More powerful than a locomotive! Able to leap tall buildings in a single bound! It's Super Lens! It's MACRO Nikkor 12cm F6.3!
MACRO Nikkor 12cm F6.3 and Nikon Z 6 ● スーパーレンズ 「弾よりも速く、力は機関車よりも強く、高いビルディングもひとっ飛び!」。 10代、20代の方には意味不明のキャッチコピーだと思うが、江戸時代の話で恐縮である。 テレビでスーパーマンを見ていた。 日本では1956年(昭和31年)11月から放送されたらしい。 リアルタイムで覚えている。 年齢的にも記憶が残っている最初期のはずだが、記憶は鮮明だ。 それ以外は覚えていない。昨日のことも忘れた。 私はガンダム世代ではない。テレビでアニメが放送されたのが1979年(昭和54年)4月だとか。 当時すでに金属製のアタッシュケースを常に持った技術系会社員となっていた。 大人の私はもうアニメを見ることはなかった。 この頃小学生だった男子はいまでも熱狂的ファンのままだ。いまは50歳代だろうか。 語るアイドルで年齢層がわかる。 さて、レンズのスーパーマンの話である。 ● オオムラサキ色の涼紫光 夏涼しい軽井沢の小さい森に三脚を立て、レッドラインニッコールを風に向けた。 静かだが、レンズは木々を通して遠景を見ている。 ニコンの旧型のベローズ装置はニコンPB-4。 あおり機構が組み込まれているので、たのもしい存在だ。
アメジストパープルコーティングのレンズ前玉 このレンズのコーティングを見てほしい。 現代ではもう作れない深く硬質のアメジストパープルコーティングはオオムラサキの羽根の色。 しみじみと、しみじみと、しみぢみ涼紫光。
ベローズをほぼ伸ばしたこの状態で等倍(撮影倍率1倍) ● ぜいたくな山岳レンズ
見得を切るマクロニッコール12cm F6.3の立ち姿にマクロ派も納得 マクロニッコール12cm F6.3は、ライカL39スクリューマウントである。 L-F接続リングを介してかんたんにFマウントのカメラに装着できる。 ベローズや中間リングなどを併用することにはなるが、無限遠がきちんと出る。
シンプルなレンズにニコンベローズPB-4 このレンズ1本で、山岳写真も、人物群像も、もちろんマクロ撮影までこなす万能レンズ。 もともと大判カメラ(4×5インチ判)用のレンズなので、イメージサークルは巨大である。 それを35ミリ一眼レフカメラで使う。なんともぜいたく。 ぜいたくな時間はシンプルなレンズできまる。
ニコンベローズPB-4の使い方(水平作法) ● センチ表記のプライド ふと旅に出たくなるレンズがある。 こういうストイックでオーバースペックなハイエンドレンズをバッグに入れてしまうと、 蒸発してしまいそうになるので要注意である。
いろいろ設定してみてベローズ操作に慣れるのが重要 時代は1990年代に入っても、 最後の最後まで頑固にセンチ表記をしていた唯一のニッコールレンズであることをここに記しておきたい。 日本光学スピリットをひそかに残した、意地とプライドの現れだ。 赤いラインのレッドラインニッコール。 万能レンズとしてマニヤの間でも隠れた人気がある。評価も高い。 山岳写真家と自然科学写真家には必携の超高解像力レンズだ。
ニコンベローズPB-4を駆使した自由なマクロ拡大撮影の楽しみ
奥が深いニコンベローズPB-4の機能
木陰にいてもさまになるニコンベローズPB-4 ● 街の中でも大活躍 小型で軽量なカメラの装備は、街の中でも軽快で、フットワークよく活躍できる。 ニコンの古い一眼レフカメラならば、マクロニッコール12cm F6.3がよくなじむ。 夏休みは八月の東京リバーサイドをカメラを持って佃から月島へと歩いた。 首都圏に住むクラシックカメラファンならば、よく知られている場所にカメラを置いてみた。
風の卵と八月の夏景色 昔話か解説気味な話になるが、背景の銀色のラグビーのボールのような物体は、 写真家の田中長徳さんが当時主宰されていたカメラファンの集い「アルパ研究会」 の会場としていた集会場があった建物の入口にあるモニュメントである。 建物の名は大川端リバーシティ21。都内は大江戸線の月島駅のすぐ近く。 この画像はアルパ研究会に参加した時に撮影した。 モニュメントは正式には「風の卵」と名前が付いている。 設計したのは、日本を代表する世界的な建築家の伊東豊雄氏。 氏は建築界のノーベル賞といわれるブリッカー賞を受賞している。 「風の卵」は1991年の作品。
古いニコンカメラにマクロニッコール12cm F6.3 ● 撮影作法 マクロニッコール12cm F6.3はベローズに装着してカメラにマウントするのが標準的な使い方だが、 ベローズを使わずに無限遠が出るセットを春の草陰に置いてみた。
自然科学写真家のためのマクロニッコール12cm F6.3 ライカL39スクリューマウントをニコンFマウントに変換するために、 BORG製のM42ヘリコイドシステムを使用した。 長さが足りないので延長筒の代わりに手元にあったマイクロニッコール用のM2リングで伸ばす。 これでピタリとフォーカスが出る。
40.5mm NC フィルターとレンズフード HN-N103 レンズ先端には40.5mmのステップアップリングを装着。 この40.5mmステップアップリングは2003年に専門家に造っていただいたプライベート特注品 (マクロニッコールの特殊なネジ径38mm P=0.5を40.5mm P=0.5に変換)。 フィルターとフードは「Nikon 1」シリーズ用の現行品をセレクト。 40.5mmニュートラルカラー NCフィルターとねじ込み式レンズフード HN-N103 を付けている。 まるでマクロニッコール用に用意されたのではと思えるほどピタリときまる。 ベローズを使う場合はどうしても三脚が必須となるが、 こういった軽みのセットであれば手持ち撮影が可能なので軽快な写真散歩となる。 マクロニッコールが装着されたマルチフォト装置は研究室とか実験室の住人だった。 でもこうやって、その高性能マクロ専用レンズだけでもフィールドに持ち出し、 自然光線下で気軽に撮影を楽しむのはレンズのためにもよいだろう。
春の草陰の中で渋く輝く赤帯レンズ このローアングルで、地べたに寝ころび、 なあんにも考えていないようにみえる無名の草草の生命体と対峙すると、 まだ旅の途中のような気がして、 じゃあ白鶴の熱燗二合で思想しようが、 キンミヤでスノッブな気分に浸るのもよし、 どういうわけか今は珍重されているザ付きのロイヤルハウスホールドのお湯割りでいくという、 スケールの小さい決意表明が冥王星の軌道の先の希望であって、 きのうの現実とあしたの彼岸は見えないだらう。 さてこれを、googleの外国語翻訳で、日本語からラトビア語やボスニア語に変換している皆様各位にはすみません。 この日本語言語の周波数ずれ気味の、地球の重力から離れたことばは意味不明になってしまうと思う。 ● ニコン Z 写真帖 フィルム式の古いニコン一眼レフカメラからフルサイズミラーレス機に暗箱を変えてみた。 ニコン Z 6 にマクロニッコール12cm F6.3を装着した。 レンズそのものが軽いので全体的に身軽な撮影セットとなっている。 すこし距離感のあるシーンを撮影してみた。 以下のスタイルで無限遠が出ている状態。
MACRO Nikkor 12cm F6.3 on Nikon Z 6 ニコン Z 6 にはニコン純正のFTZマウントアダプターを装着。 カメラボディがFマウントになったので、ニコンの接写リングM2で延ばしてBORGのM42ヘリコイドを入れた。 BORGのM42ヘリコイドのカメラ側はニコンFマウントで、 レンズ側がライカL39スクリューマウントにセットしてある。 そのままマクロニッコール12cm F6.3を装着。 Nikon Z 6 + FTZ + M2 + BORG M42 (F to L39) + MACRO 12cm F6.3 レンズには特注の 38mm - 40.5mm のステップアップリングを取り付け、 ニコン純正の40.5mm NCフィルターを付けた。 さらにマルミ光機製の 40.5mm - 52mm のステップアップリングを取り付け、 ニコンF時代のフードを装着した。 ● 清楚で可憐な写り 大学の研究室か科学写真家のスタジオに設置するのがほんらいの姿だろうが、 大型の写真装置筐体から外してレンズだけだと撮影行は軽快である。 マクロニッコール12cm F6.3の清楚で可憐な写りを見ていただこう。 そもそも今の時代に「清楚で可憐」は死語となった。 昭和30年代までは存在していたらしい。 レンズの絞りはすべて目盛り3(SCALE=3)に固定して撮影した。 絞り優先オート(Aモード)にしてあとはニコン Z にまかせた。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 JPEGの撮って出しである。手を出したのは撮影時の露出補正だけ。 光線の具合がブリリアントになってきたのでやや逆光気味に。
MACRO Nikkor 12cm F6.3 桜花見シーズンの青空背景。まだ冷気が残るスコーンとした発色。 コダクローム64のような総天然色のヌケのよい映像。清楚で可憐な写り。健康的である。
MACRO Nikkor 12cm F6.3 ● 精細で図太い写り 優れたレンズの描写表現として「線が細い写り」というのがある。 ならば「線が太い写り」もあってよいだろう。 たんに太いだけだとピントの甘いべたりとしたレンズとなるが、 図太い写りに昇格させたい。 さらには精細を加えて「精細で図太い写り」となると話は別だ。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 自然科学写真家の方ならばマクロニッコール12cm F6.3一本でいいのではないか。 木肌から木の存在感、そして気配までが写る。 発色はもともと科学標本撮影用のレンズなのでニュートラルでくせがない。 図鑑製作用の精密撮影にもピタリ。「精細で図太い写り」そのものである。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 and Nikon Z 6 ● 重厚な色彩表現 黄色の発色がデイライトのコダクローム25を彷彿させる。 どこか記憶に残っている総天然色カラーである。 銀杏の大木に落ちている色彩をマクロニッコールで拾い集めて絵にしてみた。 絞り目盛りを1にセットした。SCALE=1、つまり絞り開放の F6.3 である。 以下すべての写真は絞り開放の F6.3 で撮影した。 絞り開放の F6.3 が最も鮮鋭に写るようである。
MACRO Nikkor 12cm F6.3 日向のにおい。 更紗サラサラと乾いて走る音。 風が冷たい。 そんな情景描写した絵が叩き出された。 このあたりはマクロニッコール 12cm F6.3 の得意とするところだ。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 水の流れが透明である。 沈んだ落ち葉が日本の色彩設計通りの微妙なゆらぎ。 手にしていたカメラをそっと落ち葉の上に置いたら、 いっせいに太陽からの粒子が勢いよく励起され、 ルミエールに露出3段オーバーの光エネルギーを発したのをみた。
MACRO Nikkor 12cm F6.3 and Nikon Z 6
MACRO Nikkor 12cm F6.3 誰もいない野球グランド。それでもベンチはいつもの顔だ。 その先を行くと昭和感漂う雰囲気のあるハウスがすこしばかり異空間を構成していた。 バウハウスのデザインかもしれない。可能性はきわめて低い。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 鉄橋に京王線。 大正三年から続く多摩川の治水事業。百年を超えて整備には終わりがない。 国土交通省関東地方整備局がまじめに仕事をしていた。まじめで地味な仕事がこの国をつくる。 いつもはカヌーが走る水面に工事用船舶は色鮮やかだった。
MACRO Nikkor 12cm F6.3
MACRO Nikkor 12cm F6.3 and Nikon Z 6 レンズが一本。この軽快な装備でサクサクと撮影が進んだ。 地上最強の焦点距離が120ミリの本格派科学写真用マクロレンズ。 開放絞りで F6.3 という立派に暗いレンズがありがたい。 撮影行の友は橙色が美しい静岡産の治郎柿。 ● 2021年のあとがき この記事のオリジナルは2001年10月に書いたものです。画像は1枚きりでした。 2016年のサイト移転に伴う見直しで新たに撮影したベローズ姿の画像など追加しました。 2017年には春の草陰に佇む身軽な撮影セットの姿画像を入れました。 2020年の改版では「ニコン Z 写真帖」として Z 6 による実写作例を組み込みました。 ストレートに撮影した中距離レンジの映像は、精細かつ力強い写りでした。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2021
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