Ultra Micro Nikkor 28mm F1.8 Late Model Type 1

切り株の上にウルトラマイクロニッコール28mm F1.8

前玉凹面の凛としたコーティングが美しい

初期型と後期型の話

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の登場は1965年。
そして1974年のプライスリストにまで出ている比較的息の長い製品だった。
そのため種類も多い。

外観から見ると初期型はレンズ鏡胴の先の方が少し細くなっている。
そしてその次のモデルがこれだ。茶筒のようなストンとした外観。後期型と区別している。
しかし後期型でありながらレンズの刻印の書きぶりは初期型と同じ。
次に、ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類を分類して表にまとめているが、 この分類によると後期型タイプ1となる。英語では「Late Model Type 1」と表記してみた。

このモデルのあとに倍率表示の赤い刻印( M=1/10 )が入った後期型タイプ2が登場するが、それまでの短い期間に市場に出たようだ。 このタイプの現存数は少ないと感じている。

ニコン純正品の40.5mm HN-N102 フードを着けた姿

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を分類してみると、 初期型と後期型にざっくり分けられ、後期型はさらに5つのタイプに分類できる。 以下に表にまとめてみた。
なお、このコンテンツでは、後期型タイプ1について言及している。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類分類

種  類 外観 刻  印 レア度
初期型 先細 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 281964
後期型タイプ1 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 282068
後期型タイプ2 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10
Nippon Kogaku Japan No. 282372
後期型タイプ3 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 48186X
後期型タイプ4
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 29884X
後期型タイプ5
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
30009X Nikon
☆☆☆

  • 外観において先細はレンズの前玉側鏡胴が少し細くなっているものを指す。
  • 外観において茶筒はレンズ鏡胴がずん胴な形のものを指す。
  • 種類において後期型タイプ3からe線用とh線用が登場する。
  • 種類において後期型タイプ4からシリアル番号が緑色(常磐緑)となる。ウグイスと言う。

  • 刻印においてタイプ3から赤い刻印の末尾がeあるいはhとなる。
  • 刻印においてタイプ5は製造シルアル番号にNo.記号がない。
  • 刻印においてタイプ5はNippon Kogaku JapanではなくNikonとなる。

  • レア度の☆は探していれば1年以内にモノが出てくるレベル。
  • レア度の☆☆☆は15年に一度程度の出現率。世に存在はしているレベル。
  • 製造シリアル番号はあまり規則性はないと思えるので分類には使用しない。

この15年間の動き

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8後期型タイプ1について、 最初にこのコンテンツを作ったのは2001年12月のことだった。

何回か言及していることではあるが、15年以上も時が経過すると、社会状況はもちろんのこと、 カメラ界を取り巻く状況も大きく変化している。
さらにはネットとかデジタル機器の世界は、劇的に進歩し、大きく変化し続けている。

下を向いて一心不乱にスマホを操作する一般ピープルの集団。
カメラといえばスマホの時代。
まさかカメラが総合電子機器になるとは想像もしなかった。電話も出来るから素晴らしい。
ガラス玉のようなレンズがなくなるのは時間の問題だろう。

そんな背景の中で、大昔に生産を終了した 時代遅れの産業用ニッコールレンズとか工業用ニッコールレンズを取り巻く環境の変化も同じく大きい。

社の古い木の縁台にレンズを置く

2001年当時の話であるが、 インターネットで、「ウルトラマイクロニッコール」とキーワードを入れてウェブサイトを検索しても、 何も情報が得られない時代だった。 Googleが日本語版サービスを開始した頃だったと思う。
調べてみるとGoogleの日本語版サービスを開始は2000年9月だったようだが。

しかしながら、本サイトからウルトラマイクロニッコールを中心に情報を発信し始めると、 この世界に関心を持つ方が少しづつ増えるに連れて、各種情報が得られるようになってきた。
e-bayなどの海外オークションサイトでも、これが売れるならばとの出品が目につくようになってきた。 モノが出てくると情報も出てくる。情報が出てくるとモノも。そんな流れを感じてきた。

2009年の夏には、東京大学駒場博物館で特別展「 小穴純とレンズの世界 」展が開催され、ウルトラマイクロニッコールの存在はさらに広く一般に知られるようになってきた。
このコンテンツは、サイト設立直後の雰囲気と状況理解のために、しばらくそのまま置いていたが、 さすがに今となってはの見当違いな話も散見されるので、 2017年に内容を大幅に見直し書き直すことにした。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 後期型タイプ1

ホットドッグとウルトラマイクロニッコール

もともとこのサイトは、 レンズの姿写真とレンズ緒元のカタログデータだけを並べたコンテンツにするつもりはなかった。
アートディレクションも含めて、画像や文章スタイル、サイトの方向性など、 誰もやっていないことをやろう、そういう思いが強かった。

15年前の想いを今さら説明してさらすのもみっともない気がするが、 このコンテンツの英語版の方には「なぜホットドッグにウルトラマイクロニッコール」なのかを書いてみた。
ご承知のとおり、ここで言うパースペクティブとは写真用語のそれではない。

New Perspective;
The Ultra Micro Nikkor lenses gave me a whole new perspective on my life.
If I had not met them, I would not take pictures of lenses and hot dogs.

とにかく、ウルトラマイクロニッコールレンズを手にしてからは、 なんというか、世界観が変わってしまったのだ。 レンズが道を示してくれたような気がする。

当時の話であるが、カメラ雑誌や製品カタログに掲載されている写真を見てみると、 そもそも、自然を背景にレンズをポンと置いた画像はなかった。
商品としてのレンズの姿画像は、主に白い無機質な背景でのスタジオ撮影がほとんどだった。 いわゆるカタログ写真である。それをあえて自然の中にレンズを置いた。

そして食べ物とレンズのコラボを実現した。
刺身の舟盛りとの競演。 そして、ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8とホットドッグ。
カメラやレンズの解説には、食べ物はなじまないと言われる。
そのての解説本や雑誌では、レンズやカメラが食べ物と並んでブツ物撮りされることはなかった。 でもこのサイトは違う。食べればレンズがわかるのだ。

ホットドックとウルトラマイクロニッコール28mm F1.8
(撮影年は2001年12月)

そう、人は食べるために生きている。
古いことわざにある。人はパンのみに生きる。
これは潔い生き方ではないか。
食べるために生きることがわかれば、 健康にたのしく暮らすことが究極であることに気がつく。
パンのみに生きるようじゃダメと説いたのは、西洋思想である。
日本思想はどこまでも寛容だ。

ファストフードの店で、ハンバーガーではなく、ホットドッグを食べよう。
ソースがしみるコロッケパンでもよい。かつサンドだったら、うれしいものだ。
食べ物を語ることができれば、文章家として一人前という。
おいしさがみなぎれば巨匠だ。

ウルトラマイクロニッコールが似合うファストフードの店

平面解像は得意なところ

ファストフードに、超スローレンズを置いた。
こういう情況でも、絵になるのが、ウルトラマイクロニッコールのすごいところだ。
レンズ第一面は凹面である。
室内の光線を吸収し、美しいパープルで硬質なコーテングが艶やかに透過する。
鏡胴はゴロリとして重量感がある。

熱いホットドッグにマスタードとケチャップをたっぷりかけてもらい、 ここは思想せずにかぶりつこう。 紙コップでは気分が出ないので、厚手の陶器のカップに苦めのコーヒーを飲む。
泡出つ淹れたてコーヒーの水面を観察する。
観察するためには、ウルトラマイクロニッコールでの撮影を試みたい。
平面解像度は得意なところだ。

Ultra-Micro-NIKKOR 28mm F1.8 Nippon Kogaku Japan。
初期型の次のモデルだ。鏡胴はストンとずん胴になり、刻印も細かい。
レッドポイント(倍率表示の赤い刻印)はない。コーテングはどこまでも美しい。

ハンバーガーにもウルトラマイクロニッコール
(撮影年は2001年12月)
マックドナルドの紙コップとか雰囲気が古い

テクニカルデータ

初期型の次に位置する後期型としてのウルトラマイクロニッコール28mm F1.8。
後期型タイプ1に関するレンズ性能緒元ほかレンズ構成図が掲載されている資料が見当たらない。
後期型タイプ2からタイプ3へ続く過渡期の一時的に生産されたモデルのためか資料が残っていない。

参考として、
ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 初期型 あるいは、
ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 後期型タイプ2 の説明の中にあるテクニカルデータを参照していただきたい。

唐突ではあるが東京都庁第一本庁舎を背景にした画像を置いておく。
そもそも本サイトは唐突が多い。

東京都庁第一本庁舎とウルトラマンのツーショット
(撮影年は2001年12月)

嘆き節は過去のものに

2001年当時はウルトラマイクロニッコールに関する情報がなく、 以下のような嘆き節を書いたものだった。
いったん削除をしてしまったが、 当時の嘆きから様相が大きく変わったので昔と今を見ていただくために並べてみた。

振り切れた思考回路

はじめてウルトラマイクロニッコールを手にしたとき、その存在感に私の思考回路は振り切れた。 この魅力的なレンズを知りたいと思った。
この極超高解像度レンズは、どのように生み出されたのか。誰が作ったのか。
日本光学にとって、このレンズの存在はなんだったのか。
なぜ今、現代では歴史に残らないのか。残さないのか。

有名であって無名な、不思議な扱いはどうしてなのか。
いまだ伝説は語り継がれいるが、正確な情報はなぜないのか。
世界各国で珍重される存在ということを、日本光学は知っているのか。
ホットドッグを食べながら、熱いコーヒーを飲むと、 人は食べるために生きなくてはならないのに、思想してしまっている私がいた。

このあたりの変化は、東京は品川のニコンミュージアムに行けばわかる。
2015年10月にオープンしたニコンミュージアムでは、 カメラはもちろんであるが、顕微鏡や双眼鏡、産業用光学機器の展示が充実している。
半導体製造装置の展示も黎明期のウルトラマイクロニッコールから、 ステッパー用レンズまで中身が濃い。
ウルトラマイクロニッコールに関しては現物の展示に加えて説明は親切で詳しい。
時代の流れと変化とともに、大きく取扱いが変わってきたのである。
15年前の嘆き節は過去のものとなったのだ。

完成されたお道具レンズ

1960年代の半導体製造装置用のレンズである。
かるく50年は経過している。
しかしながら、現在でもお道具として通用する存在感と、その基本性能の高さには驚く。
フィルム式カメラからデジタルカメラとなり、 さらには、あり得ないほどの高機能を満載に積み込んだ高級ミラーレス機の出現により、 ますますウルトラマイクロニッコールは実用の場を広げることだろう。
レンズの製造から50年が経過して、 やっとカメラの性能(撮像素子とソフトウェア)がレンズの性能に追いついてきた感がある。

凹面の前玉が渋いクールなレンズ

森の声を聞くウルトラマイクロニッコール

倍率表示の赤い刻印( M=1/10 )が入っていないのが特徴

レンズの中に映るアメジスト色の小宇宙

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8はアタッチメントサイズが40.5mm(P=0.5)のため、 「Nikon 1」シリーズ用の40.5mmフィルターが活用できる。
ニュートラルカラーNCフィルターは無色透明のレンズプロテクションフィルターだ。
同シリーズの40.5mmねじこみ式レンズフードは 「HN-N102」か「HN-N103」から選べる。
MADE IN JAPANが嬉しい。40.5mmレンズキャップ「LC-N40.5」も用意されている。
いずれも2017年現在現行品で購入できるので、フィールド用に気軽に持ち歩ける。
以下は40.5mmねじこみ式レンズフード「HN-N102」を着けた凛々しい姿。

ニコン純正品の40.5mm HN-N102 フードを着けた姿

2017年のあとがき

2017年のあとがきを書くにあたり、 いったん削除した2001年当時のコンテンツの中で書いた文章を再掲することにした。 以下の檄文である。

ここまで読んだ方は、ホットドッグが食べたくなったでしょう。
カメラファンだったら、ウルトラマイクロニッコールを手にしてみたくなったでしょう。
あまり考えずに食べて、あまり考えずにカメラを持てば、 特殊なレンズも手になじんでくる。

てんぷらそばにでれでれ煮込んだなべやきうどん。
しやし中華に、東京ラーメン。
かつ丼もいいけど親子丼。喫茶店の正調スパゲッチナポリタン。
給食のようなカレーライス。いなり寿司に太巻き寿司運動会仕様。
こはだに赤身、たまごやき。伝統的な江戸前寿司もよい。 ぶ厚いクラブハウスサンドに生ビール。 ベーコン・レタス・トマトのサンドもすてがたい。
くじらの大和煮かんづめテントは夏の空の下。

B級な食べ物は、なぜにうまいのか。
食べ物とレンズ趣味を組み合わせるのも、新しいコンセプトになりそう。
新しいことはふつうのことなのだ。

あまり考えない。
いまでも大切なことです。

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