The Nikon Museum Special Exhibition "Ultra-Micro-NIKKOR"

ニコンミュージアム

企画展
「世界最高解像度レンズの系譜 ウルトラマイクロニッコール」

展示期間: 2018年4月3日(火)〜6月30日(土)
開催場所: ニコンミュージアム(品川インターシティC棟、東京都港区)
展示内容: ウルトラマイクロニッコールなどのレンズ約40本、電子機器など約40点

ニコンミュージアムでは、2018年4月3日から6月30日まで、 企画展「世界最高解像度レンズの系譜 ウルトラマイクロ ニッコール」を開催します。

「ウルトラマイクロ ニッコール(Ultra-Micro-NIKKOR)」は、 1960年代にニコン(当時:日本光学工業)が開発したトランジスタやIC(集積回路)の製造用レンズです。 後に「史上最も精密な機械」といわれる半導体露光装置の投影レンズへと進化を遂げ、半導体産業の発展に貢献しています。

本展では、「ウルトラマイクロ ニッコール」や前身となった「プリンティング ニッコール」、 半導体露光装置用の投影レンズなど、約40本のレンズを展示しながら、その進歩と変遷を解説します。
また、1964(昭和39)年に当時、世界最高解像度を達成した「ウルトラマイクロ ニッコール29.5mm F1.2」 などの性能確認に使用された実験装置も展示予定です。
さらに、「電子機器と半導体の歴史」と題して、1960年代のトランジスタ、 1970年代以降のICやLSI、2000年代のシステムLSIという半導体の進歩にあわせて、 各時代のラジオ、電卓、ゲーム機、携帯電話、ワープロなどを展示。 なつかしい電子機器を見ながら、半導体の進歩を感じていただけます。

ニコンのウェブサイトより転載

ニコンミュージアムに乱入

まさかと思ったが、ほんとうに実現した。
よくもこれほどレアでコアな企画が通ったものだと感心。
ウルトラマイクロニッコールの現物と技術的背景が、本格的に広く一般に公開されたのは過去に1回だけだ。 あの伝説の 特別展「小穴純とレンズの世界」展
2009年の夏。東京大学の駒場博物館で開催された。

爾来十余年。
こんどは本家本元のニコンが、ウルトラマイクロニッコールを中心とした企画展を開催するという。 時は2018年の春四月。花のお江戸は桜吹雪から葉桜に一気に初夏の様相。
初日。春霞の陽光の下、東京は品川のニコンミュージアムを訪問した。

東京・品川 ニコン本社

みごとな葉桜も花は嵐雪江戸桜

ニコンミュージアムに乱入

今世紀最大の弩級の展示

なんとも、なんともすごい企画展である。
ともかく、展示をじっくり見てみよう。まさに超弩級の展示だ。

展示物を撮影した画像は、画像の上で左クリックすると、大きいサイズの画像を表示できる。 細部まで確認し精査したい方は拡大してご覧いただきたい。

テーマは「世界最高解像度レンズの系譜」

いきなりドカンと重量級レンズ(0.5トン)がお出迎え
半導体露光装置「NSR-S306C」用投影レンズ(2001年)

ウルトラマイクロニッコール 30mm F1.2
No. 301274(1964年)

夢のウルトラマイクロニッコール・ツリー

全世界初公開の歴史的ウルトラマイクロニッコール・ツリー

ウルトラマイクロニッコールの現物史料が、これほどたくさん、多種類勢ぞろいし、正装して並んだことはなかった。 大げさな表現ではなく、事実として、全世界初の一般公開である。 まさに「夢の」歴史的ウルトラマイクロニッコール・ツリーが目の前に展開されているのである。

ウルトラマイクロニッコールとはなにか

まずは説明のパネルを見ていただこう。

ウルトラマイクロニッコール

1961年(昭和36年)、印刷会社や電気関係メーカーからの要望で、 半導体製造に使用するフォトマスク製造用の高解像度レンズの開発に着手。 完成したレンズには日本のみならず、海外からも多くの注文が入ったためにシリーズ化され、 超解像度レンズとして「ウルトラマイクロニッコール」という名のもとで世界の市場を独占した。
使用する光源の波長を制限することで色収差うぃ補正し、高解像度を実現している。

ウルトラマイクロニッコール12mm F1.2試作(1972年)

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.5試作と28mm F1.7試作(1972年)

ウルトラマイクロニッコール22mm F1.5試作(1973年)

ウルトラマイクロニッコール58mm F1.8試作
詳細不明とあえて示すニコンの生真面目さは今となっては希少な矜持

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8(1967年)

説明欄が詳細不明となっているのは、 真剣勝負の究極の一次資料たる当時の設計原本・原図が見つからずの表記であって、 ニコンのカタログ資料とかどこかの怪しげなサイトの情報をかざして、 リキまないようにしていただきたい。

ウルトラマイクロニッコール50mm F1.8 h線用とe線用(1969年)

ウルトラマイクロニッコール165mm F4と12mm F1.2試作(1970年)

ウルトラマイクロニッコール12mm F1.2試作(1970年)

UMN 105mm F2.8(1962年)と125mm F2.8試作(1965年)

ウルトラマイクロニッコール55mm F2と155mm F4試作(1965年)

ウルトラマイクロニッコール155mm F4(1966年)

ウルトラマイクロニッコール155mm F4(1966年)

ウルトラマイクロニッコール105mm F2.8(1962年)

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8試作(1965年)

ウルトラマイクロニッコール55mm F2 h線用(1965年)

ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8(1967年)

小穴純教授製作のマイクロドット(超マイクロ写真)の拡大映像(1964年)

プリンティングニッコール

プリンティングニッコール105mm F2.8試作

プリンティングニッコール95mm F2.8試作と105mm F2.8

幻の超マイクロ写真撮影装置

東京大学理学部教授の小穴純博士が超マイクロ写真の製作に使用した撮影装置。 そんなものがまさか残っているとは思いもしなかった。 会場には撮影装置の現物が姿勢を正して毅然として立っていた。 もうその姿を見た瞬間、驚きを超えて声が出なかった。

世界最高解像度を実証した撮影装置
なんとあの現物がニコンに大切に保存されてたとは驚愕
国の重要文化財(級)

東大駒場博物館で開催された特別展「小穴純とレンズの世界」展では、この装置の写真だけが展示されていた。 しかも不鮮明な写真だったので、なにやら大がかりな装置で撮影したとの認識しかなかった。
しかしながら、歴史的産業文化遺産がニコンの手で保存されていたのだった。 どういう経緯で東京大学理学部から株式会社ニコンに移転されたかは未確認ではあるが、 ニコンが持っていて本当によかった。

素性を知らない一般人から見ると鉄屑にもならないような粗大ゴミである。 それでもその粗大ゴミと言われるような鉄の装置に、 歴史を創ったウルトラマイクロニッコール29.5mm F1.2 N0. 5043が規定の位置にマウントされ、 シャッターが装着されている姿を見ることになろうとは、まことに感慨深いものがある。

ウルトラマイクロニッコール29.5mm F1.2 N0. 5043とX-Y微動機構

非常に興味深い解説説明なので拡大して確認していただきたい

この装置一式の保存形態のスゴイところは、装置下の天板を載せる台座ブロックまでが残っていることである。 画像ではツマミのある分銅のような重しのような形をした茶色のブロック。 今回の展示では人が不意に触って倒れないようにブロックは台座から外されているが、 当時の撮影形態ではこのブロックが四隅に配置されその上に天板が載るようになっていた。
それにしてもよく保存していたものである。屋内に置かれていたことはラッキーだった。 もし屋外の雨ざらしだったら、はるか昔に朽ち果てて、こうして見ることはできなかっただろう。

大型ウルトラマイクロニッコール

レンズ本体に、ウルトラマイクロニッコールと刻印が入った最後の時代のレンズである。 このあとは、ステッパー装置に内蔵されレンズの存在さえも見ることができなくなる。

それにしてもである。 250mm F1.0、225mm F1.0、225mm F1.4、300mm F1.4などなど、 刻印ミスかと勘ちがいされそうな焦点距離にくらべて弩級のF値には驚く。
写真ですらその存在が知られていなかった超重量級レンズ群である。 本邦初公開のみならず、全世界初公開の現物展示となっている。

弩級の大型ウルトラマイクロニッコール軍団

ウルトラマイクロニッコール250mm F1.0(1967年)

ウルトラマイクロニッコール225mm F1.0(1967年)

ウルトラマイクロニッコール225mm F1.4(1969年)

ウルトラマイクロニッコール225mm F1.4と300mm F1.4(1969年)

ウルトラマイクロニッコール300mm F1.4(1969年)

ウルトラマイクロニッコール225mm F1.0試作(1969年)

ウルトラマイクロニッコール250mm F4(1971年)

露光装置用縮小投影レンズ

「ウルトラマイクロニッコール」はさらなる進歩を続け、高解像かつ広画角という相反する仕様を満足しながら、 世界の半導体製造をリードする露光装置「NSRシリーズ」の投影レンズへと発展を遂げた。
使用する光の波長は、水銀ランプを光源とするg線(436nm)から始まり、i線(365nm)、エキシマレーザーのKrF(246nm)、 ArF(193nm)とより短い波長へと移行し、現在では驚異的な解像度を達成している。

この時代からレンズは巨大なハコ(露光装置)の中にシステムを構成する一つの部品として組み込まれた。 よってレンズ単体での販売はされなくなり、レンズ単体のセールスマニュアル等のカタログや価格表は存在しない。 縮小投影レンズの頑強な鏡胴には「Nikon」の銘板があるのみで、レンズには名前がない。

ズラリと露光装置用縮小投影レンズ

露光装置用縮小投影レンズの説明

投影レンズ(NSR-1010G用)1980年

投影レンズ(NSR-1505G2A用)1984年

投影レンズ(NSR-0510G用)1986年

投影レンズ(NSR-1505G4D用)1987年

これらのレンズが活躍した時代。 1980年代の後半には、ニコン(約60%)とキヤノン(約30%)で、 全世界の90%近くのシェアを取っていたのである。

電子機器と半導体の歴史

このコーナーでは、1960年代のトランジスタ、1970年代以降のICやLSI、 2000年代のシステムLSIという半導体の進歩にあわせて、 各時代のラジオ、電卓、ゲーム機、携帯電話、ワープロなどの現物が展示されている。
各世代それぞれのなつかしの電子機器を見ることができる。 当時の花形製品の開発を支えたのは、半導体の進歩によるものであることが感じ取れる展示となっている。

電子機器と半導体の歴史 1960 - 1970年代

電子機器と半導体の歴史 1980年代

電子機器と半導体の歴史 1990年代

電子機器と半導体の歴史 1990年代

たまごっち(ニコンミュージアム所蔵品)1996年

ありがとう!ニコンミュージアム

謝辞

開催日程の初日に見学させていただきました。
ニコンミュージアムの岩田浩満様にはお忙しい中ご説明をいただき、ありがとうございました。 個々のレンズの詳しい仕様と歴史的レンズの現物を保管されてきた背景などを知ることができました。 さらには企画展実現までの現物の確保、収集、調査分析、技術面からみた精査と検証、 そして時代の考証などなど興味深いお話でした。

ぜひ会期中に会場へ足を運んで、実際に現物を見ることをおすすめします。 ともかく、その存在さえも幻だった初公開の現物史料の展示には驚くものが多々あります。
重ねてニコンミュージアムのみなさまには特別のご高配を賜りありがとうございました。

取材とレポート:秋山満夫

取材ご協力:株式会社ニコン ニコンミュージアム

特別リンク

マクロ☆スタイルさんがブログで素敵なレポートを公開していますので紹介します。
NM「ウルトラマイクロニッコール展」に行ってきた

また、マクロ☆スタイルさんの個人flickrに画像がたくさんアップされました。
flickr特設ページをご覧ください。非常に資料価値が高いです。
Siroyagi's flickr, The Nikon Museum 2018/04/11

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