MINOLTA Color Meter Full Metal Kid

初代ミノルタカラーメーター

最高級色温度計

一見すると露出計のようにみえるが、1970年代のアナログ針式の最高級色温度計だ。
露出計やストロボメーターではない。
色温度(ケルビン)を測るメーターだ。初代である。
なぜいまミノルタのカラーメーターなのか。

初代には初代の真面目で実直な良さがある

アルミダイカストの金属製

手にすると、 おなじみの露出計スタジオデラックスを二回り大きくしたようなボデイが手になじむ。 圧倒される存在感。吟味された材料を集積した精密機械。
500グラムと見た目よりはズシリとくる重量感は信頼できる。

スタジオデラックスと比べてこのサイズ

プラスチックに見えるボデイは、じつはすべてアルミダイカストの金属製だ。
グレイ系の光沢のあるラッカーでていねいに塗装されている。
メーターのカバーはプラスチックでなく、 硬質のアクリル板を削りだしたような透明さだ。
ダイアル類も金属旋盤加工で手がこんでいる。
操作感もカチリとしていて気持ちよい。
1つ1つ手仕上げなことは、文字板とかスーと動く針を見ればわかる。

ミノルタカラーメーターは、 色温度計として初めて受光素子に高感度シリコンフォトセルを採用している。 受光部の乳白色のキャップを外すと、 R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の測光用に独立した素子が並んでいる。 さらに照度測定用素子も独立して埋め込まれている。

受光部の乳白色のキャップを外したところ

一番上が照度測定用素子と思われる。 中央の2個のうち、左がB(青)、右がG(緑)。 下がR(赤)の色フィルターが付いている。 3色の測光用に、R(赤)、G(緑)、B(青)の測光用素子が、 それぞれ独立して埋め込まれているのが目で見て分かる。

3色の測光用に独立した素子が埋め込まれている

電池の話

電源はご法度のMR-9(H-D)型1.35ボルトの水銀電池を5個も使うというゴージャスさ。
水銀電池の確保がオーナーの悩みだ。
電池変換アダプターを使えばいいのだが、5個となるとこれは問題である。
海外生産の電池を調達して5個詰めているが、いつまでも使えないだろう。(注)
環境問題だから仕方ないが、せめて同じ形状規格で1.35ボルトの安価な電池が出ないものか。

(注)
このコンテンツを書いた2001年当時では、首都圏のカメラ量販店に行くと、 外国製の水銀電池がまだ入手できた。 ドイツの電池メーカーであるファルタ(VARTA)社製だ。1個200円だった。 今思うと国内在庫分だったのかもしれない。
だがしかし、直ぐに、環境汚染問題で輸入そのものが出来なくなったのか、 店頭から水銀電池は姿を消した。

MR-9(H-D)型1.35ボルトの水銀電池 (撮影年は2003年1月)

映像関連機能満載

色温度はケルビンで直読できる。
プロフェッショナルなカラー撮影の色補正用に、 どのLBフィルターとCCフィルター使えばよいか計算板で直読できる。
色温度目盛はミレッド等間隔目盛。
Lux目盛とft-C目盛で照度が測定できるところがたのもしい。

当時の値段であるが、1977年の価格表を見ると168,000円と出ている。
ほかの露出計が1万円代であったから、当時でもかなり高価だったといえる。
ミノルタカラーメーターのカタログをみると、カラー撮影の専門家、 大学や企業の研究室、映画をはじめとする映像関連企業、 カラーラボやフィルムメーカー、照明関係での使用を想定している。 いわゆる業務用、産業用のカテゴリーだ。

  • 形式:三色式色温度計
  • 測定色温度範囲:2,500ケルビン〜12,500ケルビン
  • 測定色温度計:32〜130,000ルクス
  • 測定精度:プラスマイナス0.2EV

持てばわかるたのしいメーター

アマチュアの使用は想定していなかったと思われるが、 持っていてこれほどたのしいメーターはない。
目盛りやダイアル類は各所で色分けされているが、 このカラーが非常に品がよいのだ。
機能美にあふれていて、いかにも高性能をおもわせるカラーリングだ。
これはデザイナーの仕事ではなく、技術者の仕事ではないか。

手になじむ金属製ボディ

ミノルタカラーメーターの取説は、もっとエキセントリックだ。
使い方がそれぞれ写真や図版を使って詳細に説明されている。
そこに1枚の写真が掲載されている。
当時のファッションできめた男がカラーメーターを持って、荒野に立っている図だ。

レーサー福沢幸雄みたいな精悍な顔つきで、 当時流行の最先端のイタリアファッションは太い襟のストライプ柄のダブルのスーツ。 では、なぜカラーメーターを持っているのか。これは謎だ。
1977年当時のカタログと、問題の取説に掲載されている話題の男を見ていただこう。
画像上をクリックすると大きい画像が出るが、無理して見なくてもよい。

1977年当時のカタログ



カラーメーターを持つ男


アナクロが時代を救う

アナログ式の色温度計はアナクロではあるが、 目的によってはこのミノルタカラーメーターと対抗できるものはない。
色温度測定マニヤには必須のアイテムだ。
1日の色温度変化を測ってみるのも新鮮だ。 午前から午後にかけても色温度は変化する。
とうぜん季節によっては、その値は大きく異なる。

木漏れ日の午前

なにもしないことをするのが一部の人のあいだでひそかなブームになっている。
このなにもしないとは、ただぼーっとしていることではない。
ただぼーっとしているのはなにもしないに値せず、 ここは1日色温度でも計測するのが正しい作法だ。

木漏れ日の午後

無意味な価値

1日の色温度を測定する。
1日では価値がないから、毎月1回は色温度の日にする。
そして1年間。10年でもよい。

それがどうした、という人にはおすすめできない。
一見価値がないようで、じつは無意味なことを真剣にやることに価値がある。
人の行動にすべて目的があって、価値を設定し、 見返りを求めるだけではつまらない。

こんな時代だからこそ、非効率的なものを愛し、グローバルスタンダードは自分でつくり、 自分で考えて自分の基準で感動しよう。
みんな同じほどつまらないことはない。みんな同じほど不公平なこともない。

ミノルタカラーメーターを手にしたら日向を歩きたくなった。
本物とはそういうものだ。

機能美に優れた本物は初代 (撮影年は2001年11月)

初代ミノルタカラーメーター図鑑

初代のミノルタカラーメーターのことについて言及し、 初めてネットに公開したのが2001年11月のことでした。 いらい15年が経過しました。 しかしながら、ネットを検索してみると、 初代のミノルタカラーメーターのことについて説明したり、 画像が掲載されているサイトやブログは見当たりませんでした。
読者の参考のために、図鑑的に見ていただけるよう、 カタログ写真風に撮影した画像を掲載しました。 何かのお役に立てることを期待しています。

上から見た初代ミノルタカラーメーター

底面はこんなかんじ

受光部を左奥に見て

受光部を右手前に見て

照度計のH-L切り替えスイッチ
X100=1,000 - 128,000 Lux    X1=10 - 1,280 Lux

色温度範囲切替ノブの位置と測定色温度範囲

メーターの中央にあるT1〜D2まで指標のあるノブが色温度範囲切替ノブ。 小気味よいクリック感でノブは操作できる。 その色温度範囲切替ノブの位置と測定色温度範囲を示す。

T1レンジ (タングステン 1)
400 - 300 MIRED   (2500 K - 3330 K)

T2レンジ (タングステン 2)
363 - 263 MIRED   (2750 K - 3800 K)

D1レンジ (デイライト 1)
270 - 170 MIRED   (3700 K - 5880 K)

D2レンジ (デイライト 2)
180 - 80 MIRED   (5560 K - 12500 K)

2台になっていた

1台あれば事が済むので1台あればよいと思っていた。
その後ではあるが、気が付くと2台になっていた。 そうだ、1台目は色温度計専用、2台目は照度計専用として使おう。 そういうことにしておいていただきたい。

今でも動く初代ミノルタカラーメーター

初代ミノルタカラーメーターは格調高く美しい

2016年の追記

このコンテンツのオリジナルは2001年11月に書いたものです。 当時は、画像を1枚きり掲載したものでした。
2016年の見直しにあたり、本文の内容に合わせて、当時に撮影した画像を追加しました。
さらにカタログすらも今となっては珍しいので参考に掲載しました。
読者に向けた参考資料として、 「初代ミノルタカラーメーター図鑑」も追加しました。
それにしても、現在見てもミノルタの初代カラーメーターは格調高く美しい。

お断り:
2016年の見直しにあたり、色温度範囲切替ノブの位置と測定色温度範囲の具体的数値を掲載しました。 情報のソースはミノルタ発行の使用説明書です。
ところが、日本語版と英語版を突合せたのですが、この数値が微妙に異なるのです。
4つのレンジのうち、T1、T2、D1で異なります。数値が一致していたのはD2レンジだけでした。
日本国内向け製品(日本語版)と海外出荷向け製品(英語版)の測定色温度範囲が異なるとは考えにくいので、 誤植と思われます。
いまとなっては、どちらの数値が正しいかを確認する手段を持ちませんので、 当サイトでは日本語版は日本語版の使用説明書(資料番号NO 0F1A)に記載されている数値を掲載しました。 また、英語版サイトの方は英語版の使用説明書(資料番号CM-106E)に記載されている数値を掲載しました。 どこがどう異なるかは確認してみてください。
それほど気になる違いではありませんが、 資料性の高いウェブサイトを公開している者の義務として、 複数のソースを確認突合せといういつもの作業の中で気づいたことでした。

チョーセイさんのカラーミーター作法

2017年は弥生三月のことである。
Facebook上で、 写真家の田中長徳さん(チョートクさん)と ニューヨーク在住の映画監督である船原長生さん(チョーセイさん)が 「ダブル8をドアストッパーにしない市民の会」という結社をつくり活躍されている。
お前も入れとのお誘いがあり末席に置いていただいた。
主にムービーカメラ(キャメラというべきか)の話題をディスカッションしており、 プロフェッショナル向け16ミリ撮影機から、 ダブルランスーパー8機や時代のダブル8機といった通好みの話題が満載の ディープな世界が展開されている。

田中長徳さんのブログ「チョートクカメラ日記」には、 「マンハッタンの怪人チョーセイさん」として船原長生さんの活躍ぶりが伝えられている。
船原長生さんはもともとプロフェッショナルなフイルムのディレクターであるのに、 最近ではRED(プロフェッショナル・デジタルシネマ)からダブルエイト機に「グレードアップ」して、 新しい映像表現を探求している。
クルマに例えると、F1カーから軽自動車にグレードアップというところだろうか。
たんにプロが素人のふりをして楽しむ趣味な話ではなく、洗練された映像表現の先にある道を突き進んでいる。 いまの時代にあっても実験なのである。

船原長生さん
Photo: Copyright (c) 2017, Chosei Funahara, All Rights Reserved.

チョーセイさんのミノルタ・カラーミーターII
Photo: Copyright (c) 2017, Chosei Funahara, All Rights Reserved.

上の画像で下に置かれた雑誌は「ICG MAGAZINE」。
International Cinematographers Guild、 アメリカの映画のユニオン(組合)に入るとこの雑誌が毎月送られて来るとのこと。

私がミノルタカラーメーターの話題をアップしたら、船原長生さんがコメントを付けてくださった。
プロの映画人の経験と体験に基づくお話であり、ここに紹介させていただきたい。

Chosei Funahara

MinoltaのカラーミーターIIを持っています。 アナログの方が全然美しいです。
デジタルになって簡単に読めるようになっていますが やはりハリウッドのギャファーの持っていなければならない必需品です。

一つ目に:
スタジオでセットを組んで、プラクティカル、実際に光を放す室内の大道具小道具で、 アークライトや蛍光灯でも2700ケルビンから6500まであり、特にマッチのする光は1700ケルビン、 ろうそくは1850ケルビンと、全く肉眼とは違う色温度でスタジオで使われるデイライト、 タングステンとボルテージによって秒な変化する光源とマッチするために必ず必要となってくるので肉眼では見分けられません。

二つ目に:
ロケでの日の出、日没、日の出1時間後、昼光、曇り、 特に夏の空を測ると-30000ケルビンと言う途方も無いと全く違う色温度になるため、 Mired (Micro Reciprocal Degrees: 100万を色温度で割る計算方式) systemで読みます。

カラーミーターは撮った後フィルムに出てしまう不手際を防ぐためです。
デジタル撮影になった今でも色温度は重要視されています。
カラーミーターはミノルタが独占していました。

単純な撮影には必要としませんが、 撮影の規模が大きくなればなるほど必要になる不思議な必需品です。 目測では絶対に色温度は測れません。

コメント中に、ハリウッドのギャファーとありますが、 ギャファー(gaffer)とは照明から露出の計測までを担当する映画製作スタッフのことらしい。 いろいろと勉強になります。

映画製作の現場におけるカラーメーターの使い方を教えていただき、 さらに画像を提供くださいました船原長生氏に感謝を申し上げます。 ありがとうございました。

船原長生さんとボレックスH8レフレックス
Photo: Copyright (c) 2017, Chosei Funahara, All Rights Reserved.

チョーセイさんのポートレイトを最後にもう1枚。
画像には「週末プロ風H-8ユーザー」とのキャプションが付いていた。
映画のプロフェッショナルはアマチュアのフリをして、 ニューヨークはマンハッタンでフィルムを廻し続けているのだ。
キャメラはスイスの銘機ボレックスH8レフレックス。 ダブル8フィルムシネカメラがアマチュマのものだとしたら、その最高峰に君臨する。
ザハトラー(Sachtler)に載せているのでプロであることがバレバレではあるが。
ただし、ザハトラーといっても今のそれではなく、 チョーセイさんが1980年代にアリフレックス16SRを駆使するために購入された映画機材用のそれである。
当時は非常に高額だったと聞きました。

さて、初代ミノルタカラーメーターの話から、映画のプロフェッショナルのキャメラ談義まで。
マニヤな話はダイナミックに展開するものなのである。

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