MACRO Nikkor 35mm F4.5 in Wind

Sweet Little Candy
The MACRO NIKKOR 35mm F4.5
For Scientific Photographer
BONTAN AME LENS

BONTAN AME and MACRO Nikkor 35mm F4.5

ボンタンアメと小さいニッコールレンズ

レンズの大きさを画像で表わしたくスケールを探してみた。 誰でも知っているスケールだと1円玉とか500円玉コインがわかりやすい。 しかしながら、このサイズ感が理解できるのは日本国内だけだ。 グローバル展開をしている当サイトは世界基準で誰もが理解できるスケールを探した。

レンズのボデイには水色のラインが入っているので、ブルーを基調としたものがいい。 そうなると「ボンタンアメ」しかない。 グリコや森永のキャンディもいいけれど、 「BONTAN AME」で検索して画像やら英語の説明が出てくるのは、 グリコや森永のそれよりも世界的にはボンタンアメの方が有名なのである。

最小の超マクロ専用レンズ

さて微妙なイントロダクション前説明をしてしまったが、 おそらく市販されたニッコールレンズでは最小の部類に入るレンズではないだろうか。 マクロニッコール35mm F4.5である。 ごらんのように、指でつまめる程きわめて小さい。 しかしこのレンズ、ニコンの大判カメラ(4×5インチ判)用に専用設計されたレンズなのだ。 このごく小さいレンズが4×5インチ判をかるくカバーするから驚く。

ロイヤル・マイクロスコピカル・ソサエティなマクロニッコール35mm F4.5
(撮影年は2001年8月)

ニコンから正式にレンズの性能諸元が公開されていないため、レンズ構成図ほか不明である。 重量だけは実測できるので、家庭用のデジタルスケール(TANITA KJ-114)で調べてみた。 サンプルは手持ちの2本。 1本目は重量実測 62.0g であった。もう1本は重量実測 62.5g であった。 見た目はとても小さいレンズであるが意外と重たい。

ちなみに頑強な鏡胴で有名な西ドイツ製のRMSマウントレンズ「ルミナー」と比較してみた。 手持ちの1本だけではあるがドットルミナーのグリーン。 LUMINAR 40mm F4 (ZEISS West Germany)は重量実測 67.0g であった。 製品カタログや価格表など公知の範囲で得られる情報と実測できる数値データをまとめてみた。

マクロニッコール35mm F4.5

−焦点距離: 35mm
−鏡胴帯の色: 水色
−最大口径比: 1 : 4.5
−絞り目盛り: 1、2、3、4、5、6
−基準倍率: 12X
−標準使用倍率範囲: 8X 〜 20X
−マウント: 顕微鏡対物RMSマウント
−全長実測:
   30.80mm (製造番号 36000番代)
   30.75mm (製造番号 36100番代)
−最大径実測:
   24.10mm (製造番号 36000番代)
   24.00mm (製造番号 36100番代)
−重量実測:
   62.0g (製造番号 36000番代)
   62.5g (製造番号 36100番代)
−付属品: プラスチック製ケース(顕微鏡対物レンズ収納型)

−発売時期: 1968年
−当時の価格:
   17,400円 接続リング付(1970年 2月20日版価格表より)
   17,400円(1970年 7月10日版カタログより)
   20,000円(1972年 7月01日版カタログより)
   20,000円(1973年 1月)
   26,000円(1973年12月)
   46,000円 対物リング、接続リング付(1979年10月)
   58,000円 対物リング、接続リング付(1980年 4月)
   64,000円 対物リング、接続リング付(1993年6月1日版価格表より)

ごく小さいがお道具としての完成度が極めて高い

ニコン研究会の2005年7月例会に登場

英国王立顕微鏡学会

マウントはRMSマウントである。 RMSマウントあるいはRMSスレッドというと、聞きなれない人がいると思う。 RMSはRoyal Microscopical Societyの略。 日本語で言うと英国王立顕微鏡学会となる。 RMSマウントというと、いわゆる一般的な顕微鏡の対物レンズのネジマウントを指す。

この対物レンズのネジマウントを持ったマクロレンズ、拡大撮影用レンズは、 かつてはたくさんの種類が各カメラメーカーから出ていた。 有名なところでは、ツァイスのルミナー、 ライツのレプロフォタールおよび普通のフォタールレンズ。

日本では、古くはトプコン、そしてオリンパスが出していた。 ミノルタも当時のライツとのかんけいからフォタールをラインナップしていた。 キヤノンから出ていたキヤノンマクロフォト35mm F2.8とマクロフォト20mm F3.5は、 カメラ量販店の店頭でも見かけることができたので比較的ポピュラーなレンズだったといえる。

ごく小さいマクロニッコール35mm F4.5の重量感

ニコンでは、 マルチフォト装置用としてRMSスレッドをもった35mm F4.5と19mm F2.8の2本がリリースされていた。 1994年くらいまでカタログに掲載されているのを確認しているが、 残念ながら、1990年代後半には製造販売が停止されてしまった。 さらには、最近まで現行品で生産販売されてたと思っていたが、ライツのフォタールもみかけることがない。 あのツァイスのルミナーさえも、いつのまにカタログから姿を消した。

参考までに記憶に留めておきたいが、 最後まで生き残っていたのはライカのフォタールレンズだった。 長きに渡りカタログや価格表に記載し続けられていたが、 2013年8月1日版の「ライカ製品価格表」では掲載されてない。 このあたりが最後だったのである。

精緻の極限工作精度

さて話を元に戻そう。 このニコン製のマクロニッコール35mm F4.5。ものすごく造りがよいのだ。 ペイントの塗り、精緻な彫刻による刻印、きれいに流し込んであるエナメル、真鍮のネジ加工。 そしてレンズには宝石のように美しいコーテング。 この小さな小さなレンズにも小さい小さい絞りがある。ちゃんとしたアイリス虹彩絞りである。 夏の夏らしくすずしげな木陰に向けてレンズを取り付ければ、 どんな小さな昆虫も、花の種子から、ニュートリノでも撮影できる。

マクロニッコール35mm F4.5は顕微鏡対物レンズマウント

見つめる楽しさを知るレンズ

RMSスレッドをもったマウントアダプタは各社から出ていた。 海外メーカーではライカ、ローライ、ハッセルブラッドなど。 国内メーカーではトプコン、オリンパス、キヤノン、 ヤシカコンタックス時代のコンタックスなどなど。

ニコンの純正品には「マクロ対物リング」があった。 RMS-L39であるから、これさえあればライカL39マウントアダプターでどんなカメラにも装着可能だ。 35ミリフルサイズのミラーレス機と相性がよい。 ニコン、キヤノン、ソニー、ライカと機種を選ばない。

いわゆる中判ミラーレスカメラだったら富士フイルムかハッセルブラッドから選べる。 マクロニッコールレンズが持つ本来のポテンシャルを引き出せるだろう。 64兆画素を有する量子カメラの時代になってもRMS型マクロニッコールレンズは現役で使えるはずだ。 その時までレンズを手元に置いておこう。

ニコンベロースPB-4に搭載したマクロニッコール35mm F4.5

夏の昼下がり、かき氷のイチゴ色を見つめるもよし、つめたいビールでも飲みながら、 その酵母の生育状況をジョッキの上からマクロニッコール35mm F4.5で見つめるのも楽しい。 みず色のラインが美しいエナメルで入っている。こういう技にはまいってしまう。 私はこのレンズ、はっきりいって、スゴイと思う。小さいけどデカい。 信州で大人の夏休み。ニコンベロースPB-4にマクロニッコール35mm F4.5を搭載した。 これから遠くに風を聞く。

イチゴとマクロニッコール

ニコンマルチフォト装置用に開発された4本のマクロニッコールレンズは質実剛健そのものである。 その中でもRMSスレッドをもった35mm F4.5と19mm F2.8の2本は実に可愛らしい。 イチゴに寄り添うマクロニッコールの姿は工業製品なのに工芸美術品の趣きがある。 そしてなによりもその存在に華やかさがある。

イチゴとマクロニッコール

純金色のRMSスレッドが美しいマクロニッコール

黒漆塗りのようなしっとりした風合のレンズ鏡胴

マウントアダプタのこと

とても重要なことなので、マウントアダプタのことを説明しておきたい。
ニコンの顕微鏡部門から大型マクロ写真撮影装置「マルチフォト」の付属品、 およびオプションとして、ニコン純正のマウントアダプタが2種類販売されていた。 それぞれ製品本体にはNIKONとかMADE IN JAPANなどの刻印は一切入っていない。 入っていないのが本物なのである。

その1つが、「L-F接続リング」。型番は MP J93040。
ライカL39スクリューマウントのレンズを ニコンFマウントのカメラやベローズ装置に装着するためのアダプタリングである。 ニコンが発行したマルチフォトの使用手引書に、図と共に「L-F接続リング」と明確に呼称され、 すべて「L-F接続リング」の表記で説明されている。 白い元箱には「マクロセツゾクリング」と印刷されているので、「マクロ接続リング」と呼ぶこともある。

もう1つが、「対物リング」。型番は MP J93050。
顕微鏡の対物レンズと同じRMSマウントのレンズを ライカL39スクリューマウントに変換するためのアダプタリングである。 ニコンが発行したマルチフォトの使用手引書に、図と共に「対物リング」と明確に呼称され、 すべて「対物リング」の表記で説明されている。 白い元箱には「マクロタイブツリング」と印刷されているので、「マクロ対物リング」と呼ぶこともある。

RMSマウントのレンズをニコン一眼レフにベローズ等を介して装着する場合には、 ニコンの純正品にこだわると、「対物リング」と「L-F接続リング」を併用することになる。

裏付けとした一次資料:
株式会社ニコン発行 大型マクロ写真装置 MULTIPHOTO 使用説明書
資料コード 28 (93.2.b) H-J-10R

なおこのあたりのすこし詳しい事情を「 BR-15, BR-16 って何だ? 」 にまとめたのでご覧いただきたい。

姿は小さいが4 x 5インチ判をカバーする頼もしいマクロニッコール

ニコンむかしばなし

このサイトの若手読者様にはまだ生まれていない時代の話かもしれないが、 本記事のオリジナルは2001年10月当時に書き公開したものである。

その2001年当時の話。 RMSマウントの写真撮影用レンズのことはネット上ではほとんど知られておらず、情報もほとんど得ることができなかった。 しかしながら、この記事をリリースした直後から、大幅に様相が好転したことを覚えている。

まず、情報が増えてきた。 さらには同じ興味を持つ方がドイツや米国など海外を中心に多数おいでになることが見えてきた。 著者こと私のところには問合せが急増した。 物事は連動し、e-bayなどの海外ネットオークションを中心に、 レンズの現物が多数登場しモノの価値評価の流れが固まってきたと思えるようになった。 そんなことなどなど。「ニコンむかしばなし」として読み流していただきたい。

RMS マクロニッコール

さて、いま現在の状況に話を戻そう。 残念ながらいま現在に至っても、 RMSマウントの写真撮影用レンズは世界中の「主要カメラメーカー」から製造販売されていない。 そういう時代になっているということである。

しかしながら見方を変えてみると、 老舗名門のライカから80年以上昔のタンバール90mm F2.2が最新技術で復刻され、 「ライカ タンバールM F2.2/90mm」としてMマウントで世に登場する時代となったことも事実である。 日本国内の発売日は2017年12月22日だった。

RMSマウントのマクロレンズは中古品でしか入手できない困った事情が続いているが、 またなにか動きが出てくるかもしれない。

ボンタンアメレンズ

ボンタンアメは何と言ってもこのパッケージのアートディレクションが素晴らしい。 14粒入りはやや縦長に思える箱だが、その大胆な構図と色彩の配置は、 奄美大島へ移住し数々の名作を残した孤高の画家・田中一村のスタイルを彷彿とさせる。 晩年の傑作「アダンの海辺」にも匹敵する独自の世界観である。 大正十三年から製造・販売されていたことに驚く。

もちろん飴そのものも秀逸である。 なつかしいオブラートに包まれた淡いボンタンアメ色のボンタンアメは、 どこまでもボンタンアメのような優しいあまさだ。

ボンタンアメとマクロニッコール 35mm F4.5 レンズ

ボンタンアメの画像をネットで検索したところ、メーカーのサイトはともかく、 一般の人たちがアップした画像がよろしくない。 ならばと、自然光スタジオで、白レフを2面起こしてブツ撮り撮影を敢行した。 パッケージの光テカリ白飛びを黒レフで押さえて、 さらにレンズ鏡胴の黒も締まるように黒レフで整えた。 ページ先頭の2枚は朝の光。 この2枚はクラシックな十二月のルミエールが美しい午後のお茶の時間に撮影した。

ボンタンアメとマクロニッコール 35mm F4.5 レンズ

RMSマウント型マクロニッコールの存在感を画像で伝えたいと思い、 いくつかのプランを立て絵コンテを頭の中で描いた。 でもボンタンアメとの共演がいちばん情緒が出る。

2022年のあとがき

このコンテンツのオリジナルは2001年10月当時に書いたものです。 画像は1枚きりで記事も短いシンプルなものでした。 2016年のサイトの移転に伴う見直しにあたり、新たに画像を追加しました。 2018年には時代の実情に合わせて組み立て直し文章を書き直しました。 2020年の年末にボンタンアメの画像をトップと末尾に置きました。

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