Ultra Micro Nikkor 28mm F1.8 Early Model

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8初期型

ウルトラマイクロニッコールのスタンダード

いま現在でも、アバウトにウルトラマイクロニッコールというと、一般的にはこの28mm F1.8レンズを指す。 それだけウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の現存数は多い。
多いといっても、希少種であることには違いないが。

爽やかに風が抜ける木陰の下。
ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8はL39ライカスクリューマウントのため、 マウントアダプタさえ用意できればどんなカメラにもセット可能だ。
L-F接続リングを介してニコンFに取り付けてある。

この写真はウェブ掲載用に撮影した姿写真であって、 この状態では普通の35ミリ一眼レフカメラで写真を撮影することはできない。 ピントが出ないのだ。
ベローズ装置に付けて、長く伸ばしてもピントは出ない。
ミラーレスカメラではこの限りではないが、 普通の35ミリ一眼レフカメラに装着して撮影する方法は、「 UMN いかにマウントし使いこなすか 」で説明しているので参照してほしい。

日本の果物は柿

柿にはウルトラマイクロニッコール28mm F1.8がよくにあう。
むかしからよく言われていることだ。
のんびりした柿の木の下で、日本の秋を見つめている。

柿にウルトラマイクロニッコール28mm F1.8とニコンF2チタン
(撮影年は2001年10月)

上の画像は2001年当時に150万画素の現在では非力なデジタルカメラで撮影した。
ジャギーにモアレが目立つ画像ではあるが、絵が力強く説得力があるのでそのまま残した。
レンズの気迫がよく出ていると思っている。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を分類してみると、 初期型と後期型にざっくり分けられ、後期型はさらに5つのタイプに分類できる。 以下に表にまとめてみた。
なお、このコンテンツでは、初期型について言及している。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類分類

種  類 外観 刻  印 レア度
初期型 先細 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 281964
後期型タイプ1 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 282068
後期型タイプ2 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10
Nippon Kogaku Japan No. 282372
後期型タイプ3 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 48186X
後期型タイプ4
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 29884X
後期型タイプ5
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
30009X Nikon
☆☆☆

  • 外観において先細はレンズの前玉側鏡胴が少し細くなっているものを指す。
  • 外観において茶筒はレンズ鏡胴がずん胴な形のものを指す。
  • 種類において後期型タイプ3からe線用とh線用が登場する。
  • 種類において後期型タイプ4からシリアル番号が緑色(常磐緑)となる。ウグイスと言う。

  • 刻印においてタイプ3から赤い刻印の末尾がeあるいはhとなる。
  • 刻印においてタイプ5は製造シルアル番号にNo.記号がない。
  • 刻印においてタイプ5はNippon Kogaku JapanではなくNikonとなる。

  • レア度の☆は探していれば1年以内にモノが出てくるレベル。
  • レア度の☆☆☆は15年に一度程度の出現率。世に存在はしているレベル。
  • 製造シリアル番号はあまり規則性はないと思えるので分類には使用しない。

おおらかな初期型の存在感

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を生態系ごとに分類すると、かなりの数になる。
アバウトにいっても、初期型と後期型がある。
後期型からh線用が製品化され、 これをきっかけにe線用とh線用が明確に分けられて主に企業や研究機関向けに販売された。

さて初期型の話だ。
外観から見た特徴について説明したい。 レンズボディを横から見ると初期型は先がいくぶん細く仕上げてある。 後期型はストンと茶筒(円柱)のような形状なので比べるとすぐわかる。
コーティングはオーソドックスなパープルから深い瀬戸内海ブルーで、仕上げは美しい。
一般のカメラ用のレンズとは趣が異なり、涼しげな透明感があるのは、さすがである。

下の画像はニコン研究会でウルトラマイクロニッコールを持ち寄った時のもの。
28mm F1.8初期型だけでも3本が集まった。
先が細めという外観の特徴をよくとらえた画像なので掲載した。
ニコン研究会 2007年11月例会レポート より。

UMN 28mm F1.8初期型の外観の特徴

お気に入りのレンズなので、 私はウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を4本所有している。
意図したわけではないが、集まっていた。

4本のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8のうち3本は、 ウィーン、ニューヨーク、ヨーロッパの海外から帰国した。
しかしこの初期型だけは、日本の出土品だ。 日本のネットオークションで入手した。
もっとも、出品者のお父さんが海外で買ってきたそうで、 レンズは帰国子女となるようだ。
出品者さんのお話しによると、だれも使い方がわからないし、 カメラ店に聞いても何のレンズかわからなかったという。
長い間使われないでいたので、分かる人へ譲りたいとの出品だった。
やはり、レンズとの出会いは縁だ。

レンズ前玉は小さいが精悍なコーティングの眼光は鋭い

テクニカルデータ

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の性能緒元をみてみよう。
初期型の性能緒元とレンズ構成図を示す。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 (初期型)

−焦点距離: 27.5mm
−最大絞り: F1.8
−最小絞り: F8
−レンズ構成: 7群9枚
−基準倍率: 1/10X
−画 角: 7.6度
−色収差補正波長域: 546nm (e-line)
−口径蝕: 0% (F1.8にて)
−歪曲収差: -0.06%
−解像力: 700本/mm
−画像サイズ: 4mmΦ
−原稿サイズ: 40mmΦ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 315mm
−重量: 312g
−当時の価格: 160,000円 (1969年1月)

解像力は日本語版のニコンセールスマニュアルによると700本/mm。 英語版のニコン資料では「650 lines or more」との表現になっている。 いずれにせよ驚愕ものである。
レンズ構成は7群9枚。下図のレンズ構成図に示すとおり、前玉も後玉も凹レンズ。
前玉が凹面というのは一般のカメラレンズではあまりなじみがない。
また前群2枚のレンズがごく薄いことに注目。
小さいわりにはゴツい鏡胴の仕上がりと重量感に比べて、 中のレンズ構成はかなりデリケートな造りとみた。

当時の価格が知りたかったが、裏付けの取れる一次資料が長年見つからなかった。
しかしその後、「Nikkor」とタイトルの付いたパンフレットを入手できた。 日本光学工業株式会社が昭和44年(1969年)1月に発行した小冊子である。
ここにウルトラマイクロニッコールの価格が掲載されていたのだ。 160,000円である。
昭和43年(1968年)〜昭和44年(1969年)の160,000円である。
現代の価値で考えるといくらぐらいか。
統計資料によると当時の大卒初任給は30,000円ちょい位らしい。

以下の画像は縮小されているので画面で見ると少々薄いが、 画像上でクリックすると大き目のサイズで表示されるので確認していただきたい。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8(初期型)のレンズ構成図

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8(初期型)のレンズ各部寸法

昭和が生んだ伝説の極超高解像度レンズ

時代遅れとなった半導体製造装置に取り付けられていた、 ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8。 役目を終えたしまうと、そのほとんどが、日本では廃棄処分になってしまった。
研究開発目的であればなおさら、廃棄、ハンマーで砕かれる運命にあった。
税制のためかは知らないが、昭和が生んだ伝説の極超高解像度レンズは修羅場を見た。

海外では、まだまだウルトラマイクロニッコールが温存されている。
破壊から逃れたウルトラマイクロニッコールが、まだ日本への帰国を望んで生きている。
手を差しのべる機会はまだ、ある。

前玉が凹面のただものではない気配とオーラを放つレンズ

小さなスーパーハイエンド

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 初期型。
レンズ構成7群9枚。基準倍率1/10倍。色収差補正は546nm (e-line)。
歪曲収差はたったの-0.06%だ。
ウルトラパワーが引き出す解像力スペックは、700本/mm!のスーパーハイエンド。
手になじんだカメラに着けてあげて、第二の人生をレンズにも。
望郷の夢をみるレンズが多いことを知ったのは、最近のことだつた。

木陰で思想するウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の知的な横顔

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の順方向マウント

さて従来の35ミリ一眼レフカメラでは、このレンズを使用する場合は、 レンズをリバース(逆付け)してカメラやベローズ装置等に装着していた。
デジタル一眼レフであろうとフィルム式の一眼レフカメラであろうと、 従来の35ミリ一眼レフカメラでは、 このレンズのバックフォーカスが短かいことから合焦できなかったためである。

その問題が、 バックフォーカスが短かく撮像素子のフォーマットが小さいミラーレスカメラの登場により解決した。 レンズをリバースしなくても、レンズを順方向に装着して、ピントが出ることが確認できた。
ただし、順方向ではイメージサークルが小さいので、レンズを順方向に装着した場合は、 撮像素子のフォーマットが小さいカメラの方が有利である。
以下の画像は、ニコン研究会の例会(2009年9月)で、 実際にカメラに装着して撮影している様子を紹介する。

場所はカジュアルなレストラン。
東大駒場キャンパス内の「ブラッスリー ルヴェ ソン ヴェール 駒場」である。

大学キャンパス内の静かなレストランでレンズ談義

初期型のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を順方向に装着し撮影している様子

2017年のあとがき

このコンテンツのオリジナルは2001年10月当時に書いたものです。
その後2016年のサイト移動に伴う大幅な見直しで、 記述の修正や画像の追加を行いました。
さらに2017年の改版では、今となっては画像品質がよくない画像を一部取り下げ、 新たに撮影した画像と差し替えました。 いまさらインターネットの優位性を語ることもないでしょう。 そのあたりの記述も整理しました。

このウルトラマイクロニッコール28mm F1.8は、 撮像素子の小さいミラーレスカメラならば、 レンズを順方向に装着して撮影が可能ですから、 レンズフードまで装着した画像を追加しました。
アクセサリーの1つの提案としてお読みください。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8はアタッチメントサイズが40.5mm(P=0.5)ですので、 「Nikon 1」シリーズ用の40.5mmフィルターが活用できます。
ニュートラルカラーNCフィルターは無色透明のレンズプロテクションフィルターです。
同シリーズの40.5mmねじこみ式レンズフードは 「HN-N102」か「HN-N103」から選べます。
MADE IN JAPANが嬉しい。40.5mmレンズキャップは「LC-N40.5」です。
いずれも2017年現在現行品で購入できますから、外歩きに用に気軽に装着できます。

ニコン純正品の40.5mm HN-N102 フードを着けた姿

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