EL Nikkor 135mm F5.6 and Nikon Bellows PB-4

ELニッコール135mm F5.6をニコンベローズPB-4で使う

Super Slow Lens for Mission Critical People
Old Nikon Bellows PB-4 Make the Complete Operation with Shift, Swing, Tilt
EL-Nikkor 135mm F5.6 and Nikon Bellows Outfit

ライカスクリューマウント

スローな生き方もよいが、 こういう時代だからあおりを効かせた生活もよいだろう。
意味不明のアジテーションも、 ハイパーシテイ・トーキョーでは記号を発信する。
と、妙な切り出して紹介するのが、 スローレンズ界では有名なELニッコール135mm F5.6だ。
4×5判用の引伸ばしレンズとして最高の性能を持つ。

ELニッコール135mm F5.6とPB-4ベローズ (撮影年は2002年4月)

日本光学製の引伸ばしレンズは、一部の大型機用をのぞくと、 レンズマウントはだいたいライカL39スクリューマウントだ。
L39マウントであれば、L-Fアダプタを介してニコンF型の一眼レフに装着可能だ。
同様のL39変換アダプタを使えば、おそらくほとんどのカメラには装着できるだろう。
ELニッコール135mm F5.6は、 L39マウントのニコン引伸ばしレンズの中でいちばん長焦点なレンズである。

PB-4にしかできない上目づかい

テクニカルデータ

EL Nikkor 135mm F5.6

−焦点距離: 135mm
−最大絞り: F5.6
−最小絞り: F45
−レンズ構成: 4群6枚
−基準倍率: 5X
−標準使用倍率範囲: 2X〜10X
−画角: 54度
−色収差補正波長域: 380nm〜700nm
−口径蝕: 0% (F8にて)
−歪曲収差: +0.025%
−原稿サイズ: 4インチ×5インチ (162.6mmφ)
−基準倍率における原板から画像までの距離: 972mm
−重量: 230g

シフトにスイングPB-4によるこの自由で柔軟な光軸を見よ

ベローズとの相性

このレンズは、 ほかの標準的な引伸ばしレンズである50mmから80mmあたりに比べて生産量が少ない。 もともと4×5インチ判用の引伸ばしレンズであったから、 そうは需要がなかったのだろう。 もちろんELニッコール135mm F5.6は現在でもニコンから現行製品として販売されている。 現役である。(注)
しかしここでは、日本光学製の旧い黒塗りの鏡胴にクロームめっきのマウント加工が美しい 旧ELニッコール135mm F5.6を掘りおこしたい。

ベローズPB-4をセットして、レンズを装着する。
簡単に余裕で無限遠が出る。
もちろんベローズを伸ばすと、そこは美しいマクロ撮影の世界が待っている。
135mmという長焦点レンズのメリットはワーキングデスタンスを長く取れる。
葉の上に止まった小生物をやや遠方からマクロ撮影可能だ。
レンズも小さくて控えめであるから、小生物にも無用な緊張を強いない。
きちんと撮影に応じてくれる。これはスローなレンズの人柄からくるものだ。

(注)
ELニッコールはすでに現行製品として販売されていない。
本記事を書いたのは2002年のことである。
その後の2006年に、株式会社ニコンは写真用引伸ばしレンズの販売終了を発表した。

レンズだってまずは人柄だ話はそれからじゃないか

PB-4ベローズ作法

ニコンのベローズでは、唯一あおり機構が付いたのがPB-4である。
現行の製品では、あおり機構付きのベローズは生産されていない。
なぜこういった名品を製造中止にしてしまったかはよく知らないが、 あおり機構が必要以上に機械工作上の手間がかかることは容易に判断できる。

海外のサイトでも、PB-4ベローズの製造中止を嘆く声が多い。
彼らは、頑丈な4本レールと ベローズ自身に三脚取り付けマウントを持っていることを評価している。 重いレンズを取り付けてもレールを移動しバランスが取りやすい。
もちろん、シフトとスイング機能が装備されていることが 最大の評価ポイントであることは間違いない。
PB-4にはベローズ蛇腹の両サイドにノブが付いている。
カメラを覗いて左手がすべて移動量調整のためのノブで、 右手がすべてロックするためのノブだ。 こういう操作まわりを整然と装置しているところが、 PB-4ベローズを海外のファンが認めている理由でもある。
私は右ききなので、右手が移動量調整ノブだと使いやすいと思うが、 このあたりは好みが分かれるところだろう。

あおり機構というと、一般的には近接撮影、いわゆるブツ撮りで、 手前から奥までピントを合わせたいときに使うことをイメージする。
あるいは、建築物を下方から撮影しても、 きちんとまっすぐに撮影するときに使うことをイメージする。 ビルを台形に写すのではなく、ま四角に撮影する作例がよく載っている。

しかしもっとおもしろい使い方は、 遠方の景色を一部だけピント合わせする手法だ。
同じ距離にある京都の山々を撮影した場合に、 同じ距離にある五重塔だけがピントが合っている絵が撮れる。
また、本物の街の風景をミニチュアのジオラマのように撮影することも簡単にできる。
遠景と手前がアウトフォーカスにぼけていて、真ん中にピントが合っている情景になる。
ポートレートで、目だけにピントがギリギリ出た絵を撮ることも可能だ。
料理やお菓子の写真ではこの使い方がお約束で、 パフェの上のイチゴだけにピントがキリリと出た雰囲気な描写にはピタリきまる。

知れば無敵なPB-4ベローズ作法

うるさ方も納得の性能

自然シーンから、ポートレート撮影も、そして超マクロな状況まで、 非常に「使える」セットがこの組み合わせだ。
ご承知の通り、中古カメラ市場では、 ベローズもELニッコールもキワモノ扱いで、人気がない。
人気がないのは嬉しい。
人気があるものを使うようでは、あおりを効かせた生活はないだろう。
市場から見放された装置を、再び陽のあたるところへ連れ出そう。(注)

(注)人気があるとかないとか
このあたりの事情は変化していますので文末の2016年の追記を参照してください。

ELニッコール135mm F5.6とPB-4ベローズ (撮影年は2002年4月)

スローなレンズとスローなベローズ装置が出会うと、 そこは底力のあるスーパーパワーを引き出す。 マクロ撮影ではドイツやスイスの海外製高級マクロレンズを愛用する、 そのすじではうるさいウルサ方(Mission Critical People)に、 このセットでファインダーを覗いてもらった。
群生する野草の姿を見つめた彼は、一言「すごいね、コレ」とうなった。
思うことがあったようだった。

この状態で距離1万メートル先にピントが合っている

どっしり構えた写真生活

引伸ばしレンズでは写真撮影ができない、と思っている方がいる。
引伸ばしレンズは解像度、描写性、発色、すべてに優れている。
もちろん万能レンズではないから、 一般撮影用レンズと比べるとデメリットもある。
取り回しがまず面倒だ。しかしそれを知った上で使うと、思わぬ能力に驚く。

このセットは、手持ち撮影では無理だ。
必然的に三脚に乗せて、どしりと構えて撮影する。
動く被写体を狙うのも無理がある。だからスローレンズだ。
まる一日、定点に三脚をセットして、トマトの赤い艶を追うのもいいだろう。
山深く青い渓流に、流れを記憶するのもよし。
明け方か、海に早朝の音が写れば、それは成功ということだ。

写真生活もスローなのがよい。
電気モータードライブなんて知らないよ。

質実剛健だが心優しき頼れるレンズ

2016年の追記

オリジナルのコンテンツは2002年4月に書いたものです。
ここでニコンベローズPB-4の機能を紹介したことがきっかけで、 興味を持たれる方が増えました。 当時のコンテンツでは、レンズの画像を1枚のみでしたが、 2016年の見直しにあたり、当時に撮影した画像を追加しました。
さらに、最近に撮影した雰囲気がよくわかる画像を組み込みました。
また、テクニカルデータを掲載していませんでしたので、正式資料から正しい情報を引用し盛り込みました。

記事中に「中古カメラ市場ではベローズはキワモノ扱いで人気がない」と書いてありますが、 それは当時の話であって、現在では特にニコンベローズPB-4に人気があります。
そうは言ってもレンズと違ってベローズは、普通は1台あれば十分なので、 注意していれば状態のよい良品を見つけることができると思います。

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