EL ニッコール 50mm F2.8N
Excellent Resolution Dynamic Optical Engine EL Nikkor 50mm F2.8N Everything is Beautiful ● はじめに EL ニッコール 50mm F2.8N の話である。 製品名の末尾に「N」が付与されている。 昭和二十二年(1947年)から続く、エル・ニッコール・シリーズの最後期に登場したモデルだ。 レンズ設計が新しくなり、鏡胴外装の一部は金属製から合成樹脂製に変わった。 合成樹脂と言っても、 西ドイツのゴッセン・ルナシックス 3とかツァイス社製のルーペのように品よくまとまっていて、 安っぽさがない。 エンジニアリング・プラスチック製ならではの、スパルタンでありながらホンモノの高級感がにじみ出ている。 ● ゼットがレンズの人生を変えた ほんらいの用途は写真の引き伸し用レンズである。 でもレンズならば写真撮影ができるはずと前世紀から先駆者によって実写が試みられていた。 しかし焦点距離が 50ミリだと、ニコン一眼レフカメラに装着する場合、 レンズ後玉がミラーに干渉しない安全な位置でマウントすると無限遠が出ない。 接写のみとなる。 レンズは持っているものの、もう写真の引き伸しはしない、 さらに接写だけで一般の撮影ができないとなると、 引退宣言を済ませて机の引き出しか防湿庫の奥で忘れられた存在となっていたことだろう。
EL ニッコール 50mm F2.8N 2018年 9月。 ニコン Z 7 が発売になると事情は劇的に変化した。 フランジ・フォーカル・ディスタンス(いわゆるフランジバック)が 16mmと 他社に比べて圧倒的に短くマウント径が最大のミラーレス機ゼットの出現は一部のレンズを覚醒させた。 市販のアダプターで簡単にカメラにマウントし、あっけなく無限遠が出せるようになった。 そうなると出番が多くなる。お呼びがかかってレンズは元気を取り戻した。 豪華リゾート型高級有料老人ホームのパンフレットを検討していたあの人が、 なんと東京オリンピック 2020の男子 100メートル決勝のスタートラインに立ってゐるではないか。 そんな EL ニッコール 50mm F2.8N の美しい実話である。
EL ニッコール 50mm F2.8N 実写作例はニコン Z 6 で撮影した。 手元にあった BORG製の M42ヘリコイドを介してレンズをマウントした。 BORG製の M42ヘリコイドは日本製でしっかりした造りでおすすめなのだが、昨今では生産を終了したようだ。 しかし現在では同様の海外製品が出回っている。しかも安価。 お手持ちのミラーレスカメラ・システムで、EL ニッコールによる撮影が容易にできるようになったと思う。 ● 記事のご案内 すべての場面において、画像の上で左クリックすると、大きいサイズの画像を表示できます。 細部までを確認したい方はどうぞ拡大してご覧ください。 → では最初のお話。 第 1 章 レンズデータ ショートカットはこちらからです。
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● あとがき 本記事の初稿は 2021年 8月にリリースしました。
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