FUJINON-M 38mm F5.4 Little Boy

FUJINON-M 38mm F5.4
A Huge Big Little Boy
FUJI PHOTO OPTICAL CO. JAPAN

フジノン-M 38mm F5.4

世間体を気にしないレンズ

ニッコールレンズではないが、お気に入りということで紹介したい。 フジノンである。フジノンでも、フジノン-Eではなくフジノン-Mだ。 小さくかわいい。絞り固定なので潔い。 フジノン-MのMは、マイクロフィルム用とか、そのあたりの専用レンズだと思っている。 手持ちの以下のフジフイルムの社史には記述がなく確認できていない。

     創業25年の歩み
     富士寫眞フイルム株式會社
     昭和35年(1960年)1月20日発行

     富士フイルム50年のあゆみ
     富士写真フイルム株式会社
     昭和59年(1984年)10月20日発行

フジノン-M 38mm F5.4

製造メーカーの一次資料や信頼できるデータが手元にないので、 レンズ構成図ほか性能諸元、それに製造年代や販売価格などすべて不明である。 重量を家庭用のデジタルスケールで実測してみた。 94.5gだった。 小さい見た目よりは重量感がある。

絞り固定。F5.4という世間体を気にしない生き方がうらやましい。 38mmという焦点距離も大胆である。もちろんライカL39スクリューマウント。 樹脂製の非常にがっしりしたケースに収まっている。

ニコンF3にフジノン-M 38mm F5.4

左は兄貴分のフジノン-M 50mm F7とフジノン-M 38mm F5.4

金属塊削り出しの重量感

拡大撮影用マクロレンズとして、意外と使いやすい。 フジノンが得意とする日本の光線をうまく表現してくれる。 パープルコーティングは硬質ではあるが、レンズの格を引き立てる。 小さく香気立つ。 しかしその金属塊を削り出した重量感と堅牢さには驚く。

フジノン-M 38mm F5.4
(撮影年は2001年11月)

このレンズ、市場で探そうとすると、まず出ない。 しかし、出たところで高価なものではない。むしろ安価ゆえに流通しない。 どうもやっかいなレンズであることには違いない。 気長にクラシックカメラ店の棚の隅をチェックするのに限る。

落ちついた佇まいのフジノン-M 38mm F5.4

名もなく美しく

こういった名もない知られていないレンズは、中古カメラ店の広告にも出ないし、 インターネット情報でも出てこない。 そういう、ある意味ではかなしい忘れられたレンズこそ、 本サイトでは取り上げねばならない。 RED BOOK NIKKORの存在理由およびコンセプトなのだから。

人は物好きと言うだろう。そう物好きだ。 しかし、知られていないことを開拓し、楽しみ方を創造するのが、 このクラシックカメラ趣味の原則だったはずだ。 地図にも出ていないような路地裏を歩くにはフジノン-M 38mm F5.4がお供だ。 その先にあるきゅうりの無人販売所にも風景がある。

名もなく美しいきゅうりにフジノン-M 38mm F5.4

気分爽快レンズ快晴

知られていないことを開拓し創造する。 そんな理念を忘れて、いくらで買った、いくらで売って儲かったなどと思想してはいけない。 ちょびっとなら、まあ、いいが。

さて、人知れず生きていたフジノン-M。 忘れ去られることが、道具として生を与えられたモノにとっていちばんつらいことだ。

気分爽快なフジノン-M 38mm F5.4

いつまで君を忘れない。そう想いながら、夏草をかきわけレンズを地上の空に向けよう。 ようようと大気がレンズを通し、なぜか気分が爽快になるから不思議だ。 なにもがんばっていない。がんばっていないことがスゴイ。 ここを誰も気がつかない。ここがだいじなのだが。

フジノン-M 38mm F5.4でレンズ快晴

フジノン-M 38mm F5.4による実写

フジノン-M 38mm F5.4はフランジ面より後ろ鏡胴が長い。 この長い後ろ鏡胴に一眼レフのミラーが干渉しないようにするには、 すこしゲタをはかせる必要がある。 作例は、BORGのM42ヘリコイドSシステムにM39アダプターを取り付けてフジノン-M 38mm F5.4をマウントした。
実写画像をクリックすると少し大き目のサイズの画像が出ます。

午後の明るい部屋に光線がふんわりとまわっていたので、 バナナを手でほくっとちぎり断面を観察。 フジノン-M 38mm F5.4を通してみるファインダー上のバナナの優美な映像には、新鮮な感動があった。

午後のバナナ

バナナの皮の美しい造形

焼きイモだって美しい

助六の海苔巻き

存在感をアピールするお稲荷さん

ニコン Z 写真帖

ニコン Z 6 にフジノン-M 38mm F5.4を装着した。 ニコンFマウント一眼レフの環境ではフランジバックが長いため無限遠が出せなかったが、 極端に短いフランジバックを有するフルサイズミラーレス機ニコン Z マシンの登場により、 接写のみならず、 数メートル先の近距離撮影から数百メートルレンジの遠距離撮影も余裕で可能となった。

FUJINON-M 38mm F5.4 on Nikon Z 6

ニコン Z 6 には市販の K&F CONCEPT製の M42 - Z マウントアダプターを装着。 さらに手持ちの M42-L39 変換リング(BORG製の OASIS 7844)を取り付けて、 カメラボディがL39ライカスクリューマウントになった。 おしりの長いフジノン-M 38mm F5.4 を装着しても、 撮像素子面に干渉することなく何ら影響を与えない安全で余裕の取り付けとなった。

Nikon Z 6 + M42 to Z + M42-L39 Ring + FUJINON-M 38mm F5.4

上に示す画像のとおりレンズをピッチリとねじ込むとオーバーインフとなる。 ねじをゆるめるとキッチリと無限遠が出る。 ヘリコイドのようにスムースにはいかないが、これでじゅうぶんに使える。

フルサイズだと四隅がほんのすこしケラレてしまう。 このレンズについてはすべてカメラをDXフォーマット(APS-Cサイズ)に設定して撮影した。

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 1600 F5.4 1/320 sec. -0.3

バナナと焼きイモの断面から助六寿司のアップばかりでは、このレンズのほんらいのパワーがわからない。 数メートル先の近距離レンジから中距離風景を狙うと、いきなりシリアスな精密描写全開となった。

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/640 sec. +0.3

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/800 sec. -0 +0

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/1250 sec. +0.3

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 1600 F5.4 1/400 sec. -0 +0

コンパクトだけどパワフル

小さくかわいいレンズである。 重量は 94.5gある。見た目よりも重量感がある。 ニコンのミラーレス機とも相性がよい。 外観はトイカメラのレンズのようにコンパクトだが実はパワフル。 小さい高性能レンズを気軽に持ち歩く気分はよい。

FUJINON-M 38mm F5.4 on Nikon Z 6

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/2500 sec. -0 +0

優れた解像力を有するフジノンレンズの精密な描写。 樹木の葉一枚一枚がピシッと解像している。 色彩表現も植物図譜のように正確である。

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/2500 sec. -0.3

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 800 F5.4 1/1000 sec. -0.3

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 400 F5.4 1/2000 sec. -0.7

FUJINON-M 38mm F5.4, ASA 200 F5.4 1/1600 sec. -0 +0

2020年のあとがき

このコンテンツのオリジナルは2001年11月に書いたものです。画像は1枚きりでした。 2016年のサイト移転に伴う見直しで接写の作例ほか新規に画像を追加しました。

2020年の改版では「ニコン Z 写真帖」として Z 6 による実写作例を組み込みました。 接写しかできなかった時には気が付きませんでしたが、 無限遠の撮影ではなんとも素直な描写で色彩はニュートラル。 こんな絞り開放の世界もあるのです。

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Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2020