劇は涙なしに読むことはできません。 (アーカイブス室新聞の第 373号と第 374号を参照)

国立天文台の中桐正夫先生からお話をうかがい、 その行動と思いをトレースしてみると、 結局、文化が守られるのは「熱い人」がいてからこそと確信しました。 レポートの最初で述べた通り、 ニコン研究会では、光学関連企業や自動車関連企業のアーカイブス関係者、 キュレーターの方々と情報交換し、歴史的資産の残し方、継承の仕方、 世間に知らしめるアピールの仕方等を議論してきましたが、 その方々に共通して言えることは、「熱い人」だったことです。 「熱い人」がいる日本はまだまだ捨てたものではありません。

日々の暮らしの忙しさにまぎれて、忘れかけたことがありましたが、 秋は清涼の三鷹キャンパスの散策から重要文化財クラスの数々の名品を通して、 日本の文化を再考する機会を与えてくださいました、 国立天文台の中桐正夫先生に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

特別ご協力:
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台
天文情報センター アーカイブ室

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