October 2009, Nikon Kenkyukai

アサヒカメラ 昭和32年8月号とコニカIII型

October 17, 2009
Nikon Kenkyukai Tokyo Meeting
Dr. Zyun Koana's Collection
and Review

特別展 小穴純とレンズの世界を見て

先月の話ですが、ニコン研究会9月例会は、東大駒場博物館(正式には、 東京大学大学院 総合文化研究科・教養学部 駒場博物館)で開催されていた 「特別展 小穴純とレンズの世界」で、勉強会を行ないました。

ニコン研究会10月例会は、小穴純先生に関するコレクションを持ちより語っていただきました。 小穴式・引伸用ピントルーぺの現物がゴロゴロ、 小穴先生のルーペに関する解説書(東海産業のルーペの話)など、 おもしろいものが集まりましたが、非常にユニークな逸品が登場しましたので紹介しましょう。

ニューフェイス診断室の第1回

アサヒカメラ誌上で、ニューフェイス診断室が始まったのが、昭和32年(1957年)8月号。 ドクターは、いわずと知れた木村伊兵衛、小穴純、浮田祐吉、貫井提吉の 4氏です。 説明するまでもありませんが、 木村伊兵衛氏は戦前からライカを使っていた名写真家、 小穴純先生は当時東京大学の理学部教授、 浮田祐吉氏は当時通産省工業技術院機械試験所の研究者(後に工業技術院会長)、 貫井提吉氏はヌクイカメララボを設立した伝説のカメラ修理のプロ、 そうそうたる方々だったと言えるでしょう。

ニコン研究会のメンバーが、テーブルの上に一冊の雑誌を置きました。 それはまさに、アサヒカメラ昭和32年(1957年)8月号でした。

アサヒカメララ 昭和32年8月号

ニューフェイス診断室 第1回

ここまでだったら普通のカメラ談義の世界です。 しかしながら、スーパーコレクターの世界になると、さらに驚くべきコレクションへと展開するのです。 続けてテーブルの上に置かれたのが、コニカIII型。 なんとニューフェイス診断室の第1回で取り上げられたのと同型のカメラです。 このあたりは努力しているカメラ談義の世界です。

ここからがサプライズ。 アサヒカメラ昭和32年(1957年)8月号ニューフェイス診断室の記事を見てみると、 診断の対象となった機体は、
ボデイ番号 121055
レンズ番号 3634085
と書いてあります。

テーブルの上に置かれたコニカIII型は、
ボデイ番号 121055
レンズ番号 3634085
だったのです。

こういうことって、あるのでしょうか。 あるんですね、ニコン研究会になると。 スーパーコレクターの作法と、底力を再確認した貴重な時間となりました。 どうぞ画像をクリックして拡大して確認してください。

コニカIII型 ボデイ番号 121055

コニカIII型 レンズ番号 3634085

博物館級の記念すべき歴史的史料

テスト機は社員に販売された話

そもそも、なんでニューフェイス診断室で取り上げられたカメラそのもの、現物があるのでしょうか。 実は診断室で取り上げられたカメラやレンズは、朝日新聞社にずっと保存されていたわけではなく、 朝日新聞の社員に向けて払下げられたそうです。

テスト機をメーカーから借りたとすると、メーカーは完全に調整した機体を提供するでしょう。 そして評価を終えたテスト機がメーカーに返却されると、この機体はまず市場に出て来ないと思います。 診断室の記事冒頭に 「街の不特定のカメラ店から、新発売の話題のカメラを購入」 とあるとおり、朝日新聞社が自腹で購入したことがわかります。 かなりフェアなやり方と言えるでしょう。 しかし、いつまでもテスト機を自社で持ち続けるのは難しいことが推測できます。 こんな背景で、社員向けに販売されたとの話は納得できます。

社員向けに販売されたテスト機は、時の流れと事情により町のカメラ店に買い取られ、 そして銀座の老舗中古カメラ店に並ぶことになったと思われます。 この話は具体的な紙によるエビデンス(社員向け販売の案内チラシ等)がないので、 信頼できる銀座の中古カメラ店で聞いた話に基づきます。 診断室で取り上げられたテスト機を収集するという、 新しいコレクションの分野が広がるような気がしました。

会員の研究近況報告

ニッコール 5センチ F4.5に関する考察が発表されました。 当時の雑誌の広告や、記事情報、日本光学社史などから、 ニッコール 5センチ F4.5を多角的に分析したものでした。

ニッコール 5センチ F4.5に関する考察

堂平天文台の寺田さんからは、 ニコン研究会が応援している堂平天文台の活動近況について報告がありました。 宿泊設備の整っている「星と緑の創造センター」の案内から、 91センチ望遠鏡の主鏡の様子など、ここだけの話を聞くことができました。

堂平天文台のある「星と緑の創造センター」のパンフレット

工業用ニッコールレンズ研究家の秋山からは、 ゲルマニウム・ニッコールレンズの捜索依頼が出されました。 ご自宅に、ゲルマニウム・ニッコールをたくさんお持ちの方は、 連絡してほしいとのことでした。 ラインナップには、27mm F1.2、45mm F1.2、100mm F1.2、200mm F1.2、30-120mm F1.2、 60-240mm F1.2 があることが知られています。

手元に置かれているのは、ニコンのイエローブック。 ニコンインステックの黄色のハードカバーファイルには、 コンフォーカル顕微鏡、ニコン測定装置、ニコン赤外線カメラの資料が詰まっています。

ニコンイエローブック

次回のニコ研特集は

従来このニコ研サイトでは、次回のテーマを紹介することはありませんでしたが、 今回は新しい企画のスタートということで紹介してみます。

次回のテーマは「 105 」です。 つまり、105ミリのニッコールレンズ(S マウント、F マウント、 L マウント、C マウント、ほか特殊マウントなど)、 105ミリレンズに似合うカメラ。 視点を変えると、105円で買ったものや105万円で買ったものも含まれます。 さらに、こういったものに関連した紙モノも登場していただきましょう。 製造番号 105番もあるでしょう。105歳の方の参加もインパクトがあります。 105(もしくは 100でも可)をキーワードに、雑多なものがランダムに集まると、 さらに興味深い方向へ展開していくのではないかと期待しているのです。

こういった切口が新しい可能性を生むならば、 数字テーマとして、28、35、135、200、300以上とか、 20以下とか設定することも考えられます。

いままで取り上げていないカメラをリストアップしてみると、 ニコノスが浮かび上がってきました。 しかし、秋から冬にかけてはニコノスはなじまないのです。 やはりニコノスは夏のカメラなのです。 カメラが季節となり、季語となった珍しい例なのです。 そうなると、春をテーマにしたニコンコレクション、 秋や冬もテーマになるのでしょうか。

2023年のあとがき

この記事のオリジナルは、2009年9月に公開しました。
2023年6月。記事を全面的に改版しました。 「テスト機は社員に販売された話」を新たに盛り込みました。 すべての画像は、撮影原板から再度画像を切り出し直し、画像品質を高めてあります。

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