MACRO Nikkor 35mm F4.5 in Wind

ロイヤル・マイクロスコピカル・ソサエティなマクロニッコール35mm F4.5
(撮影年は2001年8月)

最小の超マクロ専用レンズ

おそらく市販されたニッコールレンズでは最小の部類に入るレンズではないか。 マクロニッコール35mm F4.5である。 ごらんのように、指でつまめる程きわめて小さい。 しかしこのレンズ、ニコンの大判カメラ(4×5インチ判)用に専用設計されたレンズなのだ。 このごく小さいレンズが4×5インチ判をかるくカバーするから驚く。

マクロニッコール35mm F4.5。
標準使用倍率範囲は8倍〜20倍。基準倍率は12倍。
1993年当時の価格は64,000円。

ごく小さいがお道具としての完成度が極めて高い

ニコン研究会の2005年7月例会に登場

英国王立顕微鏡学会

マウントはRMSマウントである。 RMSマウントあるいはRMSスレッドというと、聞きなれない人がいると思う。 RMSはRoyal Microscopical Societyの略。 日本語で言うと英国王立顕微鏡学会となる。 RMSマウントというと、いわゆる一般的な顕微鏡の対物レンズのネジマウントを指す。

この対物レンズのネジマウントを持ったマクロレンズ、拡大撮影用レンズは、 以前はたくさんの種類が各カメラメーカーから出ていた。 有名なところでは、ツァイスのルミナー、 ライツのレプロフォタールおよび普通のフォタールレンズ。

日本では、古くはトプコン、そしてオリンパスが出していた。 ミノルタも当時のライツとのかんけいからフォタールをラインナップしていた。 キヤノンから出ていたキヤノンマクロフォト35mm F2.8とマクロフォト20mm F3.5は、 カメラ量販店の店頭でも見かけることができたのでポピュラーなレンズといえる。

ニコンでは、 マルチフォト装置用としてRMSスレッドをもった35mm F4.5と19mm F2.8の2本がリリースされていた。 1994年くらいまでカタログに掲載されているのを確認しているが、 残念ながら、1990年代後半には製造販売が停止されてしまった。
さらには、最近まで現行品で生産販売されてたと思っていたが、ライツのフォタールもみかけることがない。 あのツァイスさえも、いつのまにカタログから姿を消した。

参考までに記憶に留めておきたいが、 最後まで生き残っていたのはライカのフォタールレンズだった。 長きに渡りカタログや価格表に記載し続けられていたが、 2013年8月1日版の「ライカ製品価格表」では掲載されてない。 このあたりが最後だったのである。

ごく小さいマクロニッコール35mm F4.5の重量感

精緻の極限工作精度

さて話を元に戻そう。 このニコン製のマクロニッコール35mm F4.5。ものすごく造りがよいのだ。 ペイントの塗り、精緻な彫刻による刻印、きれいに流し込んであるエナメル、真鍮のネジ加工。 そしてレンズには宝石のように美しいコーテング。 この小さな小さなレンズにも小さい小さい絞りがある。ちゃんとしたアイリス虹彩絞りである。 夏の夏らしくすずしげな木陰に向けてレンズを取り付ければ、 どんな小さな昆虫も、花の種子から、ニュートリノでも撮影できる。

マクロニッコール35mm F4.5は顕微鏡対物レンズマウント(RMSマウント)

見つめる楽しさを知るレンズ

RMSスレッドをもったマウントアダプタは各社から出ていた。 海外メーカーではライカ、ローライ、ハッセルブラッドなど。 国内メーカーではトプコン、オリンパス、キヤノン、 ヤシカコンタックス時代のコンタックスなどなど。
ニコンの純正品には「マクロ対物リング」があった。 RMS-L39であるから、これさえあればライカL39マウントアダプターでどんなカメラにも装着可能だ。 キヤノン、ミノルタ、コンタックスからミランダ、アルパもOK。

夏の昼下がり、かき氷のイチゴ色を見つめるもよし、つめたいビールでも飲みながら、 その酵母の生育状況をジョッキの上からマクロニッコール35mm F4.5で見つめるのも楽しい。 みず色のラインが美しいエナメルで入っている。こういう技にはまいってしまう。 私はこのレンズ、はっきりいって、スゴイと思う。小さいけどデカい。
信州で大人の夏休み。ニコンベロースPB-4にマクロニッコール35mm F4.5を搭載した。 これから遠くに風を聞く。

ニコンベロースPB-4に搭載したマクロニッコール35mm F4.5

イチゴとマクロニッコール

ニコンマルチフォト装置用に開発された4本のマクロニッコールレンズは質実剛健そのものである。 その中でもRMSスレッドをもった35mm F4.5と19mm F2.8の2本は実に可愛らしい。 イチゴに寄り添うマクロニッコールの姿は工業製品なのに工芸美術品の趣きがある。 そしてなによりもその存在に華やかさがある。

イチゴとマクロニッコール

純金色のRMSスレッドが美しいマクロニッコール

黒漆塗りのようなしっとりした風合のレンズ鏡胴

姿は小さいが4 x 5インチ判をカバーする頼もしいマクロニッコール

マウントアダプタのこと

とても重要なことなので、マウントアダプタのことを説明しておきたい。
ニコンの顕微鏡部門から大型マクロ写真撮影装置「マルチフォト」の付属品、 およびオプションとして、ニコン純正のマウントアダプタが2種類販売されていた。 それぞれ製品本体にはNIKONとかMADE IN JAPANなどの刻印は一切入っていない。 入っていないのが本物なのである。

その1つが、「L-F接続リング」。型番は MP J93040。
ライカL39スクリューマウントのレンズを ニコンFマウントのカメラやベローズ装置に装着するためのアダプタリングである。 ニコンが発行したマルチフォトの使用手引書に、図と共に「L-F接続リング」と明確に呼称され、 すべて「L-F接続リング」の表記で説明されている。 白い元箱には「マクロセツゾクリング」と印刷されているので、「マクロ接続リング」と呼ぶこともある。

もう1つが、「対物リング」。型番は MP J93050。
顕微鏡の対物レンズと同じRMSマウントのレンズを ライカL39スクリューマウントに変換するためのアダプタリングである。 ニコンが発行したマルチフォトの使用手引書に、図と共に「対物リング」と明確に呼称され、 すべて「対物リング」の表記で説明されている。 白い元箱には「マクロタイブツリング」と印刷されているので、「マクロ対物リング」と呼ぶこともある。

RMSマウントのレンズをニコン一眼レフにベローズ等を介して装着する場合には、 ニコンの純正品にこだわると、「対物リング」と「L-F接続リング」を併用することになる。

裏付けとした一次資料:
株式会社ニコン発行 大型マクロ写真装置 MULTIPHOTO 使用説明書
資料コード 28 (93.2.b) H-J-10R

2018年のあとがき

オリジナルのコンテンツは2001年10月当時に書いたものです。
RMSマウントのレンズのことは、このコンテンツを公開する前は、 ネット上ではほとんど知られておらず、情報もほとんど得ることができませんでした。
しかし、このコンテンツを2001年に公開した後から、大幅に様相が好転しました。 まず、情報が増えてきました。 さらに同じ興味を持つ方が多くおいでになることが見えてきました。 ネットオークションにもレンズの現物が多数登場し、モノの価値判断が固まってきたと思います。

2001年の公開当時は1枚きりだった画像ですが、 2016年の見直しにあたり、その後撮りためた画像を追加しました。 しばらくは過去の製品事情のまま掲載していましたが、さすがに情報そのものが古くなりましたので、 2018年の時点でみた実情と情報に合わせてコンテンツを組み立て直し、文章を書き直しました。

2018年現在、RMSマウントのマクロレンズは世界中の主要カメラメーカーから製造販売されていません。 そういう時代になったということです。 しかしながら、老舗名門のライカから80年以上昔のタンバール90mm F2.2が最新技術で復刻され、 タンバール M 90mm F2.2としてMマウントで世に登場する時代となったことも事実です。
RMSマウントのマクロレンズは中古品でしか入手できない困った事情が続いていますが、 またなにか動きがあるかもしれません。

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Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2018