EL Nikkor 63mm F3.5 Slow Lens

佐渡金山砂金色に輝くELニッコール63mm F3.5

マイクロフィルム専用レンズ

数あるELニッコールのなかでも人気が高いのがこのレンズだ。
35ミリ無孔のマイクロフィルムはその性質上きわめて高い解像力を持つが、 このレンズはそれを再現するのに十分な高解像力をもつ。
開発の狙いはここにある。高解像力だ。
色収差補正波長域が近紫外線域に及ぶことも特筆されている。
汎用性の高いライカL39スクリューマウントなので、 BORGのヘリコイドを介してニコンカメラに装着した。
野草の撮影や木の幹を精密描写する場合に優れている。
開放でもF3.5と、このクラスのレンズにしては少々暗いが、気にならない。

ELニッコール63mm F3.5 スローレンズ

テクニカルデータ

EL Nikkor 63mm F3.5

−焦点距離: 63mm
−最大絞り: F3.5
−最小絞り: F16
−レンズ構成: 4群6枚
−基準倍率: 8X
−標準使用倍率範囲: 2X〜20X
−画角: 46度
−色収差補正波長域: 350nm〜700nm
−口径蝕: 0% (F4にて)
−歪曲収差: +0.4%
−原稿サイズ: 32×45mm (55.2mmφ)
−基準倍率における原板から画像までの距離: 637.9mm
−重量: 130g

(注)色収差補正波長域
ニコンセールスマニュアルによると明確に350nm〜700nmと記載されている。
350nmと近紫外線域に踏み込んでいるのはELニッコールでは唯一このレンズだけである。

開放絞りはF3.5が正しい

武蔵野の雑木林。
人里離れた観光地ではない名もないスポットだが、 レンズ表面に大気を写すには最適だ。
冷気のような木々の映像が天空から降りてくる。

ELニッコール63mm F3.5は1980年にフルモデルチェンジされた。
レンズも新設計で開放絞りもF2.8と明るくなった。 外観も現代的なデザインになった。
ここは好みがわかれるところだが、 レッドマニヤとしては旧型のF3.5がおすすめだ。
金属加工とか黒塗装の仕上がり、大きめに刻印された白い絞り値表示。
Nippon Kogaku Japan銘なら趣味性が高い。
でも後期型のNikon銘だったら自然科学写真家御用達として評価できる。

開放絞りはF3.5の潔さ

市場では少ない

レンズ前玉がELニッコールにしては大きめで、上質のコーティング色もよい景色である。
中古市場での63mm F3.5の数は意外と少ない。あるようでないのがこのレンズなのだ。
重量級の80mm F5.6より高価で、当時のこのクラスの引伸ばしレンズにしては定価が高めだった。 また、一般の写真ユーザーは50mm F2.8で十分だったため、 当時購入した人は少なかったと思われる。

40.5ミリのフィルター径は使いやすい。 各種アダプター類もかんたんに入手できる。
もちろんほんらいの引伸ばし目的で使用しても非常に優れた性能を手にできる。
一眼レフカメラに装着して、日曜自然科学写真家になるのもたのしいものだ。

雑木林の木漏れ日がクールジャパン

存在感は十分

大人が日曜日にたのしむカメラは、これできまりだ。
なんといっても、記念写真が撮影できない。
これはデメリットなのか。
メリットと考えられる方は、ぜひ旧型のELニッコール63mm F3.5できめてほしい。

小さいELニッコールでも存在感は十分だ。精密な描写には安心感がある。 絞りのクリックがカチリと動く。風だけの雑木林で音がした。
レンズもスローなのがよい。

小さいが存在感のあるELニッコール63mm F3.5

コレクターズノート

私のところに問合せが複数あったので、ここに情報をシェアしておきたい。
ELニッコール63mm F3.5の絞りは、開放のF3.5にしても完全にオープンにならず、 すこしばかり絞り羽根が残る。 確認のため、ELニッコール63mm F3.5を全部で4本購入したが、 4本ともに絞り羽根が残るので、そういう仕様なのだろう。
開放のF3.5にしても完全にオープンにならず、 下の写真のように八角形に絞り羽根が残るのは正しい仕様なのである。不良品ではない。
現物を手にしたことがなく、ネットオークション等で初めて入手する方へのご参考に。

これで絞り開放F3.5にフルに開けた状態
(絞り羽根が八画形に残るのは正しい仕様)

絞り開放F3.5で4本ともに絞り羽根が八角形に残ることを確認

日曜自然科学写真家

ELニッコール63mm F3.5による実写画像である。
ニコンのコンパクトデジタルカメラCOOLPIX P5100に、 コンバージョンレンズとしてELニッコール63mm F3.5を装着した。 レンズを装着するために専用のアダプターを特注したが試作の2個だけで終了。 カメラより高いものについてしまったが満足だった。
実写画像をクリックすると少し大き目のサイズの画像が出ます。

COOLPIX P5100にELニッコール63mm F3.5を装着

繊細なハルジオンの白い花びら

五月の風に揺れるハルジオン

深淵なタンポポと空気の色彩

タンポポの壮大な宇宙観

上昇気流な気分はタンポポ

2016年の追記

オリジナルのコンテンツは2001年11月に書いたものです。
当時のコンテンツでは、レンズの画像を1枚のみでしたが、 2016年の見直しにあたり、当時に撮影した画像を追加しました。 また、テクニカルデータを掲載していませんでしたので、正式資料から正しい情報を引用し盛り込みました。 コレクターズノートもこの見直しの機会に書き残しておきました。

ELニッコール63mm F3.5を使った実写の画像を参考に掲載しました。 一眼レフに直付けではなく、コンデジにマクロコンバージョンレンズとして装着して撮影したサンプルです。 こんな簡単なセットでも拡大系撮影が楽しめるという意図で掲載しました。

現在でも人気のあるレンズです。
株式会社ニコンが写真用引き伸ばしレンズの販売終了を発表したのは2006年。 それからかなり時が経過しました。 でもごく少数の方々が、今でも、特にデジタルカメラが主流となった今でも、 撮影レンズとして使っているのを知ると、 基本性能が優れたレンズだったことを実感します。

基本性能が優れたレンズを実感できるELニッコール63mm F3.5

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