Ultra Micro Nikkor 28mm F1.8 Late Model Type 2

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8 後期型タイプ2

目に鮮やか赤い刻印

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8赤文字入り。後期型に分類される。
魅力的なレンズは小さくても、どこかかわいいところがある。
たとえば、お道具拝見の場で、興味のある人にレンズをみてもらう。
現物をはじめて手にする方は同じことを言う。
「意外と小さいね。」
「超高解像度レンズだから、もっと大きいかと思った。」

赤い文字のM=1/10倍率刻印が目印

ウルトラマイクロニッコールは超高解像度レンズではなく、 極超高解像度レンズだ。
極めが冠されている。ウルトラのウルトラたるプライドだ。
名レンズの誉れ高い西ドイツはローデンストック社のウルトロンとは分野こそ違うが、 どちらも誰もが認めるその分野の達人である。

一歩踏み出す勇気が得られるならばそれはレンズの人徳だろう

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を分類してみると、 初期型と後期型にざっくり分けられ、後期型はさらに5つのタイプに分類できる。 以下に表にまとめてみた。
なお、このコンテンツでは、後期型タイプ2について言及している。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8の種類分類

種  類 外観 刻  印 レア度
初期型 先細 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 281964
後期型タイプ1 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm
Nippon Kogaku Japan No. 282068
後期型タイプ2 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10
Nippon Kogaku Japan No. 282372
後期型タイプ3 茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 48186X
後期型タイプ4
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
Nippon Kogaku Japan No. 29884X
後期型タイプ5
ウグイス
茶筒 Ultra-Micro-NIKKOR 1:1.8 f=28mm M=1/10 e
30009X Nikon
☆☆☆

  • 外観において先細はレンズの前玉側鏡胴が少し細くなっているものを指す。
  • 外観において茶筒はレンズ鏡胴がずん胴な形のものを指す。
  • 種類において後期型タイプ3からe線用とh線用が登場する。
  • 種類において後期型タイプ4からシリアル番号が緑色(常磐緑)となる。ウグイスと言う。

  • 刻印においてタイプ3から赤い刻印の末尾がeあるいはhとなる。
  • 刻印においてタイプ5は製造シルアル番号にNo.記号がない。
  • 刻印においてタイプ5はNippon Kogaku JapanではなくNikonとなる。

  • レア度の☆は探していれば1年以内にモノが出てくるレベル。
  • レア度の☆☆☆は15年に一度程度の出現率。世に存在はしているレベル。
  • 製造シリアル番号はあまり規則性はないと思えるので分類には使用しない。

涼しげなパープルコーティングが美しい前玉

市場には比較的よく出てくるレンズ

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8には、たくさんの種類・ バリエーションがあるが、いちばん数が作られたのは、 この後期型の赤文字入りではないか。
赤文字とは、M=1/10と刻印され鮮明なラッカーが流し込まれているその文字を指す。
Red Pointと言って区別している。
いちばん製造されたのではないかと考えたのは、市場の出現数からの仮説だ。
上に示す分類表では、後期型タイプ2と後期型タイプ3あたりである。

2001年の秋頃。 本サイトを立ち上げた直後だったと思うが、 野暮は承知で株式会社ニコンにウルトラマイクロニッコールの製造数を問い合わせてみたが、 不明だった。
カメラやカメラ用レンズと違って陽の目をみなかったレンズだ。 しかたのないことだと思う。
ただ、情報は生き物であるから、 このサイトのように物好きがひたすらエールを送っていれば、 おのずと情報も出てくるものと信じる。
古い時代の情報と真実は、新しい時代で、 具体的に言うと世代交代の新しい環境下で新しい人によって見出されるからだ。

ウルトラマイクロニッコールの生きる躍動感

希少なレンズを持てばそうであったこともわかる

テクニカルデータ

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8後期型の性能緒元をみてみよう。
後期型となると、e線用とh線用がラインナップされていた。 e線用とh線用も性能緒元データはそれぞれ以下のとおりである。 なお、本記事で外観の写真を示しているのはe線用のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8である。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8e

−焦点距離: 28.2mm
−最大絞り: F1.8
−最小絞り: F8
−レンズ構成: 7群9枚
−撮影基準倍率: 1/10X
−色収差補正波長: 546.1nm (e線)
−口径蝕: 0%
−歪曲収差: 0.002%
−解像力: 600本/mm (8mmφ), 650本/mm (7mmφ), 700本/mm (6mmφ)
−画像サイズ: 8mmφ
−原稿サイズ: 80mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 315mm
−重量: 330g

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8h

−焦点距離: 28.0mm
−最大絞り: F1.8
−最小絞り: F8
−レンズ構成: 7群9枚
−撮影基準倍率: 1/10X
−色収差補正波長: 435.8nm (g線), 404.7nm (h線)
−口径蝕: 0%
−歪曲収差: 0.003%
−解像力: 750本/mm (8mmφ), 800本/mm (7mmφ), 900本/mm (6mmφ)
−画像サイズ: 8mmφ
−原稿サイズ: 80mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 315mm
−重量: 330g
−当時の価格: 300,000円 (1974年6月)

h線用のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8hだと、 解像力が900本/mmとの弩級のパワーに驚愕する。

レンズ構成図ということで日本語版の資料を探してみた。 しかし、後期型の時代になると肝心のレンズ構成図は掲載されなくなり、 ブラックボックスのブロックとして図示されている。 レンズを光学システムにマウントするために必要な各部の寸法だけになっている。

手持ちの資料を探ってみたら、 1968年に西ドイツのフォトキナでリリースされた英語版のウルトラマイクロニッコール資料が出てきた。
この資料にはウルトラマイクロニッコール28mm F1.8後期型のレンズ構成図が掲載されていた。 ただし、h線用のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8hである。

参考ということで、 h線用のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8hのレンズ構成図を以下に示す。 レンズ構成図という点においては、e線用とh線用は同じと思える。 初期型のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8(e線用)のレンズ構成図とざっくり見比べてみた感想ではあるが。
画像は縮小されているので画面で見ると少々薄いが、 画像上でクリックすると大き目のサイズで表示されるので確認していただきたい。

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8hのレンズ各部寸法

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8hのレンズ構成図

ウルトラマイクロニッコールのある風景

静寂のなかにウルトラマイクロニッコール28mm F1.8で景色を構成した。
さきほどまでセルリアンパープルだったコーテングが、 大気の宇宙線か素粒子に反応してマンダリンオレンジレッドに輝き出した。
部屋にいて静かで、外気で元気になるのはしかたないことだった。
生まれてこのかた、一度も外の空気に、 生物が必要とする空気に触れることができなかった工業用(産業用)のレンズだ。 日本の風景がなつかしいのかもしれない。

小さいレンズだけど驚愕の解像力は700本/mm

現存するウルトラマイクロニッコールをいくつか鑑定してみたが、 カメラ用レンズとの決定的な違いがあった。 これはいくら古いレンズでも、外観がいたんでいるレンズにも見られた。
それは、レンズが異様にきれいな点だった。内部にホコリさえ入っていない。

焦点合わせのいわゆるピントリングがないため、外気を吸い込まないためか。
あるいは、鏡筒が特別の構造で密閉されているとか、 内部に乾燥空気や窒素ガスが充填されているのか。 一部の軍用双眼鏡になると、 特殊なガスが充填されていて鮮鋭度や可視性を高める効果を持つという。 旧ソヴィエト社会主義共和国連邦時代の国境警備専用の双眼鏡などで採用されていた。

静寂のなかに佇むウルトラマイクロニッコール28mm F1.8
(撮影年は2001年12月)

レンズの世界遺産

ウルトラマイクロニッコールには、 そういった希少類でレアな不活性窒素ガス以外の気体が充填されていたのかは不明である。
これも、ウルトラマイクロニッコールの謎としてここに記録しよう。
いずれ真相が解明されるものと期待している。

疑問は声に出さないと、だれもこたえてくれない。
謎や伝説、そして仮説だらけで、まったくの手付かずの世界が、 人を「幻のウルトラマイクロニッコール」といわせるのだ。

幻のままで滅びるのも美学であるが、 世界遺産的なレンズは後世まで残さないといけない。
もう二度と作らない、作れないレンズがウルトラマイクロニッコールなのだ。
設計仕様がまず決定され、夢を実現するためならばどんなに高価な素材でも集められ、 群を抜く製造技術、検査技術で出来上がった作品なのだ。
価格はそれから決めた。
価格をまず設定し、もうけを見越した残りで材料を揃えて作り上げる 現代の正しい考え方を無視した時代のレンズだ。

夢は幻。
でもここに生きている。

宇宙線を観測する気分なレンズ

レンズを持って意識の高くない何も考えていない森の散歩道を歩いてみた。
深みのあるセルリアンパープルのコーティング。 黒い鏡胴に包まれたレンズブロックから涼しげな森の音が聞こえてきそうだ。 盛大な蝉しぐれからヒグラシの時間に移ろうとしている。

ヒグラシの時間に移るころ懐中に収まる銀河系

意味不明なくらいでちょうどよい

むかしの話ではあるが、
「古いカメラを いま 動かせるのは 古い写真家じゃないだろう」
なあんて、若気の至りで言ってみた。
いまだよくわからないのは「古いカメラ」って何だろう。
そして「古い写真家じゃない」とはどういう意味なんだろう。
生物学的な年齢ではないことは確かだと思うのだが。

幸福感をかんじる能力があるのか。
あるいはその能力を捨ててはいないか。
問題はそこなんだろう。

幸福感をかんじる能力があれば明日も晴れる

やはりウルトラマイクロニッコールの基本はこれだろう

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8はアタッチメントサイズが40.5mm(P=0.5)のため、 「Nikon 1」シリーズ用の40.5mmフィルターが活用できる。
ニュートラルカラーNCフィルターは無色透明のレンズプロテクションフィルターだ。
同シリーズの40.5mmねじこみ式レンズフードは 「HN-N102」か「HN-N103」から選べる。
MADE IN JAPANが嬉しい。40.5mmレンズキャップ「LC-N40.5」も用意されている。
いずれも2017年現在現行品で購入できるので、フィールド用に気軽に持ち歩ける。

ニコン純正品の40.5mm HN-N103 フードを着けた姿

2017年のあとがき

このコンテンツのオリジナルは2001年12月当時に書いたものです。
その後2016年のサイト移動に伴う大幅な見直しで、 記述の修正や画像の追加を行いました。
しかしながら2017年に再度見直してみると、 時の話題もいまとなってはいかにも古くなってしまいました。

2015年に、東京は大井町にあったニコンのカメラやレンズの設計部門は、 新しくなった品川インターシティのニコン本社に移転したこと。
2016年になると、歴史ある大井製作所の101号館が閉鎖され取壊しが決まったこと。
そして2017年。 時間は無情に過ぎて冬日に白く輝いていたあの一号館もついに瓦礫となり、そしてその地が更地になってしまった現実。 そういったタイムリーな話題もろもろ。

時代の理解のためにそのままにしておく考えもありましたが、 ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8は、ウルトラマイクロニッコールの中でも、 さらには本格的産業用(工業用)ニッコールレンズの中でもポピュラーなレンズであり、 本サイトの記事参照数も多い。
ということで、2017年の視点でコンテンツを大幅に書き直し、画像もさらに追加しました。
この機会にレンズ構成図も掲載しています。
すべて日本光学工業株式会社の一次資料より引用させていただいています。

製造期間の長かったウルトラマイクロニッコール28mm F1.8は種類も多い。 ということで外観上から見える違いについて分類し新たに表にまとめてみました。

それにしても思うのでありますが、 この上の画像にあるとおり、 なにもない夏草を背景にレンズと対峙していると、 急激に光がドラマチックになり、 なにやら劇場のような背景に風が吹くのはいつもながら不思議な気分なのです。 これもこの種のレンズの持つパワーなのでしょうか。

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