The Spilit of Nippon Kogaku Tokyo
Nikon Kenkyukai Tokyo Meeting The DODAIRA Historical Nikon 91cm Astronomical Photographic Reflector ● ニコン研究会堂平ミーティング 東京大学東京天文台。 36吋反射望遠鏡ドーム。 竣工は昭和37年11月。三井造船が製作した、銅の緑が優美な天文台ドーム。 標高876メートルの堂平山の山頂に天文台が見える。 旧・国立天文台堂平観測所。2007年10月13日。土曜日。 ニコン研究会有形文化財調査チームは、埼玉県ときがわ町の堂平天文台を訪問しました。
三井造船の製作プレートが見える 優美な姿の天文台ドーム 非常に優れた精度の高い光学系を誇るニコン 91センチ望遠鏡 ● 91センチ反射式天体写真儀 堂平天文台については、ニコン研究会の 2005年6月のレポート で紹介しています。 美しいドームの中には、91センチ反射式天体写真儀が設置されています。 主望遠鏡に同架しているのは、20センチ屈折望遠鏡と15センチ屈折望遠鏡です。 堂平天文台は、国の登録有形文化財に登録すべき、非常に歴史的価値のある科学施設なのです。 今でも第一級の性能を誇る91センチ鏡。
巨大望遠鏡を支える重量級の架台と美しいドーム 世界的な歴史的名機ニコン 91センチ望遠鏡 貴重なニコンテレスコープコントロールシステム(左のラックはドーム制御盤) ● 91センチ望遠鏡のテクニカルデータ (1)性能諸元 ・主望遠鏡
主鏡の有効口径: 914 ミリ ・ファインダー
型式: 屈折式 ・赤道儀架台
型式: イギリス式 (2)図面
ニコン 91センチ天体反射鏡写真儀外形図
ニコン 91センチ天体反射鏡写真儀光路図
● NHKテレビ番組の取材 NHK総合テレビジョン。 毎週月曜日から金曜日の17:15〜18:00の番組「ゆうどきネットワーク」。 NHKカメラクルーによる取材が行われました。 当日の観望会の様子は番組で、 2007年10月19日に全国ネットで放送されました。
取材の準備をするNHKカメラクルー 天文台スタッフからの説明を聞くNHKカメラクルー 取材中のNHKカメラクルー ● 天文台の夕食 深夜から明け方にかけての本格的な観測にそなえ、天文台で夕食です。 地ビールで乾杯しました。
天文台の夕食テーブル これが地ビール小川ビール 天体観測には欠かせない ● ニコンで星を観る 天文台の大きなドームが静かに開き、夜空が見えています。 冬を除く毎月第2、第4金曜日の定例観望会以外は閉ざされているドームですが、 今回は関係者の御好意で特別に星の観望会が始まりました。 天文学者がこれまで写真撮影や光電観測用に使用していた望遠鏡の光を そのまま肉眼で見るという贅沢な時間が流れます。 アイピースにデジタルカメラを押し当てて土星を撮影しました。 いまだ第一級の光学系です。 長焦点のアイピースで、ゆっくりと夜空を探訪しました。 91センチ望遠鏡の極限までに美しい巨大光学機械の様式美がそこにありました。
夜空にドームが開き巨大望遠鏡が星を見る 巨大望遠鏡を肉眼で直視するリアルな体験 土星も視界に入りました 欠けた金星の姿 91センチ望遠鏡の極限までに美しい巨大光学機械の様式美 黄金に輝く往年の日本光学マーク ● 堂平天文台の歴史的価値 埼玉県ときがわ町の堂平天文台は、星と緑の創造センターで運営されています。 ニコン研究会のグローバル版ウェブサイトでの紹介により、 日本を代表するクラシック天文台として、世界的にも注目されています。 堂平天文台は観光施設ではなく、科学を実感できる教育施設なのです。 天文台を使える施設として維持していくためには、多額の経費もかかりますし、 施設と望遠鏡を支えていく熱意をもったスタッフが必要でしょう。 幸いにも、堂平天文台には、この歴史的科学文化財を支える熱いスタッフがいます。 お金が集まったところで、本格的な天文台を最適に維持することはできません。 専門知識を持った、なによりも堂平天文台を愛するスタッフの存在が重要なのです。 全国および世界の天文ファン、ニコンファンが堂平天文台をみています。 この歴史ある、日本刀のような輝きを放つ、科学的有形文化財を後世に残していくことが、 日本が日本であるために必要なことなのです。 利益の追求、効率化だけでは、国家は滅びます。 歴史的科学文化財を永続的に接続可能にするためには、 最後はインテリジェンスの問題となり、インテリジェンスの力が解決するでしょう。 堂平天文台の91センチ反射式天体写真儀が、明日も天空に出現することを祈っています。 堂平天文台が研究者に現役で使われていた時代の、 91センチ反射式天体写真儀の写真をご覧ください。 観測装置が取り付けられた望遠鏡をバックに、 天文ファンにはおなじみの東京天文台の冨田弘一郎先生ほか、 研究者の方々が写真におさまっています。 いつまでも堂平天文台をだいじにしてくれよな、と語っているのが聞こえてきました。
91センチ望遠鏡をバックに冨田弘一郎先生と当時の東京天文台スタッフ 91センチ鏡の鏡筒底部に取り付けられているのは多色偏光測光装置。 昭和54年(1979年)の東京天文台報で装置の概要が論じられているので、 この写真が撮影されたのは昭和50年代と思われる。 写真の前列左端でニット帽に黒ブチ眼鏡をかけているのが冨田弘一郎先生。 写真の前列右から二人目、長髪に眼鏡姿が東京天文台の菊池 仙先生。 菊池先生はこの多色偏光測光装置を開発した中心的な研究者なのです。 ● 渡部潤一先生と堂平 ここで、サプライズな「檄文」が届きましたので掲載させていただきます。 いま日本で最も著名な天文学者は誰だろうか。 ニコン研究会天文プロジェクトのメンバーと話をしていたら、 やはり新聞や出版物、テレビなどメディアで活躍中の、 国立天文台の渡部潤一先生ということになりました。 冥王星を惑星から外すかどうか、 冥王星の扱いが主な議題となった2006年8月プラハで開催された 国際天文学連合(International Astronomical Union, IAU)第26回総会で、 世界中から選ばれた七人の天文学者らで構成する 「惑星の定義委員会」のメンバーの一員として先生が活躍されたことは、 新聞紙上で大きな話題となりました。 現在、渡部先生は国立天文台准教授で、天文情報センター長を務められていますので、 ご活躍ぶりを目にする機会は多いと思います。 また先生は、星の図案のネクタイ、星がデザインされたコーヒーカップのコレクターとして、 そのすじでは世界的に有名です。 堂平に思い入れをお持ちの理学博士渡部潤一先生に、 いまも世界から注目されている堂平天文台「讃」をお願いいたしました。
ALL WE LOVE DODAIRA ● 堂平を切り開いた天文学者 香西洋樹先生 科学技術史の解明でもフィールドワークが欠かせません。 書物に残ったことがじじつかどうか考えるよりも、 リアルタイムでじじつを見た人間に歴史を聞くことが最も重要なのです。 堂平天文台(東京天文台堂平観測所)は、どのようにして出来たのか、建設されたのか。 文献を探しても、なかなか決め手となるものがありません。 ならば、歴史的じじつを掘り起こし、じじつを定義すればよいわけです。 堂平観測所の建設には、香西洋樹先生を抜きには語れません。 香西先生は、国立天文台光学赤外線天文学研究系助教授を務められた天文学者です。 現在は、国立天文台を退官後、 鳥取県佐治天文台の台長を務められています。 先生は、たくさんの小惑星を発見され命名していますし、 海外の皆既日蝕ツアーではお世話になった方も多いでしょう。 さらに、天文関連の著書も数多く、雑誌「月刊天文」では読者の天文写真の選者だったことから、 天文関係で先生を知らない人はモグリと言えるでしょう。 西洋文学にも、とくにシェイクスピアに造詣が深く、 講談社から「シェイクスピア星物語」が出版されており、 そのすじでも有名な先生なのです。 この科学と数式の先にある文学性が、 Wikipediaで、「香西は日本の天文学界でも異色の存在」と定義されているゆえんです。 皆既日蝕海外ツアーマニヤの方から、倉敷市にご在住の先生をご紹介いただき、 貴重な原稿を執筆していただけることになりました。 建設当時の東京天文台に勤務され、 直接建設などに携わった天文学者のリアルタイムな物語をごらんください。
取材協力:埼玉県ときがわ町 星と緑の創造センター 注:ご寄稿いただいた方々の役職等は2008年当時のものです。 ● 日経サイエンス 科学雑誌「日経サイエンス」編集部より、 旧東京天文台堂平観測所の物語を企画しており、 ニコン研究会サイトにある記事を引用をしたい、とのご依頼がありました。 ニコン研究会は、日経サイエンス誌の記事製作をお手伝いさせていただくことで合意しました。 2022年の年初から作業がスタート。 本記事(ニコン研究会 2007年10月例会レポート)から引用していただいた文章は、 同誌の 2022年3月号、2022年8月号に掲載されました。
日経サイエンス 2022年 3月号 日経サイエンス(SCIENTIFIC AMERICAN 日本版)。 2022年 3月号。nippon 天文遺産第35回。旧東京天文台堂平観測所(上)。 観測の適地を求め、 東京天文台の香西洋樹先生と冨田弘一郎先生が秩父山地の稜線を歩き回った話。 香西洋樹先生からご寄稿いただいたエッセイ「最大のニコンカメラ」より引用されています。
日経サイエンス 2022年 8月号 日経サイエンス(SCIENTIFIC AMERICAN 日本版)。 2022年 8月号。nippon 天文遺産第38回。堂平シュミット望遠鏡。 国立天文台の渡部潤一先生からご寄稿いただいたエッセイ「堂平の思い出」より引用されています。 ニコン研究会は日本の科学技術の発展に貢献しております。 ● 2023年のあとがき この記事のオリジナル初稿は、2008年4月に公開しました。 長い間大きな更新はありませんでした。 2022年のことでした。 日経サイエンス誌からのご依頼で動きがありましたので、 紹介を兼ねて本記事を大幅に改訂することにしました。 画像品質を高めるために、画像上でクリックすると、 オリジナルの撮影原板を表示するようにしました。 91センチ望遠鏡のテクニカルデータを追加しました。
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