EL Nikkor 40mm F4N    Chapter 1

EL ニッコール 40mm F4N

ずいぶん昔の話。2005年2月のことであるが、EL ニッコールの製品ラインナップでは最大で横綱格の EL ニッコール 360mm F5.6 を入手した。 最大が入手できたので次は最小ということになった。最小は EL ニッコール 40mm F4Nである。

それからしばらくして新品未使用デッドストック品が見つかったので、念のため入手しておいた。 ライカL39スクリューマウントなので、カメラに装着するのは簡単だった。 しかしながら、鏡が入っているニコン一眼レフではフランジバックの関係から無限遠が出ず、 レンズ前玉から10センチ先の被写体にしかピントが出ない。 何回か超接写で試写はしてみたが、結局長い間出番がなく自宅待機となっていた。

EL ニッコール 40mm F4N

コレクター様向けに、コンプリート・コンディションの揃い一式の姿を置いた。 これらが揃っていれば完品となる。 実際に写真の引き伸し用レンズとして使用する方や撮影用レンズとして実用する本格派写真家の方は、 レンズ本体があればよいのであって、ここまで気にすることはない。

テクニカルデータ

EL Nikkor 40mm F4N

−焦点距離: 40.1mm
−最大口径比: 1 : 4
−最小絞り値: F22
−レンズ構成: 4群6枚
−基準倍率: 10X
−標準使用倍率範囲: 5X〜30X
−画角: 52度(10X 時)
−色収差補正波長域: 380nm〜700nm
−原板サイズ: 43.2mm⌀(35mm判)
−フィルター径: 40.5mm P=0.5mm
−マウント: ライカL39スクリューマウント
−全長: 42mm
−最大径: 51mm
−重量: 100g
−重量実測: 100.0g

−発売時期: 1984年 6月
−当時の価格:
   29,000円(1984年10月)
   29,000円(1985年12月)
   29,000円(1987年 1月)
   29,000円(1993年 7月)
   29,000円(1999年 9月)
   29,000円(2003年 6月)
   29,000円(2004年 6月)

(注)以下のデータは製品カタログに掲載されていないため未記載。

−口径蝕
−歪曲収差
−基準倍率における原板から画像までの距離

EL ニッコール 40mm F4Nのレンズ構成図(各部寸法入り)

従来の EL ニッコールとは大きく異なるレンズ構成が興味深い。 トポゴンの2枚目、3枚目のように曲率が大きく、ごく薄いレンズを前群と後群に配置。 2群、3群の貼り合わせたレンズの形状も独特だ。 まだどなたも言及されていないが、きわめて斬新な光学設計の意気込みと圧をかんじる。

しかし、いかにも製造が難しく、組み立て調整に熟練の技が必要な雰囲気。 この焦点距離帯のレンズにしては、29,000円と目立って高額だったのはそんな背景からだろうか。 このあたりは、いずれニッコール千夜一夜物語で取り上げてくださるかもしれない。

EL ニッコール 40mm F4N の立ち位置

1984年の発売以来、20年以上に渡って販売されてきたレンズだ。 しかし製造数はほかの EL ニッコール製品に比べると少なかったようである。 話の根拠は中古市場での出現数による推測であって、ニコンの公式な情報ではない。

同列の50ミリから105ミリの引き伸し用レンズに比べると、29,000円という価格は、 ユーザーの大半を占める一般アマチュア写真家にとっては高く感じられたことも販売数に影響したと思う。 価格情報は製品の立ち位置を知る上で重要な情報となる。 Nシリーズのレンズが全 7種ラインナップされていた時代の当時の価格を確認いただきたい。

エル・ニッコール Nシリーズ 製品一覧
ニコン標準小売価格表(1984年10月 1日版)より

EL ニッコール 標準小売価格 原板サイズ
  40mm F4N 29,000円    35mm判
  50mm F2.8N 14,200円    35mm判
  50mm F4N 9,000円    35mm判
  63mm F2.8N 24,100円    35mmマイクロ・35mm判
  75mm F4N 16,400円    6x6cm判
  80mm F5.6N 21,000円    6x6cm判・6x7cm判
  105mm F5.6N 27,500円    6x9cm判

Nシリーズのレンズ使用上の注意

このレンズには、引き伸し機のランプの光を取り込み、絞り値を照明する機構が備わっている。 レンズ内に採光窓があるので、そのまま撮影用に使うと漏光の原因となると言われている。 解決方法は簡単で絞り値の表示部分を黒のパーマセルテープ等を貼って遮蔽すればよい。 私はこの簡単作法で撮影しているが、 本格派の方々にはレンズ底板のネジを外して明かり取り窓の位置をずらして取り付けている方も多い。

なお、たまに黒テープを貼り忘れることもあるが、気にすることはない。 夏の炎天下に意図的に絞り値の表示部分を強い直射日光に当てて撮影してみた。 何度も何回も実証実験を繰り返したがなんら影響はなかったのだから。

EL ニッコール 40mm F4N

EL ニッコール 40mm F4N

ニコン Z マウントを M42マウントに変換する超薄型のアダプター(形状はリング)が良い。 千円足らずで購入できる。 手持ちの日本製 BORG M42ヘリコイドを入れてレンズを装着。 この簡単装備で無限遠から60センチ程度の近接まで可能だ。

次の章で実写の画像サンプルを示すが、非常に使いやすく高性能なレンズなので、 EL ニッコールの入門から次のステップに行く方におすすめしたい。 新品元箱入り未使用のコンクールコンディションとなると話は別だが、 通常の USED であればお手頃価格で入手できるはずだ。

EL ニッコール 40mm F4N

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 次は実写の写りです。   第 2 章    ニコン Z 写真帖 1

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