Ultra Micro Nikkor Operation

ニコンFマウント化した長焦点ウルトラマイクロニッコール

ウルトラマイクロニッコールは使えるか

フィルムカメラの時代の話なので、1980年代のことだったと記憶している。
ウルトラマイクロニッコールがあの当時話題にならなかった理由の1つは 「あんなもの使えない」というのが共通認識だったと思う。 まことしやかに以下のようないくつかの解説がついたものだ。

  • カメラにつけられない
  • ピントが出ない
  • 特殊な光源用なので普通のフィルムでは使えない

もちろんこれらの風説・噂話は、今となってはすべて誤りである。
カメラにつけられないというのは、 ウルトラマイクロニッコールがふつうの一眼レフカメラ、 たとえばニコンF系カメラにつけられないという意味だ。
レンズがFマウントでないために出た話だろう。これは初歩的な思い込みである。
いくつかの短焦点のウルトラマイクロニッコール、例えばUMN 28mm F1.8とかUMN 55mm F2、 これらはライカL39スクリューマウントだ。
ライカL39スクリューマウントのレンズは、 マルチフォト装置のオプションではあるが、 ニコン純正のL-F接続リングでニコンF系ボデイにマウント可能だ。

ニコン純正のL-F接続リング
MPJ93040 MA マクロセツゾクリング

ウルトラマイクロニッコールはピントが出ない。これが一番の難題だ。
じつは、最初のUMN 28mm F1.8を購入するときに、 ピントが出なくても1本くらい標本として持っていてもいいかな、との気持ちがあった。
UMN 28mm F1.8レンズをL-F接続リングでニコンカメラにマウントしても、このままではピントが出ない。 ベローズを介して長く伸ばしてもだめ。ベローズを外して直につけてもピントがでない。 ファインダーを覗くと、ぼんやり光が見えるだけだ。

単焦点レンズはリバースするのがお約束

下の写真を見ていただこう。 ニコンF3にUMN 28mm F1.8がセットされている。しかもレンズが逆向きについている。 ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8をニコン一眼レフで使うには、 レンズをリバースしてボデイにつける。 これはフィルム式一眼レフカメラの時代の鉄則だった。

レンズをリバースすると、 ピントは鮮鋭を通り越してウルトラピントが眼前に迫ってくる。 ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8はリバース接続でピントが出る。
これが事実。 いままで、ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8を入手しても、 ピントが出ないがために手放す人がいたと思う。残念なことだ。

ウルトラマイクロニッコールをどうやって使うか
(撮影年は2001年11月)

40.5mmリバースリング

では、どうやってリバースするのか。
ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8のレンズ前側、つまり、フィルター径は40.5mmだ。 レンズ側に40.5mmのオスネジが切ってあり、カメラ側がFマウントのアダプターがあれば解決する。 こんなものニコンの純正製品であるのか。
私の探索行はさらに奥地へ向かっていった。

カメラのアクセサリーメーカーの製品をいろいろと調べてはみたが、当時これはと思えるものはなかった。 各方面に当たってみた結果、結末は身近にあった。
ニコンの引き伸し用レンズのオプションとして、40.5mm径のリバースリングが販売されていたのだった。 レンズ側に40.5mmのオスネジが切ってあり、 カメラ側がライカL39スクリューマウントのオスネジになっているアダプターリングだ。

40.5mmリバースリング
青い元箱入りの後期型、右下は前期型

40.5mmリバースリングをUMN 28mm F1.8の頭にねじ込む。 この状態でL-F接続リングにねじ込むと、非常にしっかりとカメアにリバース固定できる。
40.5mmリバースリングはニコンカメラやニッコールレンズのカタログにはいっさい記載がなかった。 いわば幻の、ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8専用とも言えるリバースリングだったのだ。
こういうきわものに対して、Nikonのロゴを刻印し、 しかも丁寧に青箱に入れて製品化するニコンの姿勢にはまいったものだ。
なお40.5mmリバースリングは2種類あり、 前期型の刻印は「NIKKOR JAPAN 50/2.8 63/3.5」、 後期型(青箱)の刻印は「Nikon JAPAN 40.5mm」となっている。

小物はむずかしい

レンズは流通しても、こういった小物が鬼門だ。
むかしから、マウントアダプターやアダプターリングの類は、 手に入るときに入手しておけといわれている。すぐに使わなくてもだ。
使いたいと思い立って買いに行くと、あるいはネットで注文しようとすると、 もう製造中止になっているのがこの世界の非情な物語だ。 私はこれで、ずいぶんなかされた。

はずかしい話だが、私はこの、 ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8専用リバースリングを4個も確保してしまった。 レンズが1本しかない時にだ。なにごとも、備えがたいせつとはいえ。 と、思っていたら、いつのまにか、レンズの方から来てしまった。
おかげで、4本のウルトラマイクロニッコールすべてにニコン純正のリバースリングを付けてあげられるが、 これも縁なのかもしれない。

ニコンカメラのカタログにはいっさい記載がない、この40.5mmニコン純正リバースリング。 都内の大型量販カメラ店でもショーウインドーに並ぶことはなかった。
たったこれだけ話である。それだけだ。
それだけというのが、本当はむずかしいものだ。

短焦点レンズの順方向直付け

さて、 ウルトラマイクロニッコールの短焦点レンズはバックフォーカスが短いため、 リバースしないとピントが出ない(合焦しない)と説明したが、 ミラーレスカメラの登場によりこのあたりの事情は大きく変わった。
レンズをリバースしなくても、レンズを順方向に装着して、ピントが出ることが確認できるようになった。 ただし、順方向ではイメージサークルが小さいので、 レンズを順方向に装着した場合は、撮像素子のフォーマットが小さいカメラの方が有利である。
以下の実例画像は、ニコン研究会の例会(2009年9月)で、 ミラーレスカメラにUMN 28mm F1.8を装着して撮影している様子である。

UMN 28mm F1.8を順方向に装着し撮影している様子
場所は東大駒場キャンパス内のレストラン「ルヴェソンヴェール駒場」
(撮影年は2009年9月)

私のコレクションの方もその後、 L39ライカスクリューマウントではない長焦点のウルトラマイクロニッコールを入手するに至った。 UMN 125mm F2.8、UMN 135mm F4、UMN 155mm F4、そしてUMN 165mm F4である。
こういった長焦点のウルトラマイクロニッコールについても、 専用のニコンFマウントアダプターを開発し特注することでニコン一眼レフカメラに装着して実写に挑戦した。

長焦点レンズのFマウント化計画

短焦点のウルトラマイクロニッコール28mm F1.8や55mm F2は、 L39ライカスクリューマウントのため、 市販のニコン純正のL-F接続リングでカメラに装着(マウント)することができた。
しかしながら、ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8のように、 62mm P=1.0のネジマウントだと市販のマウントアダプターが存在しない。
そこで、マウントアダプターを自分で作ることにした。 作るといっても私は機械工作の専門知識や技術がない。もちろん工作機械も持っていない。
そこで、三次元機械設計のプロである専門家に相談し、 ごく少数のマウントアダプターを特注品として限定生産することにした。
以下は、専用マウントアダプター開発の経緯である。

62mm専用Fマウントアダプター

2005年の秋に、ウルトラマイクロニッコールの長焦点レンズである、125mm F2.8および135mm F4を、 ニコンFマウントの一眼レフカメラに装着するための専用マウントアプターを開発した。
125mm F2.8および135mm F4は、62mm P=1.0mmのネジマウントである。
このマウントアダプターは、62mm P=1.0mmのネジマウントをニコンFマウントに変換するアダプターだ。 62mm P=1.0mmネジマウント・ハウジングは、特殊工業用アルミニウム合金の削り出しに、 黒色陽極酸化皮膜処理による半つや消し加工による特注の限定品である。

62mmマウントアダプターでUMN 125mm/UMN 135mmを装着

この62mmマウントアダプターで、 ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8や ウルトラマイクロニッコール135mm F4がデジタル一眼レフで使えるようになったのは素直に嬉しかった。 そこで調子に乗るな、と人は言うだろうが、私は調子に乗った。
ブレずに、調子に乗る。趣味の王道。
ものごとはポジティブにとらえないといけない。 それでなくても、ネガティブなことばかりのこの世である。 お言葉に甘えて、調子込んで、さらに大型のウルトラマイクロニッコールのマウント化を図った。 迷わずいっきに突き進んだのである。
そのあたりを次のステップで見ていただきたい。

72mm専用Fマウントアダプター

2006年に、ウルトラマイクロニッコールの長焦点レンズ155mm F4を、 ニコンFマウントの一眼レフカメラに装着するための専用マウントアプターを開発した。
ウルトラマイクロニッコール155mm F4は、72mm P=1.0mmのネジマウントである。 このマウントアダプターは、72mm P=1.0mmのネジマウントをニコンFマウントに変換する。 72mm P=1.0mmネジマウント・ハウジングは、 航空エアロパーツ用最高級ジュラルミン(超超ジュラルミン、ESD)をブロックから削り出し。 軽くかつ強度を出すために、高度なスパイラル旋盤加工を施している。 黒色陽極酸化皮膜処理による半つや消し加工による特注の限定品となった。

もちろんこの時も、要求仕様、 つまりねじ径何ミリでピッチが何ミリのマウントのレンズをニコンFマウントにしたい、 とだけをプロの機械設計技術者にお願いし、 あとはまかせた。そもそも素材(結果的には超超ジュラルミンをセレクト)はなにがいいとか、 細かい加工のこと(できたものは強度確保のスパイラル旋盤加工)などわからないから。
まあ素人が、ちょいとネットでみた程度の知ったかぶりの細かいこととか、 カタイこと言わない方が日本のホンモノの技術者相手だとうまくいくのは経験則で私は理解しているのである。

専用の特注ニコンFマウントアダプター(72mm⌀、P=1)
スパイラル加工された内部構造の様子 2006年

ちなみにこのマウントアダプターは以下の産業用ニッコールレンズに適合する。 マウントのねじ径が72mm⌀、P=1であればピタリだ。 ただし、マイクロニッコール150mm F5.6だけはレンズのお尻が長いので、 マウント(ハカマ)内に収まらないようである。

  • 旧ELニッコール 180mm F5.6
  • ELニッコール 180mm F5.6A
  • 旧ELニッコール 210mm F5.6
  • ELニッコール 210mm F5.6A
  • APOニッコール 305mm F9
  • APOニッコール 360mm F9
  • W.A.APOニッコール 300mm F9
  • マイクロニッコール150mm F5.6
  • ウルトラマイクロニッコール155mm F4

72mmマウントアダプターでウルトラマイクロニッコール155mm F4を装着

82mm専用Fマウントアダプター

同じく2006年に、ウルトラマイクロニッコールの長焦点レンズ165mm F4を、 ニコンFマウントの一眼レフカメラに装着するための専用マウントアプターを開発した。
ウルトラマイクロニッコール165mm F4は、82mm P=1.0mmのネジマウントである。 このマウントアダプターは、82mm P=1.0mmのネジマウントをニコンFマウントに変換する。 82mm P=1.0mmネジマウント・ハウジングは、 航空エアロパーツ用最高級ジュラルミン(超超ジュラルミン、ESD)をブロックから削り出し。 軽くかつ強度を出すために、高度なスパイラル旋盤加工を施している。 黒色陽極酸化皮膜処理による半つや消し加工による特注の限定品となった。

専用の特注ニコンFマウントアダプター(82mm⌀、P=1)
スパイラル加工された内部構造の様子 2006年

ちなみにこのマウントアダプターは以下の産業用ニッコールレンズに適合する。 マウントのねじ径が82mm⌀、P=1であればピタリだ。
APO ELニッコール 210mm F5.6にも実際にマウントして数々の実写を行ったが、 持っていたよかったレンズマウントアダプターとなっている。

  • ELニッコール 240mm F5.6
  • APO ELニッコール 210mm F5.6
  • ウルトラマイクロニッコール165mm F4

重たいUMN 165mm F4を堅牢確実に装着できる

ウルトラマイクロニッコール165mm F4の働く姿

2018年のあとがき

本コンテンツは2018年2月に全面改版してアップしたものです。
オリジナルのコンテンツは2001年11月に公開しました。
当時、私が所有していたウルトラマイクロニッコールは、UMN 28mm F1.8とUMN 55mm F2のみでした。 両方ともにレンズのマウントはライカL39スクリューマウントです。 そのため、L39マウントに絞った言及となっていました。

時代が進み、デジタルカメラは劇的に性能が向上し、さらに新しい考え方のカメラが登場しました。 ミラーレスカメラの登場、さらに大小各種サイズの画像センサーを持つカメラが生まれました。
当時はレンズ(短焦点の28mm F1.8等)をリバースしないとピントが出ないと述べていましたが、 小さい画像センサーを有するミラーレスカメラを使うことで、 レンズをリバースしなくてもピントが出ることが実証できました。

私のコレクションの方もその後、 L39マウントではない長焦点のウルトラマイクロニッコールを入手するに至りました。 UMN 125mm F2.8、UMN 135mm F4、UMN 155mm F4、そしてUMN 165mm F4です。
こういった長焦点のウルトラマイクロニッコールについても、 専用のニコンFマウントアダプターを開発し特注することで、 ニコン一眼レフカメラに装着して実写に挑戦してきました。

2016年の見直し大改訂では、画像を大幅に加えて、 専用のニコンFマウントアダプターを特注した話とニコン一眼レフによる実写の作例を掲載しました。 しかしながら、まだ話すべきことが盛り込まれていませんでしたので、 2018年2月の改版を機に全面的に書き直しを行いました。

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