海の音を聴くウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7e
Surf Beach Sounds ● 旅のレンズ 旅行の友はカメラだった。 記念写真もよいし作品に挑戦するのもよし。 20代のころは、ニコン一眼レフのボデイ2台に交換レンズ3本が定番だった。 これに8ミリムービーフィルムカメラにハロゲン照明、 そしてカセットテープ式の録音機を入れて出かけたものだ。1970年代の話である。 そんな重装備の時代もあった。 今だとカメラは持たずにスマホのみだろう。 このコンテンツの大枠は2002年夏に書いたものだ。 夏の家族旅行である。 ニコンのフィルム式一眼レフ1台きり、レンズは28ミリF3.5広角レンズのみだった。 かんたんカメラ1台のときは、私はなにも機能しないレンズを携帯した。 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eを持っていった。 家族旅行にである。
JR在来線特急のゆるい旅 海は夏なので、伊豆は晴れている。 晴れている空の下、ライフセーバーのたくましく日焼けした青年をバックに、 時代のスーパーハイエンドレンズは、ますます先鋭な波長を光合成した。 世界広しといえども、海水浴客でにぎわう海岸で、 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eはないだろう。 手にレンズを持ち、背景との調和をみながら、 レンズの写真を撮っている姿は違和感があるだろう。 が、そのあたりを気にしていてはこの道は行けない。 海という季節の背景に、半導体製造装置用極超高解像力レンズを置くというシュールな展開を構成していたら、 高校生のころ読んだアンドレ・ブルトンの「超現実主義宣言」の内容は忘れたけれど、 背伸びしたい年頃の、なんともカッコわるくて未完成な感動を思い出した。 夏は完成していないほうがよい。
ここは南仏ニースのプライベートビーチ、ではない 海にウルトラマイクロニッコールがそもそも ● ジャパン食文化 海水浴場からの素朴な乾いた道を歩く。木陰には海からの涼風が抜ける。 海の家ビジネスのおじさんたちが忙しそうに食材を運んでいる。 日傘のおばさんは日本の風景になっている。 さて、海遊びから帰ると、たのしみは露天風呂にビールが待っている。
海水浴場からの帰り道 温泉湯上り夏ビール 露天風呂から上り、この世界の正装である浴衣に着替えて席につく。 刺身の盛り合わせにレンズを置いてみた。 家族旅行である。 しかし、刺身にレンズという状況であっても、家族はとくに反応しない。 「お父さんが刺身にレンズを置いている」だけのことなのだ。 この状況もかなりシュールではあるが、家族には慣れがある。 家族の協力がないと趣味は成立しないが、慣れも重要なことだ。
先付にウルトラマイクロニッコール もう1つこの写真の意味には国際化という観点もある。 本サイトは英語版も用意してある。 英語圏の人々向けというよりは、非日本語圏の方を対象にしてある。 私はメイドインジャパンにこだわりたい。 刺身の舟盛りで日本文化をアピール(じまん)したいのだ。 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eだってうれしそうだ。 ローフィッシュ、スシが好きだというニューヨークのスティーブもこのサイトを見ている。 ニッコールレンズの話題でいきなり刺身が出てくる。 パソコンを開いて、なんてこった、と笑う人が1人でもいればよい。 2日目の夜はアジの刺身をいただいた。非常においしかった。 撮影するのを忘れてしまったのが残念。
刺身の舟盛りにウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eがある風景 ● コレクターズノート ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eは、はっきり言ってコレクターズアイテムだ。 ハイエンド写真家あるいはスーパーコレクターのために、お役立ち情報をまとめておこう。
レンズマウント:
フィルター径: 2002年当時ではニコンから40.5mmのフィルターが販売されていなかった。 2011年にNikon 1 J1が発売になった時に最新の40.5mmフィルターがリリースされた。 「40.5mmネジ込み式フィルター 40.5NC」である。 これは一部の産業用/工業用ニッコールレンズのプロテクトフィルターとしてお薦めだ。 MADE IN JAPANのニコン純正品。価格もお手頃なのが嬉しい。
鏡胴:
カメラへの装着方法:
フィルターネジ径は40.5ミリ ライカL39スクリューマウント ● テクニカルデータ ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7のオリジナル性能をみてみよう。 手元にe線用のウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7e、 それに、g線用のウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7gの性能緒元が記載された一次資料がある。 日本光学が発行したセールスマニュアルである。 どこかで誰かのお役に立つだろうから両方のレンズの性能緒元を示す。 レンズ構成図は、1970年代となると、 レンズ本体外観の各部の寸法のみを記載したものしか公開されていない。 レンズエレメントはブラックボックスになっているのだ。 レンズ各部寸法ということで掲載してみた。 それでもレンズ前玉第1面の特徴的な凹レンズが確認できる。 画像上でクリックすると大き目のサイズで表示されるので確認していただきたい。 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7e
−焦点距離: 28.7mm
−発売時期: 1973年前後と推定
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eのレンズ各部寸法 ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7g
−焦点距離: 28.8mm
−発売時期: 1973年前後と推定
ウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7gのレンズ各部寸法 ● テクニカルデータの考察 発売時期について。 ニコンの社史(75年史、100年史)にあたってみたが、記載はなかった。 いくつかの資料とニコンミュージアムの展示パネルの説明をもとに推測した。 レンズ構成枚数は、資料の精査に加えて、 半導体製造装置のレンズを設計しているニコンの技術者の考察を得て、 データの見直しを行った。 レンズの重量はカタログ掲載値と実測値を示した。
禅ブラックに赤い瞳のウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7e ● 旅のカメラ 「旅のカメラ」。 このテーマだけでカメラ好きな方であればカメラ談義が全開となることだろう。 旅行のカメラ機材はシンプルを極めることになることは理解できる。 しかし多少なりとも非日常から離れることが旅の目的であれば、スマホだけとはさびしい。 かといって最新鋭フラッグシップ機にレンズのセット、フル装備一式となると目的が撮影だけとなってしまう。 ではと、軽みのライカスタンダードにフィルム1本きりというのもストイックすぎて出家の気分である。
夏の木陰にUMN 28mm F1.7e 今の時代、「旅のカメラ」は現実的にはスマホ一択だろう。 すこしカメラな人はコンデジでも持って行くかもしれない。 フルサイズのミラーレスやフラッグシップ一眼レフは少数派だろう。 記録媒体がガラス乾板であれ、化学反応式のフィルムであれ、半導体撮像素子であれ、 旅情が写ればよしとするのも大人の嗜みではないか。 そこは柔軟に考えていきたいものである。 最近のウルトラマイクロニッコール 28mm F1.7eの姿を見ていただきたい。 夏木立の涼しげな片すみに置いてみた。 レンズ前玉の凹面と赤いコーティングがみどりの背景に映り、いい雰囲気である。
レンズ前玉の凹面に赤いコーティング ● 2022年のあとがき このコンテンツのオリジナルは2002年8月当時に書いたものです。 その後2016年のサイト移動に伴う大幅な見直しで、記述の修正や画像の追加を行いました。 さらに2017年の改版では、テクニカルデータを整理し、 レンズ構成図(実際的にはレンズ各部寸法図)を追加しました。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2002, 2022
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