Ultra Micro Nikkor 135mm F4 Cool Summer


Ultra Micro Nikkor 135mm F4 Cool Summer

Amazing Grace
Far Eastern Mystery
Nippon Kogaku Gland Lens
Ultra-Micro-Nikkor 135mm F4 Heartland


早朝の夏草の中に佇むウルトラマイクロニッコール135mm F4

初夏の朝日新聞社

2002年6月。
ワールドカップで盛り上がる日本の夏のような昼下がり。
東京・築地は朝日新聞社の本社ホールでは、 東京カメラ倶楽部の年次総会が開かれていた。
一通りのアトラクションが終わり、 パーティーはビールを飲みながらの懇親会となった。
そこらここらで人の輪ができて、にぎやかにカメラ談義やら写真論となった。
ののみやさんから米国のカメラマニヤ事情を聞いていたら、
「チョートクさん、この人があの、あきやんですよ」 と彼は田中長徳氏に声をかけた。
ビールを手にしたチョークさんから、 「ウエッブ見てます」「注目しています」と、嬉しい言葉が返ってきた。 田中長徳氏の主催するアルパ研究会には、 初代のころはよく参加していた。
また、東京カメラ倶楽部も初代からの会員である。 したがって、もちろん面識もあり、よくお話をうかがっていたが、 本サイトを立ち上げたAkiyanたる人物と結びついていなかったという。
チョートクさんが本サイトを見ていてくれたなら話は早い。
親しき中にも礼儀ありだ。 ここはウルトラマニヤックな特殊ニッコール談義に突入した。

お道具拝見

ビールのおつまみ代わりに私がバッグから取り出したのが、この、 ウルトラマイクロニッコール135mm F4である。
さっそく、お道具拝見となり、 さすが斯界の大御所チョートクさんは見事に景色を指摘した上で、 コンディションの良さをほめていただいた。
オリジナルの62mm径ピッチ1.0mmの座金と、 オリジナルの縮緬塗装内部外周は黒フェルト貼り付けのリアキャップ付き。 約30年間デッドストック未使用のブラックペイントバレル。 レンズのコーテングは紫陽花色の季節を絶対透過した。
バッグにレンズを入れていたのには、わけがある。 朝日新聞社に近い築地本願寺のエキセントリックな本堂を背景に、 ウルトラマイクロニッコール135mm F4の情景写真を撮影しようと、 デジカメと共にバッグに入れてきたのだった。
時間の都合で本堂を背景にした写真は撮影できなかったが、 ウルトラマイクロニッコール135mm F4を手にした田中長徳氏の姿写真を撮影させていただいた。
レンズもよい表情をしているのが分かる。

1965年のニューフェース

ウルトラマイクロニッコール135mm F4は、 1965年に発売されたウルトラ四兄弟の1人である。
当時リリースされたレンズは4本。
実質上、ウルトラマイクロニッコール最初のラインナップ といってよいだろう。

−Ultra-Micro-Nikkor 28mm F1.8
−Ultra-Micro-Nikkor 55mm F2
−Ultra-Micro-Nikkor 125mm F2.8
−Ultra-Micro-Nikkor 135mm F4

こう並べてみると、いちばん長焦点でしかもF4と暗いレンズだ。
この4本のレンズのうち、いちばん寿命が長かったのが28mm F1.8である。
いくつかのバリエーションがあり、 発売開始時期から終焉を迎える時までカタログに掲載されていた。 125mm F2.8は製造数が少ないながら、最後の方まで残っていた。
55mm F2と135mm F4は、早々と後輩に道を譲り引退してしまった。
55mm F2は50mm F1.8の高級レンズに、 そして135mm F4はより使い勝手を向上させた155mm F4に進化したのだ。

テクニカルデータ

ウルトラマイクロニッコール135mm F4の元気な性能をみてみよう。

−焦点距離: 136mm
−最小絞り: F11
−レンズ構成: 4群7枚
−基準倍率: 1/25X
−画角: 20度 (F4), 25.5度 (F5.6)
−色収差補正波長域: 546nm (e-line)
−歪曲収差: +0.02% (F4), -0.03% (F5.6)
−解像力: 330本/mm (F4), 200本/mm (F5.6)
−画像サイズ: 50mmφ (F4), 64mmφ (F5.6)
−原稿サイズ: 1250mmφ (F4), 1600mmφ (F5.6)
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 3640mm
−重量: 750g

歪曲収差が +0.02% というのは立派である。 もちろん解像度330本/mmは、堂々のレコードといえる。 フィルター径は62mm ピッチ0.75mmだ。 つまり普通のニコンカメラ用62mm フィルターがセットできるのは嬉しい。 私は彼女のために、Nikon 62mm L37Cフィルターを新調した。
テクニカルデータには出てこないところだが、 鏡胴のブラックペイント塗装の丁寧さ、絞り羽根の仕上がり、 カチリと動くリングと吸い付くような座金とマウントの工作精度。
民生用レンズにはない、 ハイエンドな機能を維持するためだけに存在する美しさだ。

当時のセールスマニュアルを見てみると 「絞りF4で3.5cm角、F5.6で4.5cm角という広い範囲に高い解像力を持っている。 ワンショット方式によるフォトマスクの製作、またはステップ・アンド・リピート方式により フォトマスクを製作する場合の中間原版製作用に使用される」 と説明がある。


鏡胴の丁寧なブラックペイント塗装が美しい


線量計に反応する前玉は極東のミステリー

食物連鎖の頂点

そうこうしているうちに、立食パーティーも熱くなってきていて、 テーブルに並べられたサンドイッチやらオードブルがなくなり、 乾きものが並び始めた。
生き物は食べることで生存を続ける。
「人はパンのみに生きる」とよくいうが、 山頭火の「きょうたべるごはんがある」という詩にはかなわない。 ハムサンドからスモークサーモン、 そして柿ピーナッツに続く食物連鎖を観察していたら、 希少生物の生態系復活のニュースを思い出した。
食物連鎖の頂点に立つのが猛禽類である、オオワシ、クマタカ、ハヤブサ などの生態系だ。
生物多様性の豊かさの指標になっている。
北九州市は八幡西区の洞海湾に面した一角。 三菱化学黒崎事業所の集合煙突の一つにハヤブサが営巣し 無事にヒナをかえしたという話題はハヤブサ通信に詳しいが、 よい話ではないか。 ハヤカワ通信ではなくてハヤブサ通信だ。この違いには注意が必要だろう。
ハヤブサは国内希少野生動植物種、 日本版レッドリスト絶滅危惧2類のレアもの。
自然界の食物連鎖の頂点に立つ猛禽類のハヤブサ。
3年間も営巣するのは自然環境が整っている豊かさの証明であるのは明白だ。

では、光学レンズ連鎖の頂点に立つのは何か。
そうだ、ウルトラマイクロニッコールを始めとする産業用ニッコール、 工業用ニッコールレンズだ。
(特殊ニッコールと呼ぶ特殊趣味の方もいるが。)
カメラ趣味、レンズ趣味など、 光学レンズ多様性の豊かさの指標になっているのが、 こういったレンズを国がどこまで保護しているかだ。
国といっても国家ではなく、国民といったほうが適切かもしれない。
特定の権威を排除し、現実を信じることが粋ではないか。

ウルトラマイクロニッコールは、とくに長焦点のレンズがない。
産業用機械とともに大多数が破壊されてしまったが、 数少ないながらも米国やヨーロッパ諸国で生存している例が報告されている。 文化の豊かさの指標でもある。

事実は本物よりすごい

田中長徳氏と話していたら、すごい事実が判明した。
ここだけの話ということだったので、これは誰にも言わないでいただきたい。
ぢつは、チョートクさんも特殊ニッコールレンズをコレクションしているという。
それもハンパなレンズではない。なんとリプロニッコール170ミリF1.4なのである。
美しいヘアライン仕上げの銀色の巨大なスーパーレンズ。 幻の極超解像度レンズ170ミリF1.4。F1.4なのに170ミリだ。もちろん日本光学製。
ミランダ光学では夜想曲、田中光学製では木琴のしらべであるが、 ここは工業美術品として日本光学を聴いてみたい。


1965年に登場した時代の極超高解像度スーパーレンズは日本が誇る文化遺産

2016年の追記

ここまでのコンテンツは2002年6月当時のものです。
時の話題もいまとなっては古くなってしまいました。 昨今ではあまり耳にしない話題も書いてあります。 でも時代の理解のために、そのままにしておきました。
2016年の見直しにあたり、画像を少し追加しました。
さらに2005年以降には、専用のニコンFマウントアダプターを特注して、 ニコン一眼レフによる実写も試みてみました。以下にその様子をレポートします。

ウルトラマイクロニッコール135mm F4専用のアダプターの開発

2005年11月に専用のニコンFマウントアダプターが完成しました。
必要なのは1個のマウントアダプターでしたが、非常にコストがかかるために、 ネットで希望者を募り共同購入という形で、 試作レベルの最小ロット分である10個を専門家の協力を得てメーカーに特注しました。

特注した専用のニコンFマウントアダプター(ビス留め型)

専用の特注ニコンFマウントアダプターでレンズを装着

ウルトラマイクロニッコール135mm F4による実写

無限遠での撮影も、数百メートルレンジの遠距離にも強いことがわかりました。
しかしながら、近距離とか手が届く先の距離の立体物の表現に最も適していて、 さすがの映像を叩き出します。 色再現性は非常に優れていて、重厚な色合い、精密で総天然色な映像を目にすることができます。
このレンズの前玉は、いわゆるアトムレンズのようですが、 アポクロマートを超える高性能には素直に納得します。
実写画像をクリックすると少し大き目のサイズの画像が出ます。

アトムレンズらしい妖しい光を放つ前玉

盛夏の空に湧きあがる白い雲の行方を追う

群青色に近づく時間帯の夏雲の造形

ウルトラマイクロニッコールで鉄写真

晩秋の色彩を放つ彼岸花に遠景が見える

この色彩は千年前の日本の情景と変わらない

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