MP J93040 and MP J93050

L-F接続リングと対物リングの種類

1968年に発売された Nikon 大型マクロ写真撮影装置 MULTIPHOT。 1995年に製造を終了したが、販売は 1997年末頃まで続いたと言う。 長きに渡り製造・販売されたので、いくつかの改良・改善があったと思う。 「L-F接続リング」および「対物リング」の小さな付属品でさえも、 ざっくり言って前期型と後期型に分類できる。 さらにはネジの種類や本数でいくつかのバージョンがある。 そんな話をしてみたい。

L-F接続リング(MP J93040)

左が前期型。右が後期型。前期型は光沢のある金属製。 後期型は光沢のないマットブラック仕上げの軽金属製。

前期型はメタリックでカチリとした印象。 後期型は手になじむ角が取れてあかぬけた印象。 前期型の方が重量感があると感じていたが、実測してみてびっくり。 軽いと感じていた後期型の方が重かったのである。 かくも見た目の印象というのは思い込みが優先して、あてにならないものである。

L-F接続リング(MP J93040)

L-F接続リング(MP J93040)

ネジの種類や本数でいくつかのバージョンがある。 コストダウンの観点から、ネジの本数が多い方が古く前期の製品で、 ネジの本数が少ない方が新しく後期の製品と推測してみた。 さらにネジの種類での分類。 マイナスネジは古く前期の製品で、プラスネジは新しく後期の製品と、推測ではあるが分類してみた。

重量はデジタルスケールで実測した。 手持ちの標本が複数ある場合は、それぞれの重量を測定し記録した。



タイプ 1

前期型
マイナスネジ 5本
重量 39.0g







タイプ 2

前期型
マイナスネジ 3本
重量 38.5g
重量 38.5g







タイプ 3

前期型
プラスネジ 3本
重量 39.0g
重量 39.0g
重量 39.0g







タイプ 4

後期型
プラスネジ 5本
重量 39.08g

(注)2025年 5月
日本国内で発見された新種







タイプ 5

後期型
プラスネジ 3本
重量 42.0g
重量 41.5g
重量 42.0g

(注)新種について

2025年 5月。日本国内の読者様から新種が発見されたと連絡をいただいた。 提供いただいた画像を精査したところ、L39マウント側(黒い部分)は光沢のない後期型。 Fマウント側のネジの数は 5本。しかもプラスネジ。 新種と同定し、リストに加えることにした。 この新種をタイプ 4 と定義した。従来のタイプ 4 はタイプ 5 に変更した。

対物リング(MP J93050)

左から 2個が前期型。右の 1個が後期型。前期型は光沢のある金属製。 後期型は光沢のないマットブラック仕上げの軽金属製。

対物リング(MP J93050)

前期型はメタリックでカチリとした印象。 後期型は手になじむ角が取れてあかぬけた印象。 対物リングにネジ頭がある方が表面、ネジ頭がない方を裏面とする。 裏面にネジ穴が無いタイプと、ネジ穴があるタイプに分けられる。 さらにネジ穴が黒でペイントされているものと、切削したままのタイプがある。 コストダウントの観点からみても、手間がかかる前者のタイプが前期型で、 手間を省略した後者のタイプが後期型となる。

対物リング(MP J93050)

マイナスネジの頭を見ても、黒染めしてあるタイプと、黒染めを省略して、 光ったネジ頭のままのタイプもある。 対物リング一つとっても時代の変化が読み取れる。 以下に分類しまとめた。 他にも仕様が異なるタイプがあるかもしれないが、 あくまで手持ちの範囲でまとめたので、ご理解いただきたい。




タイプ 1

前期型
マイナスネジ
裏ネジ穴なし
重量 24.0g









タイプ 2

前期型
マイナスネジ
裏ネジ穴あり
重量 23.5g
重量 23.5g









タイプ 3

後期型
プラスネジ
裏ネジ穴あり
重量 23.5g
重量 23.5g

当時の価格の話

L-F接続リングおよび対物リングは、1970年前半までは単品での販売がなかったようである。 カタログ、価格表に掲載されていない。 手持ちの資料の範囲では、1979年10月 1日版価格表では掲載されている。

(1)Nikon M-01 顕微鏡

1973年 1月版カタログ(資料コード:8300-01MJC 301-20/1)
ページ 39
接続リング、対物リングの文言がない。 アダプターリング込みでレンズの価格が示されているようで、 アダプターリング単体の価格が明示されていない。

(2)Nikon M-20 顕微鏡価格表

1973年12月版価格表(資料コード:無し)
ページ 12
接続リング、対物リングの文言がない。 アダプターリング込みでレンズの価格が示されているようで、 アダプターリング単体の価格が明示されていない。

(3)Nikon M-20 生物顕微鏡価格表

1979年10月 1日版価格表(資料コード:無し)
ページ 20
接続リング 4,000円
対物リング 2,000円

(4)Nikon M-20 生物顕微鏡価格表

1980年 4月 1日版価格表(資料コード:無し)
ページ 20
接続リング 4,000円
対物リング 2,000円

(5)生物顕微鏡価格表

1993年 6月 1日版価格表
ページ 32
接続リング 5,000円
対物リング 5,000円

(6)ニコンステーション(SNIKON)

1997年のことであるが、当時全盛だったパソコン通信というネットで、 ニコンはニコンステーション(SNIKON)というファンとの親睦の場を提供していた。 製品にたいする質問にも答えてもらえた。 「マクロニッコールは今でも購入できますか?」と質問した人がいて、ニコンから回答があった。 その中に接続リングと対物リングの価格も公表されたので以下に示す。

SNIKON (11) #405
1997年11月26日 14:36'
マルチフォトは製造を終了しましたが、レンズ及び付属品はまだ販売しております。

マクロニッコール 120mm 80,000円
接続リング 20,000円
対物リング 10,000円

元のページに戻る

   元のページに戻る

Back to RED BOOK NIKKOR


Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2021, 2025