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MACRO NIKKOR 65mm F4.5 Nippon Kogaku Tokyo LENS MADE IN JAPAN
![]() Nikon Z 6 and Reversed MACRO Nikkor 65mm F4.5
![]() MACRO Nikkor 65mm F4.5 and Nikon Z 6 ● 檸檬色 日本人の感覚だと、レモンはフレッシュでポジティブなイメージを持つ。 すでに昭和初期にはキリンレモンが販売されていたとかで、かなり昔からなじみ深い。 レモン色というよりも、檸檬色と漢字で書きたい気分にさせるのは、 マクロニッコール 65mm F4.5の鮮烈な帯の色である。
![]() 美しい檸檬色のラインのマクロニッコール 65mm F4.5 ● 使いやすい特殊ニッコール コスモスの群生が目にまぶしい。高原の冷気も昼間はおだやかだ。鳥も風。 一眼レフカメラには小さく軽いマクロレンズがほしい。 私がほしいマクロレンズは、このサイズだ。 明るい必要はない。65mm F4.5のなんとも、たおやかなスペック。 使い勝手は抜群によい。小生物から植物もこなす。 私はまだ試したことはないが、 鉱物の撮影では極めて良好な画像を叩き出すと、その道の達人から何回も聞いている。
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コスモスにマクロニッコール 65mm F4.5 上の画像にはジャギーが出ている。 ジャギーと言っても今どきでは何のことかわからないだろう。 昔の画素数の少ないデジタルカメラで斜め線状のような部分を含む被写体を撮ると、 斜めが階段状にギザギザに写ったものだ。 斜め角度によっては出ないので工夫して撮影した記憶がある。 はるか昔の2001年当時に撮影し画像品質はよくないが、 当時のジャギーが出ている画像の実例として残しておくことにする。 Nikonの銘板の上に典型的なジャギーが出ている教材である。 ● 周辺光量低下なしの農学部レンズ マルチフォト(大型マクロ写真撮影装置)用に専用設計されたレンズの 1本である。 高解像力マクロニッコール 65mm F4.5。 もちろん大判カメラ(4×5インチ判)で拡大撮影に必要な性能をそなえている。 周辺光量低下なし。像も均一だ。 細胞の組織写真が専門なだけに、精緻な描写にはしびれてしまう。 ニコンから正式にレンズの性能諸元が公開されていないため、レンズ構成図ほか不明である。 重量だけは実測できるので、家庭用のデジタルスケール(TANITA KJ-114)で調べてみた。 サンプルは手持ちの 3本。いずれも後期型である。 製造シリアル番号 67000番代が 176.0g。 68000番代が 185.5g。 もう 1本の 68000番代が 185.0g。 見た目は同じだが 10グラム程度の差がある。 公知の範囲と実測できる数値データでまとめてみた。 マクロニッコール 65mm F4.5
−焦点距離: 65mm
−発売時期: 1968年
![]() 田植えにもマクロニッコール 65mm F4.5 たぶん、大学の農学部あたりでは、まだまだ現役で使われていることだろう。 水産試験場の設備では、 エビの子供の生態写真もカラーで最高のパフォーマンスを引き出している。 生物系の白衣を着た先生方がくつろぐ研究室にもピッタリ。 そしてフィールド撮影もOK。楽勝だ。田植えが終わった雨上がりの水田。 稲の生育記録には、一眼レフカメラやハイエンド・ミラーレス機に装着して軽快にマクロ撮影が楽しめる。 ● 山に入る自然科学写真家にも似合う レンズを極小動物に向け、 大地に天空をながめる時間があることの幸福をかんじるのは正しい。 マクロニッコール 65mm F4.5。 盆栽愛好家や、透明な水を愛する水草ファン。 そして、山道を歩いて山に入る自然科学写真家には必携の軽快な超高解像力レンズだ。 オーバースペックだってかまわない。
![]() 山道を歩く自然科学写真家はマクロニッコール 65mm F4.5 ● めじるしは黄色のライン 黄色いラインがエナメル塗料で入った、美しく均整のとれたマクロレンズ。 ほんらいは、長さ 60cmのロングベローズ(長蛇腹)に取り付けて 35ミリ撮影もこなす。 ニコンのカメラ用ベローズ装置にもなじむ。 マクロニッコール 65mm F4.5は、ライカL39スクリューマウント。 L-F接続リングを介してかんたんに Fマウントに装着できる。 おもいきりベローズを伸ばして使いたい。 長さ 60cmのロングベローズでもらくらく仕事をこなす、ウルトラパワーを持っているのだから。 手軽で超高性能が手に入るマクロレンズとして、マニヤの間でも人気がある。
![]() 超高解像力レンズマクロニッコール 65mm F4.5 めじるしは黄色のラインのマクロニッコール 65mm F4.5 そしてバナナイエローなマクロニッコール 65mm F4.5
![]() マクロニッコール 65mm F4.5リバース+M42ヘリコイド ● 夜の雪にマクロニッコール 65mm F4.5
首都圏は東京23区に大雪警報(積雪 20センチ)が出た夜。
![]() 夜の雪 主演はマクロニッコール 65mm F4.5
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星空のような雪の結晶が降る ● マクロニッコール 65mm F4.5による実写 一眼レフカメラやミラーレスカメラに簡単に装着して軽快に撮影できるのが楽しい。 やはり接写といわれる分野の写真にはめっぽう強い。 レンズは開放にしても F4.5で一般的には暗いレンズとなるが、 ピントのめりはりがあって、撮影はとても楽である。 レンズは極めてシャープで精密な描写を得意とする。 が、しかし、背景のボケが優しくなめらかで、上質のマクロ撮影用レンズといえる。 マクロニッコール 65mm F4.5の基準倍率は 5倍。 ベローズ(本来はマルチフォト装置用の長い通称ロングベーローズ) を介してレンズをカメラボディに装着するのが正しい作法だ。 しかしながら、ベーローズを介さず直付けして撮影しても独特のマクロ表現が可能となる。
![]() 手近にあった黄色を撮影してみた
![]() ブロッコリーの黄色い花
![]() 日本画の天然岩絵具のような落ちついた色彩表現 風が冷たい空気感とか昔の音が聴こえてくる 科学写真用マクロレンズ独特の華麗なボケ味 レンズは暗くても明るい情景が映る 気立てが良く素直でそして美しいレンズを実感 昭和の日本映画のような色彩と情況 基準倍率が5倍のマクロニッコール 65mm F4.5を使って、 倍率 1/3倍程度のゆるいゆるゆるのマクロ撮影をしてみた。 クルマに例えると、時速 350キロを軽く超える F1カーで、 時速 15キロでノロリと動いているようなものであるが、 それでも趣きのある絵が叩き出せた。 あえて基準外の撮影条件で、日本情緒が表現できる使い方をしてみた。 本格派科学写真家の方は、本来の倍率範囲で鉱物などを撮影すれば、 カチンカチンの壮絶解像力と描写を実感できるはずだ。 ● ニコン Z 写真帖 ニコン Z 6 にマクロニッコール 65m F4.5を装着した。 流行りの大口径レンズだとファッションとなるが、 暗い小さいレンズだときわめて地味で目立たない。 しかしながらこの圧倒的な存在感はどうだ。 ミラーレス機がコンパクトな高性能写真機になる。 科学研究、学術調査、探検記録、警察鑑識、数値計測、雪月風花なんでもこいである。
![]() MACRO Nikkor 65mm F4.5 on Nikon Z 6 ニコン Z 6 には市販の L39 - Z マウントアダプター(税込み 3,800円)を装着。 カメラボディが L39ライカスクリューマウントになった。 そのままではオーバーインフで合焦しないので、 ニコン純正の EL ニッコール・エキステンションリングを入れて少しゲタを履かせた。 この状態でマクロニッコール 65mm F4.5を装着。 Nikon Z 6 + L39 to Z + EL Extension Ring + MACRO 65mm F4.5 ● みかんベンチマーク マクロニッコールはマルチフォト装置用に専用設計されたレンズであって、 マルチフォトのステージ(載物台)に標本を置き撮影するスタイルが前提だ。 カタログに掲載された写真は、膜状薄切りの病理標本であったり半導体集積回路の回路パターンであったり、 平面に近い被写体が多い。 しかし立体物の撮影においてもすでに画像を示しているとおり極めて良好な画像を叩き出す。 それではと元気で育ちのよい健康的なみかんでベンチマークを敢行した。 マクロニッコール 65mm F4.5の鏡胴には目盛が刻まれていて、1から 6までの数字が刻印されている。 目盛 1は絞り開放(F4.5)となる。目盛 6で最小の絞りとなる。 画像データは SCALE=1 で目盛 1 、SCALE=4 で目盛 4を示す。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 SCALE=1(目盛 1)はレンズ開放の F4.5である。 合焦している面以外の深度から外れた空間にはゆるやかなボケが生成されている。 航空写真偵察や警察鑑定写真にボケは似合わないが、 花鳥風月や白砂青松など趣のある写真作品作りには、 SCALE=1(目盛 1)の絞り開放がよいだろう。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 この撮影環境、つまり被写体との距離、日中の室内自然光線下での撮影条件で、 ざっくりと計算してみたところ、 SCALE=4(目盛 4)だと F11位の絞り値になっているようだ。 また、SCALE=6(目盛 6)だと F22位の絞り値になっていると思える。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 画像 2枚目のSCALE=4(目盛 4)が、この 3枚(3条件)ではいちばん解像しているように見える。 それぞれすべての目盛(絞り)において、いろいろな試料で実験する必要がある。 その中で最適解を見つけたい。しかし困ったな。また楽しみが増えてしまった。 ● レンズをリバースする 一眼レフの時代では実現できなかったが、ニコン Z シリーズなど、 フランジバックの短いミラーレス一眼機の出現により、無限遠での撮影が可能となった。 マクロニッコール 65mm F4.5 はレンズをリバース、逆さまにカメラに装着することで無限遠が出る。 ニコン純正の 40.5mm - L39 リバースリングを使ってレンズをリバースした。 リバースしたレンズの前玉(実際にはレンズのマウント部)がライカL39スクリューマウントのままなので、 L-F接続リングとニコン BR-3リングで 52mmフィルター径を確保し、 52mm L37c フィルターとレンズフードを装着した。 深めの長いフードだと画像の四隅にケラレが出るので短めの HN-3フードを選んだ。
![]() レンズをリバースして装着
![]() マクロニッコール 65mm F4.5の撮影スタイル なかなか精悍な姿である。やる気十分な佇まいがよい。 レンズを順方向に装着した姿とくらべると、だいぶ印象が異なる。 これで写りが良いのだから文句なしと言える。
![]() マクロニッコール 65mm F4.5リバース+M42ヘリコイド ヘリコイドがあればかなり操作性は向上する。 ごく薄い M42マウントアダプターで、ニコン Z マウントを M42スクリューマウントに変換。 そこに手持ちの BORG製 M42ヘリコイドを入れた。 ヘリコイドの先レンズ側はライカL39スクリューマウント。 無限遠からかなりの近接撮影が可能となる。 ● マクロニッコール 65mm F4.5 リバースの世界 中距離レンジの被写体を狙ってみた。約 4メートル程度先のところに合焦させてみた。 撮影はすべて SCALE=1(目盛 1)。レンズ開放絞り F4.5での映像となる。 なにも凝らずにすべてカメラ(ニコン Z 6 )にまかせた。 絞り優先のオート(A モード)での撮影である。JPEGの撮って出し。 いきなりジェットエンジン出力全開の高精細、超高解像力まる出しの画像が出てきた。 余計なお世話の過度なレタッチやら画像調整一切なし。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 明暗差のコントラストが大きいシーンを撮影してみたが、手前の草木の暗部はつぶれずに鮮明に解像している。 ダイナミックレンジが広くて豊かな厚みのある劇場用大出力真空管アンプのような描写と言えるだろう。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed もともと、科学標本撮影用、学術調査御用達のレンズである。 色彩はどこまでもニュートラルかつクリアでで可視光線下の波長記録に忠実。 その姿は小さく暗いレンズではあるが基本性能に優れたポテンシャルとパワーは素晴らしい。 風を切る新緑のみどりの瑞々しさと生命感がよく出ている。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 幸運にもこのマクロニッコール 65mm F4.5 をお持ちの方は、 マクロ系の拡大撮影のみならず、ぜひともリバースして無限遠とか中距離レンジの撮影を試していただきたい。 こんなに優れた光学性能を持っていたのかと驚くことだろう。
![]() MACRO Nikkor 65mm F4.5 and Nikon Z 6 ● マクロニッコール 65mm F4.5 で晩秋を撮る マクロニッコール 65mm F4.5 はリバースすると無限遠が出せることを経験してしまうと、 いつもリバースして無限遠から中距離レンジの絵ばかり撮影している。 これも長きに渡り、一眼レフではフランジバックの関係で無限遠が出せなかったからだ。 その反動で拡大撮影専用のマクロレンズなのに縮小撮影ばかりなのである。
![]() Nikon Z 6 and Reversed MACRO Nikkor 65mm F4.5 ジャケットのポケットに柿を1個。柿を置く場所を探して歩いた。 ここに置くしかない。柿は奈良県産の富有柿である。 ニッコールレンズと相性がよい。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 絞りはすべて開放の F4.5 で撮影した。 マクロニッコールの鏡胴にある目盛数字の 1 (SCALE=1)に合わせた。 レンズ開放でこのキレのよさ。キレッキレなのである。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed デイライトのコダクローム 25の発色が懐かしい。 とにかく重厚な色彩で赤と黄色が重たくブリリアントでゴージャスだった。 すこし露出をつめるのがお約束だったと思う。 あの色彩を再現したくて露出をつめてみた。そうだこんなかんじだ。
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed
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MACRO Nikkor 65mm F4.5 Reversed 写っている。写ってしまった。 日常の中にある空間領域の区切り設定を見た。 この種のレンズは「結界」を映し出すことができる。 もともと科学写真用のレンズなのでそのあたりは標準で備わっている。 分かる人だけ気が付けばいいので性能諸元などテクニカルデータには出ていない。
![]() Nikon Z 6 and Reversed MACRO Nikkor 65mm F4.5 ● 科学写真家向け万能レンズ マクロニッコール 65mm F4.5は、もう完全にマルチフォト装置から離れて、 レンズとして一本立ちしたと言える。 高性能ミラーレスカメラ、ニコン Z 9 をはじめとした、 ニコン ゼットシリーズにマクロニッコール 65mm F4.5をリバースして装着。 M42ヘリコイドも入れた。 科学写真用の万能レンズが実験室・研究室から外に出て、どこにでも持ち出せる。
![]() マクロニッコール 65mm F4.5リバース+M42ヘリコイド
![]() 季節に潜むマクロニッコール 65mm F4.5
![]() 科学写真家向け万能レンズ どこに行くにも研究室グレードの超高性能レンズを携行できるメリットは大きい。 重量はたったの 180グラム程度。小型軽量なので山岳写真にも最適だ。 海外は古代文明遺跡の学術調査にも必携。 なにせ顕微鏡クラスの接写から壮大な自然まで軽くカバーしてしまう。 しかも高精細精密描写。情報量が格段に多い。 そこまでいかないまでも、 日本の情緒、風景、空気を写すにはこの一本でいいんじゃないか。 高尾山からエベレスト。多摩川からナイル川。 そして伊豆高原からゴラン高原まで、その活動範囲は無限だ。写真が自由になった。 ● 2023年のあとがき 本記事のオリジナルは2001年10月当時に書いたものです。 画像は 1枚のみ。簡単なものでした。 2016年のサイト移転に伴う見直しで画像を大幅に追加しました。 2017年には一眼レフによる作例を、2018年には雪の夜の画像を追加しました。 2020年に「ニコン Z 写真帖」として Z 6 による実写作例を組み込みました。 レンズをリバースして、 新鮮な緑色が爽やかな初夏と枯葉色の晩秋の色彩を撮影しました。 2021年には M42ヘリコイドを入れた撮影スタイルを紹介しました。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2023 |