May 2005, Nikon Kenkyukai

Nikon F High Speed Motor Drive Camera

May 21, 2005
Nikon Kenkyukai Tokyo Meeting
Ultra Micro Nikkor
Nikon F Pellicle Mirror
9 Frames Per Second

ニコン研究会 2005年5月

ウルトラマイクロニッコール

ニコン研究会の五月ミーティング。初夏のみどりの木陰、都心の運河にボートも白くまぶしい季節です。

工業用ニッコールレンズ特集の第1回。 この世界の代表的な存在であるウルトラマイクロニッコールの長焦点モデルがいくつか紹介されました。 工業用ニッコールレンズ研究家の秋山満夫が持ち込んだ、 ウルトラマイクロニッコール 125mm F2.8、ウルトラマイクロニッコール 135mm F4、 そしてウルトラマイクロニッコール 155mm F4の 3本について解説と、コレクターズ情報です。

堅いクルミ材でつくられた専用収納木箱の内装は、赤いビロード張り。 数値データが手書きされた検査証に、削り出し縮緬塗装のリアレンズキャップなど、 人のぬくもりのある工業機器だったことがかんじられます。

ウルトラマイクロニッコールと工業用ニッコールレンズ

ウルトラマイクロニッコール 125mm F2.8

ウルトラマイクロニッコール 135mm F4

中央にウルトラマイクロニッコール 155mm F4

工業用ニッコールレンズ

さらに会員から、 いくつかの工業用ニッコールレンズと歴史的ニッコールレンズの紹介がありました。 まずは写りに定評のあるマクロレンズ、CRTニッコール 55mm F1.2です。 さらに珍しいところでは、TVニッコール 35mm F0.9。 デジタル一眼レフカメラに装着して、ファインダーの開放 F0.9の明るいマクロ画像を確認しました。

歴史的ニッコールレンズは、大戦中の航空写真機に搭載されたエーロニッコール 20cm F3.5。 Aero-Nikkorは、日本光学ではエアロニッコールではなく、 エーロニッコールと表記しています。 まだまだ、大型カメラにマウントして活躍できそうなコンディションです。

CRTニッコール 55mm F1.2

TVニッコール 35mm F0.9

デジタル一眼レフに装着した TVニッコール 35mm F0.9

エーロニッコール 20cm F3.5

ニコンFの最初期のカタログ

ニコンFをカタログなど印刷物から掘り下げるコーナーです。 ニコン研究会会員のコレクションから、非常に珍しいごく初期のカタログが紹介されました。 クラシックカメラ専科の表紙に登場したこともある、最初期の大型カタログです。

幻の最初期の大型カタログと取扱説明書(発行番号・日付記載なし)

このカタログは2種類あり、 製品の販売価格、およびカタログの発行番号・日付が、まったく記載されていないものと、 記載されているものに分類できます。 今回は、この2種類のカタログの内容を比較検討しました。 中には、詳細の説明がぎっしり詰まっています。 カタログには、ボデイ番号 No. 6400002 のニコンFの写真が掲載されています。

大型カタログにはボデイ番号 No.6400002のニコンF

2番目に発行された小型カタログの表紙

2番目に発行された小型カタログが 3種類

最初期のころの元箱は、非常にゴージャスに造られています。 高級一眼レフカメラのオーナーになった当時のニコンファンの喜びがかんじられます。 最初期型の FULL AUTOMATIC REFLEX表記の元箱には、 5cm F2レンズ(No.520xxx)およびPat.No.刻印入りフードの、 オリジナル組み合わせニコンFが収納されています。

最初期型ニコンFのゴージャスな元箱とオリジナル組み合わせ

ニコンF高速モータードライブの世界

ニコンF研究家の鈴木昭彦氏から、特別な紹介がありました。 報道用に開発された、ニコンF高速モータードライブ装置です。 テーブルの上には、未使用と思われる新品同様の、 コンクールコンデションのセットが並べられました。

稀少なニコンFコウソクモータードライブ元箱

電気モーター付き特殊ニコンFボデイと直流電源パック

大型の元箱に一式すべてがセットされています

ニコンF高速モータードライブカメラは、 1972年の札幌冬季オリンピックのために開発された毎秒 7コマのモデルが最初です。 しかし毎秒 7コマの最高速で使う場合は、ミラーアップが必要であり、 専用のクリップオンタイプのファインダースコープ(ポロプリズム単眼鏡)を装着していました。

専用の使用説明書

使用説明書には調整し適合するボデイとモーター番号がスタンプ

未使用新品のニコンF特殊ボデイ

ミラーアップをせず一眼レフの特徴を活かして撮影できないか、もっと高速にできないか。 この課題に取り組んだのが、半透明ミラーを使用した毎秒 9コマのモデルです。 透過率 65%、反射率 35%の高性能極薄ガラスハーフミラーが固定されています。 ファインダーはブラックアウトせず、一眼レフの特徴を活かして撮影に専念できます。 このカメラは、1976年のモントリオールオリンピックで使用され、 数々の競技の撮影に威力を発揮しました。

モーター内部には適合するボデイ番号のスタンプ

半透明固定ミーラーと封印されているミラーアップ機構

このようにニコンF高速モータードライブカメラには、 7コマモデルと 9コマモデルがありますが、ここで紹介するのは、 最高速タイプの 9コマモデルです。 ミラーを作動させずに、毎秒 9コマの高速撮影を可能にする特殊ニコンFボデイ。 大型の元箱を開けると、モーター付きの特殊ニコンFボデイ、 直流電源パック、電源接続ケーブル、幅広の布製ストラップ、 それに専用の使用説明書がセットになっています。 ボデイとモーターは工場で調整され、適合するセットで元箱に収納されています。 写真すらもめったに見ることのない稀少なカメラです。

直流電源ケーブルは太くてごつい

アルミ板の削り出しの電池ケースには単三電池 4本を 4セット収納

今回掲載するニコンF高速モータードライブ 9FPS完全セットの画像は、 全世界で初めてインターネット公開するものです。 電源パックの中の構成など、初公開画像をお楽しみください。

ニコンF高速モータードライブの販売台数

ニコンF高速モータードライブの販売台数について調べてみました。 1991年7月にニコン本社で確認された信頼できる数値です。

7FPS機、7 コマモデル(毎秒 7コマ)  54台
9FPS機、9 コマモデル(毎秒 9コマ)  34台

参考ですが、ニコン F2 高速モータードライブ(F2H)の販売台数は、501台です。 製造シリアル番号は、7850001〜7850557 とのこと。

販売台数の数字の根拠(情報の出所)は、海外のユーザーからの問合せにたいして、 ニコン本社(東京・丸の内)が回答したレターによります。 レターの日付は、1991年7月15日。 回答者である、 A. Sato氏(企画部ゼネラルマネージャー)、 F. Takahashi氏(同マネージャー)の署名が入っています。

いずれにしても、本記事で紹介している ニコンF高速モータードライブ 9FPS機(毎秒 9コマ)は、 たった 34台しか販売されなかった特殊な機体ということです。

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