切り株の上にウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 前玉凹面の凛としたコーティングが美しい ● 初期型と後期型の話 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8の登場は1965年。 そして製品は継続して1974年のプライスリストにまで出ている比較的息の長い製品だった。 そのため種類も多い。 外観から見ると初期型はレンズ鏡胴の先の方が少し細くなっている。 そしてその次のモデルがこれだ。茶筒のようなストンとした外観。後期型と区別している。 しかし後期型でありながらレンズの刻印の書きぶりは初期型と同じ。 次に、ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8の種類を分類して表にまとめているが、 この分類によると後期型タイプ1となる。英語では「Late Model Type 1」と表記してみた。 このモデルのあとに倍率表示の赤い刻印( M=1/10 )が入った後期型タイプ2が登場するが、それまでの短い期間に市場に出たようだ。 このタイプの現存数は少ないと感じている。
ニコン純正品の40.5mm HN-N102 フードを着けた姿 ● ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8の種類 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8を分類してみると、 初期型と後期型にざっくり分けられ、後期型はさらに5つのタイプに分類できる。 以下に表にまとめてみた。 なお、このコンテンツでは、後期型タイプ1について言及している。
● この20年の動き ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8後期型タイプ1について、 最初にこのコンテンツを作ったのは2001年12月のことだった。 何回か言及していることではあるが、20年も時が経過すると、社会状況はもちろんのこと、 カメラ界を取り巻く状況も大きく変化している。 さらにはネットとかデジタル機器の世界は、劇的に進化し、 指数関数的に大きく変化し続けている。 下を向いて一心不乱にスマホを操作する一般ピープルの集団。 カメラといえばスマホの時代。 まさかカメラが総合電子機器になるとは想像もしなかった。電話も出来るから素晴らしい。 ガラス玉のようなレンズがなくなるのは時間の問題だろう。 そんな背景の中で、 大昔に生産を終了した時代遅れの産業用ニッコールレンズとか、 工業用ニッコールレンズを取り巻く環境の変化も同じく大きい。
社の古い木の縁台にレンズを置く 2001年当時の話であるが、 インターネットで、「ウルトラマイクロニッコール」とキーワードを入れてウェブサイトを検索しても、 何も情報が得られない時代だった。 Googleが日本語版サービスを開始した頃だったと思う。 調べてみるとGoogleの日本語版サービスを開始は2000年9月だったようだが。 しかしながら、本サイトからウルトラマイクロニッコールを中心に情報を発信し始めると、 この世界に関心を持つ方が少しづつ増えるに連れて、各種情報が得られるようになってきた。 e-bayなどの海外オークションサイトでも、これが売れるならばとの出品が目につくようになってきた。 モノが出てくると情報も出てくる。情報が出てくるとモノも。そんな流れを感じてきた。 2009年の夏には、東京大学駒場博物館で特別展「 小穴純とレンズの世界 」展が開催され、ウルトラマイクロニッコールの存在はさらに広く一般に知られるようになってきた。 このコンテンツは、サイト設立直後の雰囲気と状況理解のために、しばらくそのまま置いていたが、 さすがに今となってはの見当違いな話も散見されるので、 2017年に内容を大幅に見直し書き直すことにした。
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 後期型タイプ1 ● ホットドッグとウルトラマイクロニッコール もともとこのサイトは、 レンズの姿写真とレンズ緒元のカタログデータだけを並べたコンテンツにするつもりはなかった。 アートディレクションも含めて、画像や文章スタイル、サイトの方向性など、 誰もやっていないことをやろう、そういう思いが強かった。 20年前の想いを今さら説明してさらすのもみっともない気がするが、 このコンテンツの英語版の方には「なぜホットドッグにウルトラマイクロニッコール」なのかを書いてみた。 ご承知のとおり、ここで言うパースペクティブとは写真用語のそれではない。
New Perspective;
とにかく、ウルトラマイクロニッコールレンズを手にしてからは、 なんというか、世界観が変わってしまったのだ。 レンズが道を示してくれたような気がする。 当時の話であるが、カメラ雑誌や製品カタログに掲載されている写真を見てみると、 そもそも、自然を背景にレンズをポンと置いた画像はなかった。 商品としてのレンズの姿画像は、主に白い無機質な背景でのスタジオ撮影がほとんどだった。 いわゆるカタログ写真である。それをあえて自然の中にレンズを置いた。 そして食べ物とレンズのコラボを実現した。 刺身の舟盛りとの競演。 そして、ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8とホットドッグ。 カメラやレンズの解説には、食べ物はなじまないと言われる。 そのての解説本や雑誌では、レンズやカメラが食べ物と並んでブツ物撮りされることはなかった。 でもこのサイトは違う。食べればレンズがわかるのだ。
ホットドックとウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 そう、人は食べるために生きている。古いことわざにある。人はパンのみに生きる。 これは潔い生き方ではないか。 食べるために生きることがわかれば、健康にたのしく暮らすことが究極であることに気がつく。 パンのみに生きるようじゃダメと説いたのは、西洋思想である。 日本思想はどこまでも寛容だ。 ファストフードの店で、ハンバーガーではなく、ホットドッグを食べよう。 ソースがしみたコロッケパンでもよい。かつサンドだったら、うれしいものだ。 食べ物を語ることができれば、文章家として一人前という。 おいしさがみなぎれば巨匠だ。
ウルトラマイクロニッコールが似合うファストフードの店 ファストフードに、超スローレンズを置いた。 こういう情況でも、絵になるのが、ウルトラマイクロニッコールのすごいところだ。 レンズ第一面は凹面である。 室内の光線を吸収し、美しいパープルで硬質なコーテングが艶やかに透過する。 鏡胴はゴロリとして重量感がある。 熱いホットドッグにマスタードとケチャップをたっぷりかけてもらい、 ここは思想せずにかぶりつこう。 紙コップでは気分が出ないので、厚手の陶器のカップに苦めのコーヒーを飲む。 泡出つ淹れたてコーヒーの水面を観察する。 観察するためには、ウルトラマイクロニッコールでの撮影を試みたい。 平面解像力は得意なところだ。
ハンバーガーにもウルトラマイクロニッコール Ultra-Micro-NIKKOR 28mm F1.8 Nippon Kogaku Japan。 初期型の次のモデルだ。鏡胴はストンとずん胴になり、刻印も細かい。 レッドポイント(倍率表示の赤い刻印)は入っていない。コーテングはどこまでも美しい。 ● なんの役にも立たないヨタ話 2001年当時のコンテンツの中で書いた文章である。何回かの改版時に、削除したものだ。 しかしながら、なんの役にも立たないヨタ話を削除してしまうのは忍びない。 そんなで復活させてみた。以下のなんの役にも立たない檄文であります。
あまり考えない。 ● テクニカルデータ 初期型の次に位置する後期型としてのウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8。 後期型タイプ1に関するレンズ性能緒元ほかレンズ構成図が掲載されている資料が見当たらない。 後期型タイプ2からタイプ3へ続く過渡期の一時的に生産されたモデルのためか資料が残っていない。 参考として、 UMN 28mm F1.8 初期型 あるいは、 UMN 28mm F1.8 後期型タイプ2 の説明の中にあるテクニカルデータを参照していただきたい。 唐突ではあるが東京都庁第一本庁舎を背景にした画像を置いておく。 そもそも本サイトは唐突が多い。
東京都庁第一本庁舎とウルトラマンのツーショット ● 嘆き節は過去のものに 2001年当時はウルトラマイクロニッコールに関する情報がなく、 以下のような嘆き節を書いたものだった。 状況が変化しいったん削除してしまったが、 当時の嘆きから様相が大きく変わったので、昔と今を見ていただくために再び並べてみた。
このあたりの変化は、東京は品川のニコンミュージアムに行けばわかる。 2015年10月にオープンしたニコンミュージアムでは、 カメラはもちろんであるが、顕微鏡や双眼鏡、産業用光学機器の展示が充実している。 半導体製造装置の展示も黎明期のウルトラマイクロニッコールから、 ステッパー用レンズまで中身が濃い。 ウルトラマイクロニッコールに関しては現物の展示に加えて説明は親切で詳しい。 時代の流れと変化とともに、大きく取扱いが変わってきたのである。 20年前の嘆き節は過去のものとなったのだ。 さらにニコンミュージアムのことであるが、 2018年には企画展「世界最高解像度レンズの系譜 ウルトラマイクロニッコール」を開催してしまったのである。 こんな展示をやって誰が見に来るのか、と何度か企画を却下されたことだろう。 しかし実際は記録的な入場者だったのである。 通称、 ウルトラマイクロニッコール展 。 会期は、 2018年4月3日(火)〜6月30日(土)だった。 もう一般のカメラファンでもウルトラマイクロニッコールの名は周知され、誰でも知るところとなった。 ● 完成されたお道具レンズ 1960年代の半導体製造装置用のレンズである。 かるく50年は経過している。 しかしながら、現在でもお道具として通用する存在感と、その基本性能の高さには驚く。 フィルム式カメラからデジタルカメラとなり、 さらには、あり得ないほどの高機能を満載に積み込んだ高級フルサイズミラーレス機が 日本を代表するカメラ各社から出揃った。 ますますウルトラマイクロニッコールは実用の場を広げることだろう。 レンズの製造から50年が経過して、 やっとカメラの性能(撮像素子とソフトウェア)がレンズの性能に追いついてきた感がある。
凹面の前玉が渋いクールなレンズ 森の声を聞くウルトラマイクロニッコール 倍率表示の赤い刻印( M=1/10 )が入っていないのが特徴 レンズの中に映るアメジスト色の小宇宙 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8はアタッチメントサイズが40.5mm(P=0.5)のため、 「Nikon 1」シリーズ用の40.5mmフィルターが活用できる。 ニュートラルカラーNCフィルターは無色透明のレンズプロテクションフィルターだ。 同シリーズの40.5mmねじこみ式レンズフードは 「HN-N102」か「HN-N103」から選べる。 いずれも「MADE IN JAPAN」の刻印が凛々しく美しく、嬉しい。 40.5mmレンズキャップ「LC-N40.5」も用意されている。 どれも2021年現在まだ現行品で購入できるので、フィールド用に気軽に持ち歩ける。 以下の画像は40.5mmねじこみ式レンズフード「HN-N102」を着けた品格のあるお姿である。
ニコン純正品の40.5mm HN-N102 フードを着けた姿 ● 2018年ニコンミュージアムの展示から
「ウルトラマイクロニッコール展」において、ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 h線用と、
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8後期型(展示では説明されていないがe線用)
が展示されていたのでここで紹介したい。
ニコンミュージアム「ウルトラマイクロニッコール展」から
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 h(1967年)
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 h
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 e
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 e(1967年)
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8 e 画像は、企画展 「世界最高解像度レンズの系譜 ウルトラマイクロニッコール」より紹介させていただいた。 開催場所は、東京・品川のニコンミュージアム。 開催期間は、2018年4月3日(火)〜6月30日(土)であった。 詳しいその全貌と記録は「 ニコンミュージアムUMN展レポート 」 をご覧いただきたい。 ● 2021年のあとがき このコンテンツのオリジナルは2001年12月当時に書いたものです。 いきなり、ホットドッグにウルトラマイクロニッコールの画像で始まる物語です。 その後2016年のサイト移動に伴う見直しでは、画像を増やし文章の追加を行いました。 2017年の改版では、テクニカルデータを整理し 「ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8の種類分類」の表を組み入れました。 2019年の改版では、 2018年ニコンミュージアムの企画展「ウルトラマイクロニッコール展」で展示された品目から、 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.8に関する展示を紹介しました。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2021
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