Ultra-Micro-NIKKOR    2

プリンティングニッコール 105mm F2.8 試作と105mm F2.8

プリンティングニッコール

説明パネルには以下のとおり簡潔明瞭な檄文がしたためられている。

映画のオリジナルフィルムから映画館での上映用フィルムを作るためのレンズとして開発。 高解像力で歪曲収差や色収差を厳しく補正しているため、 微細パターンの検査・計測用としても使用されていた。

展示されていたのは4本のプリンティングニッコールであって、 95mm F2.8試作と 105mm F2.8試作が 1本づつ、105mm F2.8が 2本。 75mm F2.8と 150mm F2.8は展示されていなかった。

プリンティングニッコール 95mm F2.8 試作と 105mm F2.8

幻の超マイクロ写真撮影装置

東京大学理学部教授の小穴純博士が超マイクロ写真の製作に使用した撮影装置。 そんなものがまさか残っているとは思いもしなかった。 会場には撮影装置の現物が姿勢を正して毅然として立っていた。 もうその姿を見た瞬間、驚きを超えて声が出なかった。

世界最高解像力を実証した撮影装置
なんとあの現物がニコンに大切に保存されてたとは驚愕
国の重要文化財(級)

大型ウルトラマイクロニッコール

レンズ本体に、ウルトラマイクロニッコールと刻印が入った最後の時代のレンズである。 このあとは、ステッパー装置に内蔵されレンズの存在さえも見ることができなくなる。

それにしてもである。 250mm F1.0、225mm F1.0g、225mm F1.4、300mm F1.4g などなど、 刻印ミスかと勘ちがいされそうな焦点距離にくらべて弩級の F値には驚く。
写真ですらその存在が知られていなかった超重量級レンズ群である。 本邦初公開のみならず、全世界初公開の現物展示となっている。

弩級の大型ウルトラマイクロニッコール軍団

ウルトラマイクロニッコール 250mm F1.0(1967年)

ウルトラマイクロニッコール 225mm F1.0g (1967年)

ウルトラマイクロニッコール 225mm F1.4 (1969年)

ウルトラマイクロニッコール 225mm F1.4 と 300mm F1.4g(1969年)

ウルトラマイクロニッコール 300mm F1.4g(1969年)

ウルトラマイクロニッコール 225mm F1.0試作(1969年)

ウルトラマイクロニッコール250mm F4(1971年)

露光装置用縮小投影レンズ

「ウルトラマイクロニッコール」はさらなる進歩を続け、高解像かつ広画角という相反する仕様を満足しながら、 世界の半導体製造をリードする露光装置「NSRシリーズ」の投影レンズへと発展を遂げた。

使用する光の波長は、水銀ランプを光源とする g線(436nm)から始まり、i線(365nm)、 エキシマレーザーの KrF(246nm)、ArF(193nm)とより短い波長へと移行し、 現在では驚異的な解像力を達成している。

この時代からレンズは巨大なハコ(露光装置)の中にシステムを構成する一つの部品として組み込まれた。 よってレンズ単体での販売はされなくなり、レンズ単体のセールスマニュアル等のカタログや価格表は存在しない。 縮小投影レンズの頑強な鏡胴には「Nikon」の銘板があるのみで、レンズには名前がない。

ズラリと露光装置用縮小投影レンズ

露光装置用縮小投影レンズの説明

投影レンズ(NSR-1010G用)1980年

投影レンズ(NSR-1505G2A用)1984年

投影レンズ(NSR-0510G用)1986年

投影レンズ(NSR-1505G4D用)1987年
牛田一雄社長(株式会社ニコン代表取締役兼社長執行役員)
が当時設計したもの

これらのレンズが活躍した時代。 1980年代の後半には、ニコン(約60%)とキヤノン(約30%)で、 全世界の 90%近くのシェアを取っていたのである。

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 次にいきましょう。   第 3 章  電子機器と半導体の歴史、おわりに

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第 1 章      ウルトラマイクロニッコール博物館
第 2 章      露光装置用縮小投影レンズへの道程
第 3 章      電子機器と半導体の歴史、おわりに

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