MACRO NIKKOR 65mm F4.5 Yellow Line Strong Barrel Made by Nippon Kogaku Beautiful
Nikon Z 6 and Reversed MACRO Nikkor 65mm F4.5
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
Nikon Z 6 and Reversed MACRO Nikkor 65mm F4.5 ● 檸檬を置く気持ち 大型マクロ写真撮影装置(MULTIPHOT)のカタログは、見ているだけでも楽しい。 科学写真撮影セットというわけだ。 マルチフォトのカタログをひろげ、 専用レンズの説明の上に黄色いラインのマクロニッコール 65mm F4.5を 2本置く。 紀伊国屋書店で黄色い檸檬を置いた気分だ。 意味はないけれど、意味がない意味があるようだ。これが丸善だったらアナキストだが。
黄色いラインが美しいマクロニッコール 65mm F4.5 ● カタログも貴重なマルチフォト カタログは楽しい。 マルチフォトの存在は1971年頃に入手したニコン顕微鏡カタログで知っていたが、 まさかこのレンズを実際に所有し使うようになるとは思わなかった。 その当時は、まだ自分の一眼レフカメラさえも持っていなかった。 憧れて夢にみたブラックニコンFを自分のお金で購入できたのは、その後1973年のことだ。 その間はあの豪華なニコンカタログを全ページ暗記するくらい読みつぶした。 豪華なニコンカタログ。 日本光学は、買えるあてのない高校生にもこの豪華なカタログをくれた。 ここで脳髄までしみこんだ。 日本光学の長期戦略だったのかもしれない。 顕微鏡カタログはもっとすごい。本になっている。 本になった顕微鏡カタログを愛読した効果は、そのご、別な方向で実をむすぶ。 その話は、こんどということにしよう。
大型マクロ写真撮影装置(MULTIPHOT)の専用レンズ 簡易光学マークが入ったリアキャップと金属製のフロントキャップ ● サフランレッドのコーティング マクロニッコール 65mm F4.5は、前玉が小さくかわいい。 コーティングは美しい透明感のあるサフランレッド。どこまでも機能優先の様式美。 ここまで頑丈に作らなくてもいいのではと思わせるオーバースペックなハウジング。 レンズまわりのつや消し黒塗装は、顕微鏡対物レンズのそれである。 ニコンから正式にレンズの性能諸元が公開されていないため、レンズ構成図ほか不明である。 公知の範囲と実測できる数値データでまとめてみた。 マクロニッコール 65mm F4.5
−焦点距離: 65mm
−発売時期: 1968年
レンズのコーティングが美しいマクロニッコール 65mm F4.5 手元にあるレンズは3本とも後期型だが、製造番号が若いものは鏡胴の塗装にいくぶんツヤがある。 そのあとの製造番号のものは、ツヤを抑えた塗装になっている。 後期型なので、絞りプリセットリングのローレットが荒い。 オリジナルのニコン純正の L-F接続リングも後期型。 いくぶん手にソフトな軽合金製で、光沢を抑えた黒金属仕上げだ。 ● レンズはかわいいもの このレンズ、実物は思ったよりも小さくかわいい。 引き伸ばし機のレンズのようだ。 でも、その存在感はニッコールオートを見慣れた目からすると別格である。 小さくても、キリリと完結している。 日本刀ではないが、同じ素材で造った手のひらにのる小刀のようだ。 レンズを手にとると、見た目より重くかんじる。 ガラスブロックが重いというよりも、その全金属製の工作のよい鏡胴が重いことに気づく。
小さくかわいい高性能マクロレンズ 黄色いエナメルラインは目にあざやかであるが、 その黄色も黄色い黄色ではなく、果物のようなさわやかさがあり、 高性能レンズにふさわしい黄色なのだ。 赤いライン、みどり色のライン、金色のラインが入ったレンズはあるが、 黄色はカメラレンズでは見たことがない。 日本光学の顕微鏡部門が作ったレンズということは、この黄色いラインを見ればわかる。 ライカL39スクリューマウントの顕微鏡対物レンズと考えられないこともないか。
バナナとレンズのある風景 レモンだと小説になるが、バナナだと遠足になるのはどうしたことか。 美しい黄色のラッカー流し込みのラインの入ったレンズの鏡胴を並べてみた。
鏡胴にキリリと入った意識の高い黄色いラインが美しい
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド ● 最初の 1本を入手した時の話 このレンズは好きだ。気がついたらいつの間にか 3本になっていた。 集めたわけではないが、レンズの方から勝手に来た、ということにしておきたい。 マクロニッコール四兄弟のうち、初めて入手できたのがマクロニッコールは 65mm F4.5だった。
最初の 1本を入手した時の話。
1990年代初頭のパソコン通信が全盛の時代。
クラシックカメラ店で見かけたと情報を教えてくれたのは、有名なニコンコレクターだ。
その方は正統派なので、同じマクロ系レンズでも、
Sマウントのマイクロニッコールなど高価なコレクションを多数お持ちだ。
正統派コレクターの方に後押しされたけど、仕事ですぐには行けず、
やっとカメラ店に行けたのはウイークエンド。
みごとに誰にも相手にされず、ショーウインドーに残っていた。
東京は新宿での話だ。
お店の若い店員さんが言った。 「趣味と実益」。 これは無粋な言葉だ。趣味に益はない。労働ではないのだ。 代価を求めてはいけない。 と、リキんではみたが、まあちょっとならいいだろう。そこは大人だ。
道歩きにレンズの安全を祈願する ● 自然科学写真家のレンズ 黄色いラインのマクロニッコール 65mm F4.5。 「使える高性能レンズ」としてマニヤの間では人気がある。 拡大撮影する場合の倍率だが、ニコンが公式にアナウンスしている値は 3.5倍から 10倍だ。 拡大性能もお墨付きだ。もし市中でみかけたら、ぜひ確保してみてほしい。 このレンズによって、見えるものが見えてくる。 いままで見なかったもの見るきっかけとなり、 また別の人生を歩んでしまうというリスクはあるが、 それを承知でマクロニッコール 65mm F4.5を持つのは現代では必要だ。 見なくていいものを見ないで済むという幸せもあるが、 見なくてはいけないものを見ないで済ませる不幸もある。
自然科学写真家絶賛の超高解像力レンズ
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド 手にかわいい。カメラにつけて軽みを増す。しかし圧倒的な存在感。 持つだけで未踏世界の前を歩きたくなる。 そんな自然科学写真家絶賛の超高解像力レンズが、 マクロニッコール 65mm F4.5なのだ。自然科学写真家のレンズといえる。 ● マクロニッコール 65mm F4.5による実写
マクロニッコール 65mm F4.5の基準倍率は 5倍である。
であるからベローズ(本来はマルチフォト装置用の長い通称ロングベーローズ)
を介してレンズをカメラボディに装着するのが正しい作法なのだ。
しかしながら、ベーローズを介さず直付けして撮影しても独特のマクロ表現が可能となる。
黄色いバナナはいつの時代も元気だ 見なれたものが美しいマクロの世界 赤いイチゴのニュートラルな色彩 ● マクロニッコール 65mm F4.5による日本の桜 自然科学写真用のレンズを使って日本の桜を撮ってみた。 高性能マクロレンズが持つ特有の、精密ではあるがゆるい描写が実感できた。 なによりもボケがおだやかで美しい。 格調高い日本画ふうの色彩をともなう色乗りがよい。 空間の間と空気が写るのはあたりまえであって、さらには情況が写っている。 日本の桜木にはマクロニッコール 65mm F4.5。 ここだけの話であるが、ほんとに気立てのよい純情なレンズなのである。
桜の頃のすこし遠くが見える空気感 日本画の蛤胡粉のような格調高き白色 科学写真用マクロニッコールの清楚な描写 透過する陽光の下で輝く静寂な時間 太古から続く生命が写るレンズの純情 以上ここまで基準倍率が 5倍のマクロニッコール 65mm F4.5を使って、 倍率 1/3倍程度のゆるいゆるゆるのマクロ撮影画像を見ていただいた。 本来の質実剛健で硬派な本格的科学写真とか医学標本写真、 さらには警察鑑定資料としての写真撮影技術とはまったく離れた花鳥風月。 豊かな諧調。ゆったりとしたレンズのボケ味。むかしの空気感の記録。 さらには日本の伝統色の微妙な表現にも適した色再現性。 産業用レンズの隠れた映像表現能力をご確認いただきたい。
プリンシプルがあってシンプルでプリミティブなものは美しい ● ニコン Z 写真帖 ニコン Z 6 にマクロニッコール 65m F4.5をリバースして装着した。 そう書くとたった一行で済んでしまうが、一眼レフの時代では実現できなかったことなのである。 ニコン Z シリーズなど、フランジバックの短いミラーレス一眼機の出現により、無限遠での撮影が可能となった。 マクロニッコール 65mm F4.5 はレンズをリバース、逆さまにカメラに装着することで無限遠が出る。 しかも極めて鮮鋭な映像を結ぶ。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド ● マクロニッコール 65mm F4.5 リバースの世界 ニコンのミラーレス一眼機(ニコン Z 6 )を導入してから、さまざまなレンズで試してみる機会が増えた。 一眼レフの時代にはマクロニッコール 65mm F4.5 レンズでは接写しかできなかったが、いや、そもそも、 ほんらいの使い方は拡大撮影専用のマクロレンズなわけであるが、そこは可能性を探りたかったのである。 レンズをリバースしてみるのは、この種のレンズのお約束なのであるが、 ある時ニコン Z 6 にマクロニッコール 65mm F4.5 を試しにリバースして装着した時に、 無限遠や中距離の被写体が極めて鮮鋭に結像することに気が付いた。これには驚いたものだ。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed マクロニッコール 65mm F4.5 では従来は使われなかった中距離レンジの被写体を選んだ。 約 4メートル程度先のところに合焦している。 撮影はすべて SCALE=1(目盛 1)。レンズ開放絞り F4.5での映像である。 撮影はすべてカメラ(ニコン Z 6 )にまかせた。 絞り優先のオート(A モード)。JPEGの撮って出しでこれだ。 極めて高精細で情感のある画像が出てきた。そのままの新鮮な映像である。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed ニコン純正の 40.5mm - L39 リバースリングを使ってレンズをリバースしている。 リバースしたレンズの前玉(実際にはレンズのマウント部)がライカL39スクリューマウントのままなので、 L-F接続リングとニコン BR-3リングで 52mmフィルター径を確保し、 52mm L37c フィルターとレンズフードを装着した。 深めの長いフードだと画像の四隅にケラレが出るので短めの HN-3フードを選んだ。
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド ● 山茶花のある風景 マクロニッコール 65mm F4.5 と言えばレンズをリバースして使う。 もうこの作法を覚えてしまうと後戻りができない。 等倍以上の拡大撮影に特化して専用設計されてレンズのはずだが、 究極の縮小撮影たる無限遠において最高出力をかるがると出してしまう、 基本ポテンシャルの極めて高いレンズまる出しなのである。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 以下はすべてレンズ開放絞り F4.5 で撮影した。 この種のレンズはレンズ開放で解像力が発揮され鮮鋭度の高い絵が撮れる。 また色彩再現性も極めて良好である。 日陰のなかの山茶花の赤と緑色の背景がリバーサルフィルムで撮影したようにリアリティがある。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed マクロニッコール 65mm F4.5 らしい描写といえばこれだ。 科学写真は鮮鋭に写っていないと話にならない。 ソフトフォーカスで軟調の植物図鑑はないだろう。 識別同定のためにも茎の産毛がしっかり解像していることが命だ。 警察鑑識写真にはレンズのボケ味はお呼びでないのだ。 虫食いのある葉っぱに毛虫の歯形が写るくらいでないと仕事にならない。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 少年少女用の野球グランド。土日週末はにぎやかだ。 木曜日のベンチには誰も座わっていない。風の音だけの午後。 フェンスには盛大に落ち葉が積もっている。 葉っぱの一枚一枚がよく解像している。 ちゃんとピントの合うレンズを使わないと気配は写らない。
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+M42ヘリコイド 問題意識のない散歩歩きにはこんな小さいカメラに小さいレンズが似合う。 見た目からして小さいレンズではあるがターボジェットエンジンを超えるパワーを持つ。 ちょうどμ10イオンエンジンにストラップを付けて首から下げて歩いているようなものだ。 例えが飛躍して意味不明であるが、ハイパーナチュラルな気分が出ればそれでよい。 ● 写真は花鳥風月にかぎる 時局は時節がら過激なタイトルを設定した。 マクロニッコール 65mm F4.5。瞳オートフォーカスとは無縁の世界で仕事をする。 並、中、竹、普通を超えていこう。よく見るだけでいいのだ。 人間世界の周りには、質感に風合い、形状、もちろん色彩、 そしてマイクロコントラスト特性の詳細など、目に見えない小さな世界がある。 マクロニッコール 65mm F4.5ならその世界に連れて行ってくれる。
マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
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マクロニッコール 65mm F4.5リバース+ M42ヘリコイド
ターボジェットエンジンを超えるパワーを持つ 無限遠のマクロニッコール 65mm F4.5レンズは、 あのプレミアムレンズの頂点に立つ御三家の一本はプリンティング・ニッコールのように、 端から端までシャープかつ圧倒的な画質と情報量でフレームを満たしてくれる。 ダイナミックな自然ランドスケープ、華麗な花から寡黙な野草まで。 旅の途中の美味グルメ写真、広告界だったら撮影が難しいジュエリーや時計、工業製品プロダクト。 さらには野生動物、突き詰めればポートレート撮影でも、 マクロニッコール 65mm F4.5はイメージしたビジョンを並外れたものに変えることができる。 ● 2023年のあとがき 本記事のオリジナルは2001年11月に書いたものです。 画像は 1枚きりで簡単な文章を添えたものでした。 2016年のサイト移転に伴う見直しで新しい画像を多数組み込みました。 2017年には実際にマクロニッコール 65mm F4.5で撮影した画像を入れました。 2020年の改版では「ニコン Z 写真帖」として Z 6 による実写作例を組み込みました。 レンズをリバースして撮影した実写画像をご覧ください。 2021年には M42ヘリコイドを入れた撮影スタイルを紹介しました。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2023 |