展示ケースが4基ありますが右から見ていきましょう ● 魚眼レンズと特殊用途レンズ まず最初に目にするこのケースには、魚眼レンズと特殊用途レンズが収まっています。 チラ見すると、国宝級のものが涼しいい顔をして鎮座しています。 それでもなくても、取材者としては「特殊用途レンズ」の枠組みに動揺してるわけですが、 平静なふりをして取材を続行しました。
魚眼レンズと特殊用途レンズ
Ai Fisheye-Nikkor 8mm F2.8S, No. 1002702, 1982
Fisheye-Nikkor Auto 7.5mm F2.8, 1968
Fisheye-Nikkor 6.2mm F5.6, 1967
Fisheye-Nikkor Auto 6.3mm F2.8, 1967
Nikkor-P 105mm F4, No. 67803, 1969 このあたりは予想もしなかったものが投下されていました。 「マニヤ検出器」という位置づけです。 左にベローズニッコール。右にマクロニッコール赤帯。
Nikkor-P 105mm F4, No. 67803, 1969 なんといっても、 レンズの前玉側(レンズ先端)にニコンFバヨネットマウントが取り付けられているのが特徴。 リバースリングのようなアタッチメント・アクセサリーを使わずに、 そのまま、ベローズにリバースして取り付け可能というコンセプト。 レンズ前玉側が光りすぎという感じもしますが試作レベルということで。 Macro-Nikkor 65mm F5.6, No. 258003, 1969 マイクロニッコール(Micro-Nikkor)ではなく、マクロニッコール(Macro-Nikkor)。 このレンズも前玉側(レンズ先端)にニコンFバヨネットマウントが取り付けられているのが特徴。 外観デザインとか金属の質感、刻印の入れ方が、 従来の市販されたFマウントニッコールレンズのどれにも属さないデザインとなっている。 赤い帯が入っているので、いくつかの色で焦点距離を区別し、 マクロニッコール(Macro-Nikkor)を製品化する意図があったのかもしれない。
Nikkor-O Auto 50mm F1.2 - 1.4, 1963 なんとも長い年月を経て、やっと現物の生きている実物を見ることができました。 「ニコン 75年史」の資料編。青い本の 73ページです。 製品史で昭和39年(1964年)の項目に、「オッシロ 50mm F1.2」と記載されており、 いったい何者かと長く調査を続けていたところだったのです。 ミュージアムで初めてこのレンズを見た時に、たしか、 共立出版から刊行されたハードカバーの箱入り本 「ニコンFマニュアル」、 「ニコンF/ニコマートマニュアル」に記述があると記憶違いしていましたが、 記述・掲載はありませんでした。 実際は「ニコン 75年史」でした。たった 1行、10文字足らずの記述ではありますが、 本レンズのことが記載されています。 50mm F1.4 ではなく、55mm F1.2 でもない、50mm F1.2 なのであります。 オシロスコープの画面撮影用というきわめて限られた用途のレンズ。 魅力的です。
Nikkor-O Auto 50mm F1.2 - 1.4, 1963 よく見ると、A.R. の文字が刻印されているのがわかります。 AR の文字が刻印されて製品化され市場に出た例は、工業用ニッコールレンズではありますが、 FR Nikkor 75mm F1.0 しかないと思います。 「AR」の意味も論じられていますので、 FR Nikkor 75mm F1.0 を参照してみてください。
PC-Nikkor 35mm F2.8, 1978 and PC-Nikkor 28mm F4, 1969 ● 広角レンズ もうこの時点で、弩級の展示品の数々に圧倒されて、 呼吸の仕方を忘れてしまった取材者でありましたが、 気を取り直して「広角レンズ」の展示ケースを見てみることにしましょう。 それにしても、なにがスゴイかすこしばかり分かっていると、 驚きの方が先行してしまって、事務的な取材が困難になるのは困ったものです。
広角レンズ
Nikkor-D 15mm F4, 1970 なんともすごいレンズです。 展示ケースの前でしばらく張り付いてしまいました。 パンケーキ型ニッコールレンズの最高峰と言うべきでしょうか。 ミラーアップして使用する方式ですが、焦点距離 15mmの超広角レンズにしてはなんともコンパクト。
Nikkor-D 15mm F4, 1970 極めて異彩な趣のファインダーがこれまたスゴイ。 アクセサリシューにちょこんと取り付けるタイプではなく、 ファインダー部ごとまるごと交換して取り付けるタイプです。 ベースに直付けされたファインダー光学系が、 高さを保って直立し、世界を注視する姿はアバンギャルドな雰囲気。 もう言うことなしの逸品・お道具となっています。 時代は 1970年ですか。そうですか。わかります。そういう時代でした。
Nikkor-N Auto 35mm F2, No. 182103, 1962
Nikkor-P Auto 35mm F2.8, 1971
Nikkor-H Auto 35mm F2.8, 1972
Nikkor-O Auto 24mm F3.5, No. 260013, 1964
Nikkor-N Auto 25mm F2.8, 1971
Nikkor-H Auto 2.8cm F3.5, 1959
Nikkor-S Auto 2.8cm F2.8, No. 382002, 1971
Nikkor-N Auto 35mm F1.4, 1968
Nikkor-D Auto 20mm F4, 1966
Nikkor-D Auto 20mm F4, 1971
Nikkor-UD Auto 20mm F4, No. 204011, 1967
Nikkor-TD Auto 20mm F2.8, No. 615001, 1972
Ai Nikkor 20mm F2S, 1979
Nikkor-HD Auto 13mm F8, T-10310, 1973
Nikkor-HD C 13mm F5.6 with Huge Lens Hood T-10377, 1974 これはまったく冗談のような業務用本格特注品。 Nikkor-HD Auto 13mm F5.6 というきわめてハイエンドな超広角レンズ。 その大型のサイズ、さらには当時でもきわめて高額なレンズであって、 プロフェッショナルな用途とユーザーしかいなかったと思われます。 そのハイエンドな一部のユーザーのリクエストで、 この特大のフライパンのような、 見方によってはジンギスカン鍋のようなフードがごく少数製造されたらしいのです。 さらに驚くべきことに、このフライパンフードを探しているマニヤがいらっしゃるとか。 何に驚くかというと、その存在を知っていることに驚いてしまいます。 もちろんこの巨大なフードだけではただの物好きになってしまいますので、 とうぜんながら、Nikkor-HD Auto 13mm 5.6 はすでにお持ちなわけです。
Nikkor 15mm F3.5 with Huge Lens Hood, 1975 Nikkor 15mm F3.5 用にもフライパンフードが実存していたのです。 巨大なレンズフードですが、Nikkor-HD C 13mm F5.6 用に比べると、 2つ並んでしまうと、やや小ぶりなフライパンというかんじになります。
Nikkor-BD Auto 18mm F3.5, No. 327001, 1973
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