マクロニッコール35mm F4.5 ● 新宿サービスセンターへ行く 2001年11月のこと。東京・新宿。新宿エルタワー28階。 ニコン新宿サービスセンター。高層ビルのほぼ最上階。 ロケーションのよいところにニコン新宿サービスセンターはある。 ここではいつも、ほんとに細かいところでお世話になっている。 今回持ち込んだのは、おそらく市販されたニッコールレンズでは史上最小の部類といわれるレンズだ。 マクロニッコール35mm F4.5である。
ニコン新宿サービスセンター ● これが本当のニコンのサービス マクロニッコール35mm F4.5。きわめて小さくかわいい。 レンズの後玉(リアエレメント)にどうしても洗浄できない汚れがあった。 直径数ミリのものだが半透明のスリガラス状になっていた。 ふつう数ミリの汚れでは撮影に気にならないが、 もともと直径10ミリもないレンズ面での数ミリだ。気にすれば気になる。 レンズの後玉の交換をお願いしてみた。 まさか交換用の保守部品が在庫されているとは夢にも思わなかったが、 聞いてみるものである。 なんとマクロニッコール35mm F4.5のレンズの後玉が正規の部品として在庫されていて、 交換修理可能だという。 さっそく持ち込んでリアエレメントの交換修理をお願いした。 ● 専門家によるフルレストア 直径10ミリにも満たないレンズ1枚の交換ではあるが約2万円。 部品代が2,950円。修理基礎料金が16,800円ということだった。 レンズの実物を見ると、この小さなレンズにしては安くはない。 しかし今しか修理ができないと思いお願いした。 これもレッドブックものを所有する義務なのである。 少々おおげさか。 交換修理作業は非常にていねいにやっていただいた。 修理伝票にも「取扱い注意」と明記してくれて、 レッドブックニッコールは専門家の待機している工場へ向かったのだ。 新品よりも新品らしく、専用部品を使い全パーツ再アセンブルによるフルレストアの敢行だ。 特殊な専門測定器によるピント精度ぎりぎりの鮮鋭度復活。 小さなレンズに重装備の手が加わる瞬間、日本光学魂が蘇る。
修理完了 ● 完成したレストア技術 修理を待つこと1か月と少し。 カメラ部門ではない、ニコンインストルメンツカンパニーが対応してくれた。 ニコンインストルメンツカンパニーの専門家でしかできない作業内容のためだ。 でも新宿サービスセンターが窓口を代行してくれた。 日曜日くらいしか都合がつかない人間にとっては、とてもありがたいことだ。 完全に新品の状態で帰ってきた。 交換されたレンズの後玉(リアエレメント)は小さいビニール袋に入れられ いっしょにもどってきた。 これが交換された部品か。マニヤにはうれしい対応だ。 きわめて小さいレンズだが精密なコーティングがされていて、金属製のワクに収まっている。 色消しレンズと伝票に書いてあったので、貼り合わせのアクロマートレンズのようだ。 交換されたリアエレメントには、 金属ワクの内側をていねいに上質のつや消し黒塗装が施されていた。 細かいこういう芸を見ると、さすが日本光学と思ってしまう。 マニヤはこういうところを、こういう技をみているのだ。 さすが、というしか言葉がない。
修理明細伝票 ● 景色を構成する光学邂逅 新宿サービスセンターの28階から、 とおく高層ビルを見渡せるカウンターに修理が出来上がったレンズと伝票を置いてみた。 ちゃんと景色になっている。 こんなに小さいレンズなのに景色になってしまうのはさすがだ。 確認用にポケットに入れておいたツァイスの6Xルーペが大きくみえる。 マクロニッコール35mm F4.5は、 ニッコールレンズ史上最小で最高の性能を秘めた高解像力拡大撮影専用レンズなのだ。 ● 景色は変わる 新宿サービスセンターのある新宿エルタワーの28階からの眺めはいつも同じと思っていた。 2019年末に撮影した画像をながめてみると何か違う。 景色の右手にそびえるビルはモード学園コクーンタワー。新宿でも異形の雰囲気を放つ地上50階建ての高層ビルだ。 2006年に着工し2008年に竣工したらしい。どうりで2001年の風景には写っていなかったはずだ。 左手には永遠に工事が続くと思っていた新宿南口交通ターミナル(バスタ新宿)方面を望む。 これほど景色がダイナミックに変化している。しかしレンズはそのまま。変わらない。
新宿サービスセンターからの眺め ● 2021年のあとがき この記事のオリジナルは2001年11月に公開しました。 RMSマウントの写真撮影用ニッコールレンズを修理した実録ということでまとめてみました。 2001年当時は1枚きりだった画像ですが、 2016年のサイト移転に伴う見直しにあたり、その当時に撮影した画像をすこし追加しました。 2021年現在。本記事の公開から20年経過しましたが、 ニコン新宿サービスセンターは当時と同じ場所、 新宿エルタワーの28階ニコンプラザ東京内で営業を続けています。 昨今の首都圏のオフィス事情を鑑みるとすごい話です。
Copyright Michio Akiyama, Tokyo Japan 2001, 2021
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