Ultra Micro Nikkor 55mm F2 Fine Dream Lens

美しい超解像力レンズ
ウルトラマイクロニッコール55mm F2

The Superb Lens
Grand High End
Super Resolution
Nippon Dreaming
Ultra-Micro-Nikkor 55mm F2

美しいものは高性能

ウルトラマイクロニッコール55mm F2を2本置いてみる。
もともと、ウルトラマイクロニッコールはすべて美しい。
様式美が完結しているところは、さすがというしかない。

美しさの原点は鏡胴にある。じつに頑強に造られている。
超高精度なレンズブロックを収納するためには、 オーバースペックに思える真鍮削り出し鏡胴が必要だったのだ。 ライカL39スクリューマウントの加工は、極限まで精度が高い。 鏡胴の後半がクロームめっきの金属ブロックになっている構成は、 1960年代だから造れた美術品だ。

前期時代のウルトラマイクロニッコールは、絞りがあるのでカメラファンにはなじみやすい。
絞りも半絞りづつ小気味よいクリックがあり、より精密感をかんじる仕組みになっている。
美しさはレンズのコーティングにも表れている。
太古の群青から、山清水の蒼く清い、パープルバイオレット・コーティングだ。
美しいものは高性能といわれるが、 ウルトラマイクロニッコールを手に取り眺めてみると、事実であることがわかる。

美しいパープルバイオレット・コーティング

優れたメイド・イン・ジャパン (撮影年は2002年1月)

海外から里帰り

私のこれまでの調査では、 日本国内でウルトラマイクロニッコールが保存されている事実はない。 おそらく1970年代なら捕獲できたかもしれないが、もはや絶滅したと推測される。
救済するのが遅かったのか。

いや違う、日本では前時代の装置を破壊するのが、あまりにも早すぎるのだ。
米国からの報告によると、 ウルトラマイクロニッコール55mm F2を装着した測定機器をつい最近まで工場で使っていたという。 使っていた技術者本人からの情報であるから確かだろう。
「あのレンズは本当にすごかった」と語っていたが、わかる人はわかっていたようだ。

ここに写っている2本のウルトラマイクロニッコール55mm F2はともに前期型だ。
後期型になると、レッドポイント(赤い倍率表示)が刻印される。
M=1/4と赤い刻印があるのはレンズ番号No.560000番代で見られる。
レンズ番号No.550824とNo.550365では、外観上の違いはない。

2本とも海外から里帰りしたものだ。
左のレンズ(No.550824)はオランダから、 そして右のレンズ(No.550365)はイタリアから帰ってきた。 ものをだいじにするヨーロッパ諸国にいて生き延びていたレンズである。
私は、「よく生きていたね」と声をかけた。

希少性ゆえに消える運命なのか、希少性ゆえに残るケースもある。
そのためには情報が重要である。 さいきんの例では、 ウルトラマイクロニッコール55mm F2がオーストリアのウイーンに出現したのを確認した。
さすがに3本目は捕獲しきれなかったのだが、 本ウェブサイト経由の情報により、このレンズは日本の同好の方の手に渡りよかったと思う。

夏の終りの気配

秋空にウルトラマイクロニッコール

デジタルでよみがえる超高性能

米国の著名な自然写真家の方は、 ニコンのデジタル一眼レフにウルトラマイクロニッコール55mm F2の撮影セットで、 非常にクオリテイの高いマクロ撮影を行っている。
彼のウルトラマイクロニッコール55mm F2に対する評価はベタ誉めである。
開放から目ざましく鋭い、ずば抜けたレンズと断言しているが、 ウルトラマイクロニッコールに傾倒している職業写真家がいることは心強い。

デジタルで、前時代のスーパーハイエンドレンズがよみがえるのは、すばらしい。
もちろん現在でもニコンをはじめ各社から性能のよいマクロレンズが販売されているが、 高性能を越えて、極超高性能となると、 1960年代に製造されたウルトラマイクロニッコールしか選択肢がないのである。

超マクロ撮影では、条件がごくわずか変わっただけで写りが変わるほどシビアである。
こういった状況では、デジタルカメラの即時性が非常に効果的だ。
撮影してすぐ写りが確認できるため、その場で撮影条件の見直しが可能であり、 狙った映像をかくじつに記録することができる。

デジタルでウルトラマイクロニッコールがよみがえるのはうれしいことだ。
これはただの懐古趣味とか物好きではなく、超高性能を手にするためによみがえるのだから、 ウルトラマイクロニッコールの名誉回復といえる。
本物は朽ちないとは、こういうことなのだ。

テクニカルデータ

ウルトラマイクロニッコール55mm F2のオリジナル性能をみてみよう。
レンズの性能緒元が記載された一次資料にあたってみる。
日本光学が発行した当時のセールスマニュアルである。
日本国内向けの日本語版資料では情報が限られているので、 1968年当時にフォトキナで配られた資料も参照した。

私が所有しているのは、2本ともe線用のウルトラマイクロニッコール55mm F2であるが、 手元にはe線用のウルトラマイクロニッコール55mm F2、 それに、h線用のウルトラマイクロニッコール55mm F2hの性能緒元が記載された資料が揃っている。
一般にはあまり目に触れない情報ではあるが、 すでに公知となっている情報なので、ウェブ上で公開しておけばどこかで誰かのお役に立つだろうから、 両方のレンズの性能緒元を示す。

ニコンの工業用/産業用ニッコールレンズのレンズ構成図は、1970年代となると、 レンズ本体外観の各部の寸法のみを記載したものしか公開されていない。
レンズエレメントはブラックボックスになっているのだ。
しかしながら、1960年代は大らかなもので、精密なレンズ構成図が資料で公開されている。
同じように見えるが各部寸法が微妙に異なる。 ウェブ上ではすこし薄めの表示となっているので、 画像上をクリックし大き目のサイズで表示して確認していただきたい。

ウルトラマイクロニッコール55mm F2

−焦点距離: 55.8mm
−最大口径比: 1 : 2
−最小絞り: F8
−絞り目盛り: 2, 2.8, 4, 5.6, 8
−レンズ構成: 6群8枚
−基準倍率: 1/4X
−画角: 9.8°
−色収差補正: 546nm (e-line)
−口径蝕: 0% (F2にて)
−歪曲収差: 0.0% (英語版資料では 0.00% )
−解像力: 500本/mm
−原稿サイズ: 48mmΦ
−画像サイズ: 12mmΦ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 315mm
−フィルター径: 40.5mm P=0.5
−マウント: ライカL39スクリューマウント
−重量: 325g
−付属品: 前後キャップ、木製格納箱入
−当時の価格: 140,000円 (1969年1月)

ウルトラマイクロニッコール55mm F2のレンズ構成図

ウルトラマイクロニッコール55mm F2h

−焦点距離: 55.8mm
−最大口径比: 1 : 2
−最小絞り: F8
−絞り目盛り: 2, 2.8, 4, 5.6, 8
−レンズ構成: 6群8枚
−基準倍率: 1/4X
−色収差補正: 404.7nm (h-line)
−口径蝕: 0%
−歪曲収差: +0.01%
−解像力: 650本/mm
−原稿サイズ: 40mmΦ
−画像サイズ: 10mmΦ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 315mm
−フィルター径: 40.5mm P=0.5
−マウント: ライカL39スクリューマウント
−重量: 325g
−付属品: 前後キャップ、木製格納箱入
−当時の価格: 300,000円 (1969年1月)

ウルトラマイクロニッコール55mm F2hのレンズ構成図

1969年1月と記載された当時のニッコールレンズの価格表によると、 UMN 55mm F2が14万円。同じくUMN 55mm F2hが30万円となっている。 レンズの外観は見た目がまったく同じ。でも価格は2倍である。 価格が2倍になるほどの要素はよく知らない。

年次統計によると、1969年の大卒初任給は34,000円程度のようだ。 現在では単純に比較するとその6倍くらいだろうか。 そうすると、なんとなく当時でも高額なレンズだったことが理解できる。
高ければよいと言うものではないが、骨董品にしても、美術品にしても、 鉱物標本にしても、おもいきり高額なものが後世に残る。
世の中の現実を把握できるお年頃になった私からすると、そんなものなのである。
もちろん例外もあることは知っている。

見た目は小さいが本物志向のマクロレンズ

マクロ写真家にとっては最良の選択

不思議な妖気

ウルトラマイクロニッコール55mm F2を2本置いてみる。
空気がかわる。
レンズの持つ清浄作用のせいかもしれない。
地磁気の位置関係が動き、地球の存在に気がつく。 この、不思議な妖気はなんだ。

パープルバイオレットのコーティングも、いよいよ輝いてきた。
ガラスと金属でできた物体としてみたら、これはただのレンズであるが、 人間の想いとか魂の連鎖に光をみるならば、 レンズではなく豊穣の光装置に昇華していることに気がつく。

ウルトラマイクロニッコール55mm F2。 まだ捕獲の可能性が28mm F1.8に次いで高い。
世界のどこかで眠っている。寝た子を起こせ、と人はいう。
寝たまま、光を見ずに葬ることは人のすることではない。

深淵なパープルバイオレットのコーティング

ウルトラマイクロニッコール55mm F2で撮る

実際にカメラにレンズをマウントし、自然光線の下で撮影してみた。
ウルトラマイクロニッコール55mm F2は、ライカL39スクリューマウントだ。 特別のマウントアダプターを必要とせず、 市販のニコン純正のL-F接続リングを介してニコン一眼レフに装着した。 レンズはリバースせずに順方向にマウントしている。

この作例では、ウルトラマイクロニッコール専用のニコンe線フィルターを装着して撮影してみた。 ニコンe線フィルターは、コレクター的には非常に珍しいアイテムではあるが、 外観をみると、淡いオレンジ色のフィルターにしかすぎない。
詳しい話は本サイトの UMN 珍しい専用e線フィルターの話 を参照していただきたい。

さて、思いのほか、昭和の総天然色な重厚な色彩が出たと思っている。
今となっては古典的・歴史的フィルムの話ではあるが、デイライトのコダクローム25の色彩世界なのである。 黄色とか赤が重厚こってり1950年代の豊かなアメリカ風景な色彩だ。
実写画像をクリックすると少し大き目のサイズの画像が出ます。

此岸からみた彼岸の赤の風景
UMN 55mm F2にニコンe線フィルター (546.074 nm) で撮影

豊饒なる稲の国
UMN 55mm F2にニコンe線フィルター (546.074 nm) で撮影

日本はお米でできている
UMN 55mm F2にニコンe線フィルター (546.074 nm) で撮影

黄金の国 夢の輝き
UMN 55mm F2にニコンe線フィルター (546.074 nm) で撮影

第11族元素 原子番号79
UMN 55mm F2にニコンe線フィルター (546.074 nm) で撮影

2017年のあとがき

このコンテンツのオリジナルは2002年1月当時に書いたものです。
その後2016年のサイト移動に伴う大幅な見直しで、 当時1枚のみであった画像に、さらに未公開の画像を追加しました。
ウルトラマイクロニッコール55mm F2による実写の結果もレポートしました。
UMN e線用フィルターを使うという少々レアな撮影環境ではありますが、 なにか上昇気流な昭和の総天然色な夢が写っているような気がします。
古い金貨の撮影には相性がいいようです。 独特の色彩のデジタル画像が叩き出されました。

2017年の改版では、テクニカルデータを再編集し、レンズ構成図を追加しました。
何度も言及していることですが、この15年をふり返ってみると、 カメラの世界の事情はフィルム式からデジタルへ、 ダイナミックにそしてすごいスピードで激変しました。
オリジナル当時の文章では、いちいちデジタル一眼レフと限定して利点を述べてみたり、 現在では今さらながらの話が盛り込まれていました。
まだフィルム式の一眼レフカメラの方が主流であって、性能的にも優位であった頃の話です。
そんな背景から、今となっては見当違いな見解も述べられていました。
しかしながら、取り上げているデジタル一眼レフの機種も今となってはいかにも古い。
ということで、2017年の改版ではこのあたりの言説を少し整理しました。

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