Nikon Rayfact MJ 90mm F4 ● Rayfact の使い方 Nikon Rayfact MJ 90mm F4 は、カメラ用マウントに合わせて型式(かたしき)が 8種類存在する。 ニコン一眼レフカメラ用と同じニコンFマウントが用意されている。 一般の写真撮影にこのレンズを使いたいと考えている方には、ニコンFマウントモデルを推奨する。 なによりも、無加工でそのまま、ニコン一眼レフカメラに装着が可能なのだ。 私がこの Nikon Rayfact MJ 90mm F4 を撮影に使ってみたいと思った理由は、 倍率 -0.05X での使用が保証されており、無限遠でも高い性能が見込まれることだった。 さらには、ニコンFマウントモデルならば特殊なマウントアダプターを探したり、 特注しなくても済む、ということであって、このメリットは非常に大きい。 ● 注意すること 初期の紙カタログには、ご注意とのタイトルで、 「ニコン製カメラに取り付けて使用することは出来ません。」 との警告が明示されている。これには理由がある。 出来ない理由を検証するために実証実験を行った。 材料はシンプルにニコンFボディとレンズ(Nikon Rayfact MJ 90mm F4 のFマウントモデル)だ。 レンズ後玉部には一部のフィッシュアイ・ニッコールのような物理的な突起などない。 ミラーになにか干渉し衝突することはあり得ない。 Fマウント部はノーマルだし、電気接点などもない。 ならばと、レンズをニコンFボディに装着した。カチリと小気味よくロックできた。 しかしである。レンズを外すのに難儀した。このレンズのマウント部側は絶壁のような広大な平面となっている。 レンズ着脱ボタンを押そうにも、指が入らず押せないのである。 小さいプラ製定規でレンズ着脱ボタンを横から押して、ようやくレンズが外れた。 Nikon Rayfact MJ 90mm F4(Fマウントモデル)を、 ニコン一眼レフボディに直接装着するのは止めておいた方がよい。 ● Fマウント機では無限遠が出ない レンズの着脱を容易にするためには、スペーサーとして、中間リングなどを挿入するとよい。 私はたまたま手元にあったので、ニコン E2 リングを挿入した。 レンズ着脱ボタンも難なく押すことができて、いつも通りの着脱が可能となった。 しかし、近接撮影しかできない。 もともとレンズをダイレクトに装着した場合でも、最長撮影距離はざっくり 1.5メートルくらい。 この先にはピントが合わせられない。 レンズに E2 リングを挿入した場合だと、最長撮影距離は 50センチくらい。 近接撮影専用となる。
Fマウント機と Rayfact ● Z マウント機でも無限遠が出ない ニコンFマウントをニコン Z マウントに変換するアダプター「マウントアダプター FTZ」 あるいは「マウントアダプター FTZ II」があれば、 最新のニコン Z シリーズのミラーレスカメラに Nikon Rayfact MJ 90mm F4(Fマウントモデル)をそのまま装着できる。 しかしフランジバックがFマウント機と同じになるため、 同様に無限遠を出すことができず、近接撮影専用となる。
マウントアダプター FTZ ● 無限遠の出し方 ニコン Z シリーズのミラーレスカメラならば、 Nikon Rayfact MJ 90mm F4(Fマウントモデル)で無限遠を簡単に出せる。 要はマウントアダプター FTZより短く薄いアダプターがあればよいのである。 レンズそのものにヘリコイドを内蔵しているので、 アバウトに短めのアダプターを作るだけの話だ。 既成の市販品で組めばなんとかなるだろう。 私は以下の素材で、薄型の F-Z マウントアダプターを低価格かつ簡単に実現した。 M42-Z マウントアダプター レンズ側が M42マウント、カメラ側が Z マウントの薄型マウントアダプター。 薄い形状は変換リングに近い。Pixco製。 精度は許容の範囲。価格は極めて安い。税込みで 1,051円だった。
M42-Z マウントアダプター F-M42 マウントアダプター レンズ側が ニコンFマウント、カメラ側が M42マウントの薄型マウントアダプター。 メーカー名は不明。精度が少々不安であるが、実用上は運用でカバーすれば問題ない。 価格は極めて安い。税込みで 1,354円だった。
F-M42 マウントアダプター ● 薄型 F-Z マウントアダプターの完成 M42-Z マウントアダプターのM42メスネジに、 F-M42 マウントアダプターのM42オスネジをねじ込むだけ。 薄型 F-Z マウントアダプターの完成となる。
薄型 F-Z マウントアダプター
ニコン純正 FTZ(左)との薄さ比較
ニコン純正 FTZ との薄さ比較
ニコン純正 FTZ と薄型 FTZ ● 精度はニコン純正品でカバー この合体して構成した薄型 F-Z マウントアダプターに直接レンズを装着するのは躊躇する。 マウントアダプターの内蔵ピンが動作不全となり、レンズが外せなくなると困る。 対策として、この薄型 F-Z マウントアダプターにニコン純正の E2 リングを取り付けた。 この状態でレンズを装着する。いかにニコン純正品の信頼度が高いか実感できる。 そもそも、サードパーティー製のニコン Z マウント用各種マウントアダプターを揃えたが、 ニコン純正のボディキャップがスカスカゆるゆるなのである。 適度なヌメリ感のあるトルクでロックがかからないのだ。 それでも、ニコン純正品のマウントアダプターは商品化されていないし、 実用上は問題ないので使っているが。
ニコン純正 E2 リングを介してマウント
ニコン・ゼットで無限遠に迫る ニコン E2 リングを介してマウント。この状態で、すこしオーバーインフ。 ヘリコイドをわずかに廻して繰り出し、無限遠を出すことができる。 月にピントを合わせることができたので、有限の距離ではあるが、ほぼ無限遠と考えてよいだろう。 ● ヘリコイドの話 Nikon Rayfact MJ 90mm F4 レンズは、撮影倍率が可変の仕様となっている。 鋼鉄感まる出しの鏡胴を廻すとヘリコイドが動き、レンズ前玉が荘厳に繰り出してくる。 ほんらいの工場現場での使い方は、 検査装置にインストールし、倍率とレンズ絞り値を決定したら、 ロックねじで固定し、さらにはメタルシールをべったり貼り付け固定してしまう。 めったにヘリコイドも絞りリングも動かすものではない。 したがって、つるんとしたフルメタルで超超ジュラルミン削り出しのような鏡胴にはラバーも巻かれていない。 これでよいのだ。やわな人間に合わせる必要はまったくない。
ヘリコイド最短 上の画像。 ヘリコイド最短より少し戻すかんじで、いわゆる無限遠が出る。 下の画像。 ヘリコイドを繰り出し最長にすると、ごらんのとおり、前玉ユニットが顔を出す。 この域だと接写の世界となる。 カタログの写真にはこの状態の絵が使われているが、 現物を手にする前は、意味が理解できなかった。
ヘリコイド最長
フィルターとフードを装着 レンズ前玉のフィルター枠は、52mm P=0.75 である。なんともありがたい。 ニコン一眼レフ時代の最もポピュラーなフィルターは 52mm径だった。 手持ちの資源が活用できるし、新品を購入したところで、 きわめて流通しているサイズなので入手しやすい。 ニコンのすこし深めのレンズフード HS-14 はなにかと活躍する。 ● 究極の切れ味 さっそく試写をしてみた。 ファインダーに浮かぶ絵からして、そのオーラがハンパではない。 なんだこれは。桜の生命感と嬉しさが顔に出ているではないか。 Nikon Rayfact MJ 90mm F4 レンズの極上のシャープネスと極限の解像力。 お花の表情の繊細さやニュアンス、 そしてそれが伝える感情を捉えるのに特に適しているとみた。 柔和なきせつの空気感の撮影から、正確な科学写真まで、用途はかなり広い。
Nikon Rayfact MJ 90mm F4
Rayfact MJ 90mm F4, ASA 800 F8 1/640 sec. +1.7
Rayfact MJ 90mm F4, ASA 800 F8 1/1000 sec. +1.7
Rayfact MJ 90mm F4, ASA 800 F8 1/1250 sec. +1.7
Rayfact MJ 90mm F4, ASA 800 F8 1/400 sec. +2.0
Rayfact MJ 90mm F4, ASA 400 F8 1/1600 sec. -0.3 ● こんな写真家におすすめ Nikon Rayfact MJ 90mm F4 はあまり一般の写真家にはおすすめできない。 しかし少数派ではあるが、 重量 1トンを超えるレンズでないと満足できない方とか、 同じ F4.0レンズの枠組みで見ると、 超音速・高高度戦略偵察機 SR71ブラックバードに搭載された重量級極超解像力レンズ、 パーキンエルマー 36インチ F4.0 (917.5mm F4.0) を探しているがまだ入手できないでいる方にはおすすめだ。 次の章から、さらにニコン・ゼットのミラーレス普及機で撮影した実写画像を見ていただく。 写りを多角的に確認してから、入手を検討するか否かを判断していただきたい。 ● 記事のご案内 すべての場面において、画像の上で左クリックすると、大きいサイズの画像を表示できます。 細部までを確認したい方はどうぞ拡大してご覧ください。 → 次は実写画像です。 第 4 章 ニコン Z 写真帖 1 ショートカットはこちらからです。
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