December 2013, Nikon Kenkyukai     3

後藤研究室イン旧古河邸

ニコン後藤研究室

今回の特別レセプションのために、 「祝!ニコンDf新発売記念&ニッコール58mm F1.4新発売記念」 を掲げた大きな横断幕を用意しました。 しかしながら、画像で会場の様子をご覧の通り、 本館邸宅そのものが国指定の重要文化財のため、セロテープ一枚貼ることができません。 残念ながら横断幕を掲げるのを断念いたしました。 その代り、以下のレポートではちょっと大きめなロゴ文字を入れることで気持ちを込め、 気合を入れたいと存じます。

ニコン Df開発物語の口火を切る後藤哲朗様

今回のメインプログムは、ニコンファンにはお馴染みの、 株式会社ニコン フェロー  映像カンパニー後藤研究室室長でいらっしゃる後藤哲朗様のご登壇でスタートいたしました。 プレゼンテーション・セッションの始まりです。

もうすでに、2013年11月 5日のプレス向け製品発表会の場や、 2013年11月16日〜17日の日程で東京は品川で開催された 「Nikon Df体験イベント Nikon Digital Live 2013」、 そしてカメラ雑誌やネットなど各種メディアにご登場され、 ニコン Dfの開発についてご説明されているのをご承知のことと思います。

エンジン全開・爆走モードでご講演される後藤哲朗室長

ここだけの話も飛び出しそこは収録不可ということで

後藤哲朗様のご講演によりますと、2009年に後藤研究室が開設された時に、 「ニコンの DNAとは何か」について、原点に立ち戻り注意深く検証したそうです。 そしてアナログ技術である「光学とメカニズム」にこそニコンの存在価値があると確信したのです。

後藤哲朗様のご講演はさらに続きます。 ニコン Dfの開発は 2009年に始めたのですが、 当時はすでに家電など電気メーカーもデジタルカメラに参入しており、 無線技術などは電気メーカーの方が先を行っている状況にありました。 電気メーカーの持つ技術はお金を出して提供してもらったり、 共同開発という形で手にすることはできます。 しかしながら、それだと、カメラが写真機ではなく電気製品になってしまう。 ニコンがカメラ好き、写真好きに提供するものは電気製品ではいけないと考えました。

言葉で表現するのは難しいのですが、手になじむデザイン、 カッチリした小気味よい操作感、心地よいシャッター音、 そんな要素を重要視して新しいコンセプトの製品を開発することを決めました。

ニコン社内で新製品について企画・開発の背景を説明し、社内で反応を聞いて回ったところ、 賛否両論が出たそうです。 しかも従来の機種では考えられないほど賛否両論が極端に分かれたとのことでした。

ニコン Dfは、 製品発表前からインターネットでチョイ出し広告(ティーザー広告)があったことで話題を集めました。 そして製品発表され、まだ実機が発売されていない時にもかかわらず、 ネット上では賛否両論で大きく議論されていました。 発売前からこれほど語られたカメラはいまだ知りません。

「ニコンの DNAとは何か」を語るニコンフェローの後藤哲朗様

後藤哲朗様のお話と納得の議論に会場は感動

ニコン Dfの詳細解説

続けて、ニコン Dfのプロダクトマネージャーである ニコン映像カンパニー後藤研究室主幹研究員の三浦康晶様がご登壇されました。 プレス向けの公式発表の場ですと、 なかなかフレンドリーというわけにはいきませんが、 今回のレセプションのように 少人数でこじんまりとしたマニヤ限定の集まりにはリラックスしていただいたようで、 ニコン Dfの詳細について非常に楽しい語りで解説してくださいました。

ニコン Dfのマニアックな開発物語を楽しく語る絶好調の三浦康晶様

会場には、新しいニッコール 58mm F1.4 を装着した購入したばかりのニコン Dfを手に参加した会員もいました。 すると突然、三浦康晶様から、 「ほぼ市販品に近いものですが」と言葉を添えて、 ニコン Df量産直前スペシアルの現物機が回覧されました。

量産直前スペシャル機をお見せいただくなんて、ここに参加しているマニヤ集団にとっては、 「火にダイナマイトを投げ込むような」あぶない行為です。 すでに大谷利勝博士はニコン Df量産直前スペシャル機を手にして検証を始めています。

ニコン Df量産直前スペシアルに興味を示す大谷利勝博士

後光に輝く三浦康晶様

三浦康晶様のご講演がクライマックスに突入しました。 そのお姿の背景からは輝かしい後光が射してします。すでに宗教の境地となりました。

ニコン Dfのプロダクトマネージャーのお立場から、 数値で表すことのできる機能仕様、これはカタログを見れば分かりますが、 そういったものではなく、 「大人のカメラファン」がじっくりと写真撮影に向き合うときの 「武器としてのニコン」であることを、 カメラ好きが背広を着て歩いているようなそのお人柄と、 語り尽くせない言葉の奥からかんじとることができました。

詳しいテクニカル情報満載のご講演

AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの開発

マニヤなニコン物語は、さらに光速近くに加速し炸裂します。 ここに参加しているマニヤ集団に向けて、 続いて、「火にミサイルを打ち込むような」 ご講演が始まりました。 かなりあぶないです。臨界に近づいてきたことが肌でかんじられます。

「ニッコール千夜一夜物語」の執筆で有名な佐藤治夫様が設計された、 AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G の開発物語です。 ご講演に先立ち、後藤研究室の後藤哲朗様と三浦康晶様によるイントロダクションがあり、 開発本部の佐藤治夫様がご登壇となりました。

後藤哲朗様と三浦康晶様による豪華なイントロで佐藤治夫様がご登壇
(このスリーショットは全世界初公開となります)

思い入れたっぷりに AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G を語る佐藤治夫様

レンズマニヤによるレンズマニヤに向けたレンズマニヤなご講演

数値で語るよりも、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G で撮影された絵を見てもらいましょう。 そう言って、佐藤治夫様は著名プロ写真家が撮影された作例をスクリーンに投影されました。 著作権の関係で現物を示すことは控えさせていただきますが、 作例はすべて作品です。

点像の高精度な映像化、ダイナミックな三次元ハイファイ特性、そして豊かで気品のあるボケ味の醸成。 観測天文学におけるデータ解析からプリミティブな芸術写真、 そして大正浪漫あふれる旧古河邸のような女性のポートレイトにも最適な、 オールランドな 58mm写真鏡玉であることが実感できました。

プロ写真家による精緻な表現を解説(作例画像は処理しています)

設計者自らドリームレンズの可能性を語ります

ニコン研究会からプレゼン

ニコン研究会からのアンサーセッションが始まりました。 はじめにマイクを握ったのは小秋元龍氏です。

トンキン湾で戦闘行動中の航空母艦のカタパルトから、 写真報道装置ニコンSPで緊迫する戦闘機の出撃記録を爆音取材。 ケープカナベラル空軍基地からアポロ11のリフトアップをテレビ実況中継。 空飛ぶ豪華ホテル時代のパンナムを愛し、航空機から映画スターの撮影まで、 きわめてダイナミックレンジの広い報道シーンに現在も身を置き、 戦後の日本写真機工業史を俯瞰できるポジションをキープしている現役のフォトジャーナリスト小秋元龍プロ。 本日の龍さんのプレスコーナーは、クリスマス特別版です。

昭和史を基軸にニコンとの関わり物語を語る小秋元龍氏

小秋元龍氏から、ペーパー資料が配布され詳しい解説が行われました。 1つは、大日本帝国海軍零式(れいしき)艦上戦闘機の氏手製の写真集。 大日本帝国海軍坂井三郎中尉が機上からライカを使って僚機を撮影したものです。 オリジナルネガから氏自身によるプリントです。 驚くべきことにそのオリジナルネガフィルムの現物が公開されました。

2つ目の資料は、「朝日新聞社訪欧機"神風"について」。 航空ジャーナリスト小秋元龍氏のオリジナル書き下ろし読み物となっています。 盛り込まれた写真から、深田祐介氏のノンフィクション「美貌なれ昭和」の世界が語られました。 まさに、美貌の天才バイオリスト諏訪根自子と神風号の男たちとの、 昭和の青春が束の間放った火花を見ました。

トラディショナルな空間には小秋元龍氏の昭和な話が似合う

プレゼンテーション・セッションの最後に登壇したのが、川合隆之氏です。 米国在住の川合隆之氏は、 本日の特別レセプションのために米国から駆けつけました。 氏は数々のニコン・スーパーコレクションをお持ちですが、 本日お披露目になったのは、ニコン S2の特装試作機。S2Xと言うのでしょうか。 ファインダー枠の形状がユニークで、 シンプルかつ非常に工夫された仕組みを持つニコン S2のプロトタイプです。

形状がユニークなファインダー枠の設計思想を考察する川合隆之氏

窓の外には夕闇が迫り川合隆之氏の熱い語りは佳境を迎える

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 では次にいきます。   第 4 章  カクテルパーティー

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第 2 章      特別レセプション
第 3 章      ニコン後藤研究室
第 4 章      カクテルパーティー

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