![]() ニコンミュージアム
企画展
展示期間: 2018年10月2日(火)〜12月27日(木)
ニコンのウェブサイトより収録転載
これまた非常にコアな企画展です。まずは行って自分の眼で見るしかない。 2018年10月2日。台風24号が開けた秋空。 ニコン研究会取材クルーの約 1名は企画展の初日に訪問しました。
![]() スコーンと抜けたまだ夏が残る秋空
東京は品川の記憶
道祖神を左に見てニコンミュージアムへ行く
ニコンミュージアムに入ります ● 有史いらい初めての弩級の展示 従来からもニコン開発試作機の展示はいくつかの機会でわずかながらありました。 目録にきちんと残っており、よく知られているものでは、半蔵門の日本カメラ博物館で開催された「ニコン展」。 会期は2003年10月28日〜2004年3月21日でした。 さらには、本家本元のニコンミュージアムで開催された企画展「カメラ試作機」が有名です。 こちらの会期は2017年4月4日〜2017年7月1日でした。 しかしながら、今回のニコンミュージアムにおける企画展は、 カメラではなくカメラ用ニッコールレンズの試作レンズを対象とした、 世界でも類を見ない極めて珍しい展示となりました。 なんといっても世界で初めての企画であり、さらに内容の充実さと規模には驚きます。 ● 取材御礼 開催日程の初日に見学させていただきました。 ニコンミュージアムの岩田浩満様、宇田川和也様にはお忙しい中ご説明をいただき、ありがとうございました。 さらには、ニッコール千夜一夜物語の著者でもあるレンズ設計者の佐藤治夫様からも、 かなり高度なマニアックなご説明を賜りありがとうございました。 個々のレンズの詳しい仕様と歴史的レンズの現物を保管されてきた背景などを知ることができました。 さらには企画展実現までの現物の確保、収集、調査分析、技術面からみた精査と検証、 そして時代背景の考察などなど興味深いお話でした。 ぜひ会期中に会場へ足を運んで、実際に現物を見ることをおすすめします。 ともかく、その存在さえも幻だった初公開の現物史料の展示には驚くものが多々あります。 重ねてニコンミュージアムのみなさまには特別のご高配を賜りありがとうございました。
取材とレポート:秋山満夫
取材ご協力:株式会社ニコン ニコンミュージアム ● 企画展のすべて
さて会場に入りましょう。
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ニコン Z 7 による試作レンズの描写 会場入口を入るとすぐに、大型の写真パネルが並んでいます。 すべて、10種類の試作レンズの現物を使い、ニコン Z 7 で撮影された作品です。 撮影は、写真家の瀬尾直道氏。 作品の撮影はとうぜんながら不可とのことでしたので、 使用された試作レンズの画像から見ていただきたいと思います。
![]() Nikkor-S Auto 105mm F2.8, 1967 いきなりこれですから困ったものです。 最初にこういった危険物を置くのは心臓にわるいのでやめていただきたいものです。 ソフトフォーカスニッコール S 105mm F2.8 の現物です。 その存在が古くから公知となっている、激レア中の超激激レアレンズです。 開発物語はニコンのウェブサイト「ニッコール千夜一夜物語」の 「第五十一夜 Nikon SoftFocus Filter Soft1、Soft2」に写真画像入りで紹介されていますので、 その存在をご存知の方がいると思ます。 佐藤治夫氏の詳細解説を読んで予備知識と免疫をつけておけば、 いきなり現物を見ても安心です。レンズの設計は綱島輝義氏。
![]() Nikkor-S Auto 105mm F2.8, 1967
![]() Nikkor-S Auto 105mm F2.8 DT-1284, 1967
![]() Nikkor-S Auto 105mm F2.8 No. 281053, 1967
![]() Ai Nikkor 28mm F1.4S, 1985
![]() GN Auto Nikkor 35mm F2, 1967 この試作レンズの現物には驚きました。 焦点距離 45mmのレンズの方は市場に出て、ニコンでは元祖パンケーキレンズとして、 コンパクトで特徴的な外観から、今でも愛用者が多いレンズです。 焦点距離 35mmだとさらに写真報道などで有利かなとは思いますが、時代は1967年ですか。 最大光量でピカッと光るストロボから、 被写体との距離によって光量が自動的に調整されるオートストロボの時代に突入する頃ですから、 製品化は見送られたのかもしれません。 それにしても、存在感はあります。 なお、レンズリアキャップの色が黒ではなく青色となっていますので、 関係各位には注意が必要です。
![]() GN Auto Nikkor 35mm F2 No. 281003, 1967
![]() Nikkor 58mm F1.2, 1974
![]() Reflex-Nikkor 400mm F8, 1962 レフレックス(反射鏡を用いた光学系)で 400mmですから驚きます。 しかも時代は1962年。昭和の東京オリンピック(1964年)の前の話ですから、 その時代背景スケールから考えると、かなり斬新なレンズと思います。
![]() Micro-Nikkor Auto 55mm F4, 1967 レンズリアキャップが工場出土品お約束の、みどり色です。 どうもキャップの方に目がいくのは困ったものですが、一般市場には出て来ないみどり色のリアキャップ。 この試作レンズぽい仕草と佇まい・風景が素敵です。
![]() Ai-OP Fisheye-Nikkor 10mm F2.8S No. 100221, 1981 これは激レア中の激レアレンズです。 正射影(Orthographic Projection)という射影方式を採用した魚眼レンズです。 ミラーアップして使用する OP Fisheye-NIKKOR 10mm F5.6 は、 1968年に一般市場向けに発売されたカタログモデルのレンズです。 それでも現存する数は非常に少なくコレクターズアイテムになっています。 OP 10mm F5.6 の方の開発物語はニコンのウェブサイト「ニッコール千夜一夜物語」の 「第六夜 OP Fisheye-NIKKOR 10mm F5.6」に写真画像入りで紹介されています。 大下孝一氏の詳しい解説が勉強になります。 時代のレンズの歴史をふまえ、1981年に F5.6から F2.8と大口径化し、 さらにミラーアップ無しの Ai方式鏡胴を持った試作レンズが開発されていたとは驚きです。 そのなんともモダンで機能美満載の存在感が素晴らしい。
![]() Ai-OP Fisheye-Nikkor 10mm F2.8S No. 100221, 1981
![]() Reflex-Nikkor 1000mm F11, 1984 IF(インターナルフォーカシング)方式を採用した反射式超望遠レンズ。 重力のゆがみを見る装置か宇宙空間を飛翔する天体観測機器のような雰囲気。 1984年。日本経済は最高潮の頃。時代が求めた記号のような存在感をかんじました。
![]() Auto Nikkor Telephoto-Zoom 85 - 250mm F4, 1958 金属鏡胴のテカリ具合が、黎明期の半導体露光装置用レンズのように凛々しい。 いかにも重たく使いにくそうな、素人を寄せ付けない威圧感がすごい。 写真家の瀬尾直道氏はこの Auto Nikkor Telephoto-Zoom 85 - 250mm F4 レンズをニコン Z 7 にマウントして、 動体(オートレース)の撮影を敢行しました。 作品は写真パネルでレンズを従えて展示されていましたが、よくもこのレンズで撮影したものだと感心してしまいました。 パネルの説明には1958年と明記されています。 あのニコンFが満を持して発売になったのが1959年。 すでにこんなスーパーレンズが開発され試作まで完成したことに再度驚くものです。
![]() Zoom-Nikkor Auto 35 - 400mm F4.5, 1973 この光学兵器のような、質実剛健なたくましいレンズの存在感はすごい。 確実にオーラが出ています。 すでに鏡玉の意識を持っていますので、結界の役割を果たす注連縄(しめなわ)を張らないといけません。
![]() さてこれからこの展示ケースの中を見ていきましょう
→ 魚眼/特殊用途レンズ、広角レンズ編 その先はこちら → 標準レンズ、望遠レンズ編
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2018, 2023 |