Ultra Micro Nikkor 125mm F2.8 Smart Lens

Ultra-Micro-Nikkor 125mm F2.8, the God with Golden Sunset

御神体

単線のローカル列車。終点近く。日没をひかえて、鉄橋にレンズを向けた。
光学ガラスの塊は、ようようと暮れ行く天空を投影した。雲を曳航した焦点は125mm。
レンズは絶滅したと言われていた。それが私のレッドブックの最終ページにあった。
絶滅危惧種である。このレンズの歴史は、長い。

真の幻のレンズ

1965年。東京オリンピックのあった翌年だ。
このとし、ウルトラマイクロニッコールのデビューが本格化した。
ウルトラマイクロニッコール28mm F1.8、同55mm F2、同じく135mm F4、 そして幻のウルトラマイクロニッコール125mm F2.8だ。
やはり、レンズとの出会いは縁だ。
数少ない文献のなかだけで生きていた幻の極超高解像度レンズ。
日本では、もう存在さえしないのではないかと人は言う。
これは日本刀だ。昭和が生んだ伝説の極超高解像度レンズ、 ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8がここに生きている。

昭和が生んだ伝説の極超高解像度レンズ

美しい大口径

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8。レンズ構成6群7枚。
基準倍率1/25倍。色収差補正は546nm (e-line)。
歪曲収差はこの大口径にして、たったの-0.3%だ。 ハイエンドなウルトラパワーが引き出す解像力スペックは、 なんと400本/mm!の極超高解像度。
フィルター径は大口径カメラレンズでおなじみの、72ミリ径。
付属のレンズキャップは、UDニッコール20m広角レンズと同じ アルミ合金製のものだ。
ほんらいならば、専用の格納用木箱があるはずだが、ここにはいない。 待っていれば来るだろうか。< 重量は695gとマクロレンズとしては立派だが、 どしりと安心感のある姿は落ち着いた研究者の趣味レンズにも適するだろう。

高価ゆえに

このレンズ、価格も横綱級だ。 1974年2月のニッコール価格表には、1,000,000円と出ている。 タイプミスではない。百万円である。 その当時でもふつうの国産車は買えた値段だろう。
まず必要な仕様があって、それを忠実に設計・製造する。
値段はそのあとからついてきた、 エンジニアにとっても幸福な時代だったのかもしれない。
マウントはピッチ1ミリの62ミリ径ネジマウント。
特注になるだろうが、製作したマウントアダプターを介して、 ニコンカメラに搭載したい。
日本で生きることをたのしみにしていたと聞く。
レンズだって幸せな余生を送る権利がある。

本物をもつということ

世界各地に残されているウルトラマイクロニッコールレンズは、 望郷のおもいでいる。
武士のたたずまいと品格。ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8。
本物は古くならない。本物は朽ちない。
本物は死なない。

テクニカルデータ

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8の性能緒元をみてみよう。

−焦点距離: 125.0mm
−最大絞り: F2.8
−最小絞り: F8
−レンズ構成: 6群7枚
−基準倍率: 1/25X
−色収差補正波長域: 546.1nm (e-line)
−歪曲収差: -0.3%
−解像力: 400本/mm (28mmφ)
−画像サイズ: 28mmφ
−原稿サイズ: 700mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 3364mm
−重量: 695g

焦点距離が125mmのレンズで解像力400本/mmとは驚愕ものである。
重量は約700g。ずしりとした重さに超高性能を実感する歴史的名レンズ。

その姿に超高性能を実感する歴史的名レンズ

2016年の追記

ここまでのコンテンツは2001年10月当時のものです。
2016年の見直しにあたり、画像を少し追加しました。
さらに2005年以降には、専用のニコンFマウントアダプターを特注して、 ニコン一眼レフによる実写も試みてみました。 以下にその様子をレポートします。

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8専用のアダプターの開発

2005年11月に専用のニコンFマウントアダプターが完成しました。
必要なのは1個のマウントアダプターでしたが、非常にコストがかかるために、 ネットで希望者を募り共同購入という形で、 試作レベルの最小ロット分である10個を専門家の協力を得てメーカーに特注しました。

特注した専用のニコンFマウントアダプター

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8を装着する図

ニコンD70にマウント (2005年当時の画像)

ニコンF6にも似合う (2005年当時の画像)

ウルトラマイクロニッコール125mm F2.8による実写

私が2001年に本サイトを公開する前は、 工業用のニッコールレンズは単一波長光線による露光に限定した設計がされているため、 一般の写真用フィルムでは撮影ができない(ちゃんと写らない)。 という風説をカメラ雑誌等で目にしたものです。
確か1960年代の話です。 当時のカメラ記事を書くライターの方は、実際に自然の光線下で、 一般に市販されている普通のカラーフィルムを使って、 ウルトラマイクロニッコールによる撮影を実証したわけではなかったのでしょう。 また、レンズの入手からして無理な話だったと思います。

では本当に普通の条件下で、普通のカメラで写真が撮れるのでしょうか。
以下にご覧のとおりなのです。 実証するまでは、正確なマウントアダプターを専用設計して特注するなど、 多少の時間はかかりましたが。
実写画像をクリックすると少し大き目のサイズの画像が出ます。

桜の木の下で春を満喫するウルトラマイクロニッコール125mm F2.8

花曇りの日には音のない桜の本当の美しさが見えてくる

日本の優美な伝統色である桜の白を表現

独白の空気感と日本の湿度が写るレンズ

菜の花の春にウルトラマイクロニッコール125mm F2.8

日本の身近な四季にはウルトラマイクロニッコール

美しいレンズで日本の美しい季節を撮る

Back to RED BOOK NIKKOR


Copyright Akiyama Michio, Tokyo Japan 2001, 2016