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フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
Nikkor 25cm F4 Special Lens
for USAF Rocket Sled Tests
Photosonic 1B High Speed
Martin Fox's Collection
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ロケットニッコール25cm F4プリセット
米国の商業写真家のマーチン・フォックス氏の、ヴィンテージ・ニコンコレクション続編を紹介したい。
マーチンさんのコレクションに、Sマウントではないニッコール25cm F4(プリセット絞り)がある。
このレンズが現役だった頃(1950年代末から1960年代初頭)、高速度カメラに搭載されたレンズだという。
しかも、当時の最先端技術である、ロケットスレッド・テストで活躍したらしい。
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1950年代末のロケット実験を支えた頑強レンズ
ロケットスレッド・テストは、鉄道の線路のようなスレッドを平坦地に敷き、
台車の上にロケットエンジンを載せて燃焼実験をするシステムだ。
スレッド上をものすごいスピードでロケットが突っ走るわけだ。
米国のエドワーズ空軍基地やホロマン空軍基地に敷設された軌道は
ロケットスレッドの軌道として有名である。
原子力発電所施設のコンクリート壁の破壊実験などにも、このシステムが使われている。
ハデな実例としては、スレッドの先に厚さ数メートルのコンクリート壁を置き、
台車の上にファントム戦闘機を載せ、スレッドを一気に加速して走り抜けるものがある。
コンクリート壁に戦闘機が吸い込まれていく様を高速度カメラで撮影するのだが、
実験とはいえかなり過激な映像となる。
原子力発電所施設に、仮にジェット戦闘機が墜落しても、大惨事にならないことを検証することが目的だが、
机上計算やシミュレーションではなく、実証実験するところがさすがと感心してしまう。
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
有人飛行による音速の壁は、
1947年にチャック・イェーガー大尉が操縦するベルX-1によって破ることができた。
1950年代末は、
音速飛行から有人宇宙ロケット打上げによる人間への加速度の影響を調べる実証実験で、
ロケットスレッド・テストによる高速度撮影が記録を残している。
加速度でゆがむヒトの顔がこれまた痛ましい。
このニッコール25cm F4レンズも1950年代末の時代背景で、
アメリカ空軍でのロケットスレッド・テストに参加したのだった。
想像を絶する100Gの加速度や振動に耐えて、記録撮影に貢献したのだろう。
フォトソニック社(Photo-Sonics, Inc.)の
1,000コマ/秒の高速度撮影が可能な高速度カメラにマウントされたものだという。
この高速度カメラは、1958年に開発されたものだから、
1958年から1959年に登場したプリセット絞りタイプのニッコール25cm F4レンズとフィットしたのだろう。
ニッコール25cm F4レンズに装着されているフォトソニックマウントは、
米国フォトソニック社で製造したと、
同社の品質保証部門のマネージャーであるグレッグ・ホルダー氏が語っている。
ネジマウントとかバヨネットマウントとか、そんなヤワなものではなく、
過酷な加速度と振動に耐えられるようにレンズは直接カメラにボルトで頑強に固定したのである。
高速度カメラマニヤの方や、戦闘機搭載用航空カメラコレクター、
ロケット・トラッキングシステム愛好家の方ならば、
米国フォトソニック社と聞いただけでその特殊用途カメラや撮影・監視システムの全貌をイメージできるだろうが、
ご存知ない方はぜひ、米国フォトソニック社のウェブサイト
photosonics.com
をご覧になっていただきたい。
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
From Martin Fox
Hello Michio,
Here are the photos,
description and story on the Nikon 25cm/F4 Nikon RF Telephoto lens
in the special Photo Sonics mount.
As we discussed, attached to this message are 7 photos of
the special 25cm/f=1:4 Nikkor no.273055.
These lenses were originally made for the Nikon Rangefinder camera
to be used with the Reflex Housing and were also used on the later Nikon F
using the N-F Adapter.
Evidently according to Mr. Greg Holder at Photo Sonics in California,
this lens was used on their model 1B 16mm cine camera running at 1000FPS.
Also according to Mr. Holder This camera/lens outfit was the high speed setup
used to film the results of rocket sled tests for the USAF.
I have attached the correspondence from Mr. Holder at Photo Sonics discussing this lens.
This lens was purchased at an auction where it was overlooked by many bidders.
It is interesting to note that the lens has no tripod mount
and no evidence of threaded holes for this mount.
According to Mr. Holder the special mount was made at Photo Sonics.
However I am not sure of this because the black paint on this mount matches
the paint on the lens exactly.
A very difficult procedure for a company outside of Nippon Kogaku to perform.
The two piece shade is made from heavy gauge alloy,
painted black and is engraved simply "Nikon" on one side and "Japan" on the other.
It is a tribute to the optical quality and robust construction of
this Nippon Kogaku optic that the Photo Sonics firm chose this lens
to be used for such exacting photographic work.
I hope other Nikon enthusiasts will enjoy seeing these photos!
Martin Fox
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Martin,
After reviewing the attached pictures I believe this lens was for
a 16mm format (our camera 1B, 1000FPS).
This camera was and still is being used in the auto industry
(car crashes, air bag deployment) or sled work.
This camera can withstand 100 G's.
Photo-Sonics designed and manufactured the adapter.
It also could be that a customer had certain requirements which is why that was made.
Most lenses for that type of camera are fixed focus.
With high G's that lens may vibrate out of focus???
Thank-you for sharing this fine piece of equipment.
Hope you get lots of use out of it.
Hope this will answer your questions.
Visit our web site. photosonics.com
Regards
Greg Holder
Quality Assurance MGR
Photo-Sonics, Inc.
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Hi Martin,
Yes "sled work" does mean rocket sleds.
And if there was a program in the 50-60"s with rocket's launching
and they required photos most likely Photo-Sonics supplied the cameras.
As for who headed up the program, you got me.
I am old but not that old.
I was in diapers in "56"
Regards
Greg
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フォトソニック1B型16ミリ高速度シネカメラ
フォトソニック1B型とは、どんなカメラなんだろう。
マーチンさんに聞いてみたところ、製造会社の米国カルフォルニア州にある、
フォトソニック社に問い合わせてくれた。
フォトソニック社のグレッグ・ホルダー氏は、調査研究のために、
フォトソニック1B型高速度シネカメラの写真画像を用意してくれた。
ウエブへの掲載も許可していただいた。
なお、この写真では、フィルムマガジンを外した状態の姿となっている。
また、マーチンさんとフォトソニック社がやり取りしたメールも掲載してよいと言う。
マーチンさんらの一連のメールを掲載できたことで、このコンテンツは立体的になったと思う。
Hi Michio!
I am happy to tell you I now have the permission
from Photo-Sonics company in California USA and also
permission from Mr. Greg Holder to use his e-mails as you requested.
Also I have attached some photo's of the Photo-Sonics
1-B High Speed cine camera which the 25cm/4 Nikkor lens
used on for USAF rocket sled testing in the fifties.
So we now have all permission and clearance for this project
from Greg Holder and Photo-Sonics and you can proceed with
this page for your website.
It was all I could obtain from Photo-Sonics.
Thank you very much again for your hard work on the Red Book
Nikkor site and for the honor of including my Nikon items in its pages.
With the Very Best Regards,
Martin Fox
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Hi Martin,
No problem. Photo-Sonics grants you permission to use
the e-mails and attached photo of the 1B 16mm High Speed
Camera in the article by Mr. Akiyama.
Please note the photo of the 1B is a newer model and is missing the film magazine.
Regards
Greg
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フォトソニック1B型16ミリ高速度シネカメラ
Photo: Copyright (c) 2009, Photo-Sonics, Inc., USA, All Rights Reserved.
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール25cm F4
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
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ロケットニッコール8.5cm F1.5のミステリー
この記事を書いていて、どこかで見たことのあるマウントだなと思った。
3年前にたしかに見ていた。
ニコン研究会の2005年3月の例会で見たのだった。
それは、
ニッコール 8.5cm F1.5をベースに造られた特殊用途光学系(資料写真)として紹介されたものだった。
当時は、用途が分からなかったが、四角いマウントの形状と4つの搭載用ネジ穴の位置、
レンズ固定の金具などを見ると、フォトソニック1B高速度カメラ用と思うに十分な材料が揃う。
フォトソニック1B高速度カメラ用ロケットニッコール8.5cm F1.5 (写真)
Photo: Copyright (c) 2009, Nikon Kenkyukai Tokyo, All Rights Reserved.
マーチンさんから、
四角いマウント部のサイズを実測した図が送られてきたので掲載しよう。
穴の中央間を測り、横が51mm、縦が45mmだ。
これと同じネジ穴間隔を持つマウントが装着されたニッコールレンズは、
フォトソニック1B高速度カメラ用と言えるだろう。
誰も言及して来なかったことだが、50年以上が経過しても、新しい発見をすることができる。
これだからマニヤは困る、いや、やめられない。
I have attached to this message a picture of the rectangular rear mounting flange
of my 25cm "Rocket Nikkor" showing the exact measurements of the distance between
the center of the screw holes on both sides.
These measurements were made from the exact center of the screw holes
and they are 45mm for the short side and 51mm for the long side.
If the other "Rocket Nikkor" in the 8.5cm focal length has the same measurements
on its flange then we will know for certain that it was mounted to the Photo Sonics 1-B camera
in the fifties and early sixties as well.
If there is some way you can find this out the mystery will be solved!
ロケットニッコールマウントの寸法
Photo: Copyright (c) 2009, Martin Fox, All Rights Reserved.
Special Thanks to Mr. Martin Fox
All photos by Martin Fox, Copyright (c) 2009, All Rights Reserved.
The photos were taken using a Fuji Finepix S-3 Pro digital SLR
using 1980's vintage 55mm F2.8 Micro-Nikkor lens.
マーチン・フォックス氏提供による画像は、フジFinepix S-3 Proに、
古い1980年代のマイクロニッコール55mm F2.8を使用して、マーチン・フォックス氏が撮影したものです。
転載および二次利用をお断りします。
Special Thanks to Mr. Greg Holder
Photo-Sonics company, California U.S.A.
このコンテンツの共同製作にあたり、
多数の画像並びにメッセージを提供いただきました米国の商業写真家マーチン・フォックス氏に感謝いたします。
ありがとうございました。
また、高速度カメラの画像や、詳細の背景説明など、
情報を提供いただきました米国フォトソニック社のグレッグ・ホルダー氏に感謝いたします。
ありがとうございました。 秋山満夫
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記事作成を終えて
高速度カメラマニヤの方や、戦闘機搭載用航空カメラコレクター、
ロケット・トラッキングシステム愛好家におなじみの米国フォトソニック社(Photo-Sonics, Inc.)。
1950年代の末に、特殊なマウントを持ったニッコールレンズが造られた。
有人音速飛行の先の、宇宙計画の先駆けとなったロケットスレッド・テスト用に、
過酷な加速度や振動に耐える、
フォトソニック1B型16ミリ高速度シネカメラとニッコール25cm F4が活躍していたのだ。
世界で誰も言及しなかった事実を、
米国の商業写真家のマーチン・フォックス氏のヴィンテージ・ニコンコレクションから掘り起こしてみた。
マーチンさんとの共同調査を通して見えてきたのは、科学技術の先の、
ミリタリーレベルの厳しい環境に耐える頑強なニッコールレンズのたくましい存在だったのである。
マーチンさんと共同調査を行っていた時に、
だんだんと見えてくるレンズの時代背景と存在理由に、
そして立体的に見えてきた全体像に、
「いまでも新しい発見をすることができる」というワクワクした気分を思い出すのである。
それにしても、航空宇宙産業界や軍需産業界御用達の天下のフォトソニック社が、
日本の一般市民が運営する趣味のウェブサイトへの情報提供や掲載許可をよく出してくれたものだ。
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2021年のあとがき
このコンテンツのオリジナルは2009年1月に公開したものです。
2016年のサイト移転に伴う見直しにあたり、
写真画像の原版を再度切り出して、より鮮明に表示できるように工夫しました。
2020年には全体の構成を画像のバランスを見て編集し直しました。
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