MACRO Nikkor 35mm F4.5 and Bellows Set

マクロニッコール35mm F4.5とニコンベローズPB-4

Summer Vacation
Boy's Life
The MACRO NIKKOR 35mm F4.5
Powered by Bellows PB-4
For Scientific Photographer

ベローズには専用超マクロレンズ

このきわめて小さいニッコールレンズをニコンベローズ装置PB-4にセットしてみた。 旧型のアオリが可能なベロース装置だ。 マクロニッコール35mm F4.5は、このサイズでニコンの大判カメラの専用レンズだ。 撮影倍率8倍から20倍のハイパワーだが、4×5インチ判をかるくカバーする。

一般的な顕微鏡の対物レンズと同じ標準RMSネジマウントを持つマクロニッコール35mm F4.5を ニコン純正の「対物リング」にねじ込む。 さらに、「対物リング」を「L-F接続リング」にねじ込む。 ねじ式は、ニコンFマウントと結合する。 この写真に写っているのは、初期型の「対物リング」と「L-F接続リング」だ。 光沢のある金属仕上げが、後期型に比べると重さをかんじる。 金属の素材とかが変更されているようだ。 初期型は3本のビスがマイナスネジ。機能的には差がない。

マクロニッコール35mm F4.5とベローズ装置
(撮影年は2001年8月)

生まれはマルチフォト

大型マクロ写真撮影装置(MULTIPHOT)は、1968年にリリースされた。 1994年くらいまでカタログに掲載されているのを確認している。 ほぼ同じスタイルで長年製造されてきたようだ。 ただし、専用マクロレンズが4本ついたフルセットで1,809,000円と高価だった。 1993年当時の価格である。

高価ゆえ、個人で購入した人はごくわずかだろう。 だいたい数が、企業の開発部門とか病院での標本撮影、大学での研究活動で使われたと思われる。 中古品であっても、日本では市場で見かけることはとても少ない。 製造終了となった今では、レンズだけでも探し出して、 ベローズにセットして使いたいものだ。

ただ気になるのは、同じコンセプトの新しい製品がニコンから出ていないことだ。 顕微鏡写真でもない、かといって一眼レフの接写ではパフォーマンス不足。 こういう局面では大型マクロ写真撮影装置(MULTIPHOT)しか出番がないのだ。 4×5インチ判OK、35ミリ判当然最高性能の光学設備である。 レンズ1つとってみても、たしかにカメラ用のレンズとは異なる様式美をかんじる。

マルチフォトの専用マクロレンズをフィールドで使う贅沢な午後

ニコンから正式にレンズの性能諸元が公開されていないため、レンズ構成図ほか不明である。 製品カタログや価格表など公知の範囲で得られる情報と実測できる数値データをまとめてみた。

マクロニッコール35mm F4.5

−焦点距離: 35mm
−鏡胴帯の色: 水色
−最大口径比: 1 : 4.5
−絞り目盛り: 1、2、3、4、5、6
−基準倍率: 12X
−標準使用倍率範囲: 8X 〜 20X
−マウント: 顕微鏡対物RMSマウント
−全長実測:
   30.80mm (製造番号 36000番代)
   30.75mm (製造番号 36100番代)
−最大径実測:
   24.10mm (製造番号 36000番代)
   24.00mm (製造番号 36100番代)
−重量実測:
   62.0g (製造番号 36000番代)
   62.5g (製造番号 36100番代)
−付属品: プラスチック製ケース(顕微鏡対物レンズ収納型)

−発売時期: 1968年
−当時の価格:
   17,400円 接続リング付(1970年 2月20日版価格表より)
   17,400円(1970年 7月10日版カタログより)
   20,000円(1972年 7月01日版カタログより)
   20,000円(1973年 1月)
   26,000円(1973年12月)
   46,000円 対物リング、接続リング付(1979年10月)
   58,000円 対物リング、接続リング付(1980年 4月)
   64,000円 対物リング、接続リング付(1993年6月1日版価格表より)

大人が使いたいレンズ

マクロニッコール35mm F4.5。 レンズのボデイには、みず色のラインがエナメル流し込みで入っている。 夏涼しげに、木陰で使いたいレンズだ。 ベローズを伸ばしてピント合わせをしていると、 大人なのに夏休みの自由研究をやっているような気分になる。

木々を通る風が涼しくなってきたと思ったら、遠く雷雲が近づいているやうだつた。 早々とベローズ写真装置を片付けて、こういうときは生ビールでも飲むしかないか。

赤い西瓜にマクロニッコール
(撮影年は2004年7月)

大人なのに夏休みの自由研究をやっている。それでいいことにしよう。 信州は夏。冷えた赤い西瓜が甘い。 マクロニッコール35mm F4.5。 旧型のベローズ装置にぴたりとキまる。 この写真をみて、ヒグラシの声が聞こえてきたら、夏休みの自由研究はおわる。

大型マクロ写真撮影装置(MULTIPHOT)。 専用マクロレンズであるマクロニッコールだけでも探し出したい。 小学生の絵日記気分でベローズにセットして使いたいものだ。

大人だって夏休みの自由研究をやってもいいんじゃないか

ミラーレスカメラによる撮影方法の開拓

もう昔のこと。2010年頃の話。 フランジバックが短く画像面積(撮像素子のフォーマット) の小さいミラーレスカメラが新製品として市場に出て来たときに、 ニコン研究会ではいくつかの産業用ニッコールレンズおよび工業用ニッコールレンズを装着して、 実写テストをしてみた。

2010年5月のニコン研究会例会では、 マクロニッコール35mm F4.5をベローズを介さずに、 「対物リング」だけで直接カメラに装着してみた。 ご覧のとおり、ピントが出ているのがおわかりいただけると思う。 簡単で高性能なマクロ写真撮影装置の出来上がりとなる。

マクロニッコール35mm F4.5を直付け
(撮影年は2010年5月)

ピントが出ているのがわかる

オモチャにしか見えない可愛いレンズ

これもお約束のマクロニッコール作法である

よいものはいつまでも残る

古文書の上にマクロニッコールを置いた。もうそれだけでアートになってしまった。 世界的にも汎用の、顕微鏡対物レンズマウント(RMS マウント)であるマクロニッコールは、 これからも現役のまま生き続けるだろう。 どんなカメラにもアダプター経由でマウントが可能だ。 大判の4 x 5 インチ判から35ミリ判までカバーするので強い。

ニコン Z カメラはこの種の科学写真用レンズと相性が良く親和性がきわめてよい。 よいものはいつまでも残るし、いつまでも第一線で使い続けることができる。

マクロニッコール35mm F4.5

時代を超えたマクロニッコールの性能と美しさ

とかなんとか。いつまでも使えるなどと過酷なことを言ってしまった。 マクロニッコールは1968年に社会人となった。 1968年から仕事をしている。令和の時代となった今、すでに勤続50年以上ではないか。 企業に勤めたヒトに例えると定年退職して再雇用の5年もとっくに過ぎたレンズ年齢だ。 すこしはゆっくりさせてあげたいものだ。

しかし、なにせ後継者がいない。 全世界的にも顕微鏡対物レンズマウント(RMS マウント)の拡大撮影用マクロレンズが、 しばらく前に全員リタイア(製造販売終了)してしまって存在しないのである。 海外勢ではツァイスのルミナーとライツのフォタールが双璧だった。 日本国ではニコン、キヤノン、オリンパス、ミノルタ、トプコン、等々、 豊富に製品化されたが今は誰も残っていない。

1970年代に NCP/VS アセンブラー(IFKASM/CWAX00)で書かれたデータ通信制御プログラムが誰も読めず、 しかたなく書いた本人、 定年退職した昭和の老人が呼び出されて令和の若手ITエンジニアを指導している風景を想像した。

2022年のあとがき

オリジナルのコンテンツは2001年10月当時に書いたものです。 RMSマウントの写真撮影用ニッコールレンズのことは、このコンテンツを公開する前は、 一般のカメラファンにはほとんど知られておらず、 情報もネットではまったく得ることができませんでした。 しかし、一眼レフカメラにベローズ装置を介してマクロニッコールで撮影している姿を掲載すると、 反響が大きいことを実感しました。2001年のことです。

その後は、この一連のレンズに興味を持たれるカメラファンが増えてきて、 レンズに関する情報もシェアされるようになってきました。 2001年当時は1枚きりだった画像ですが、 2016年のサイト移転に伴う見直しにあたり、その後撮りためた画像を追加しました。 2020年にはレンズの後継者問題についてふれてみました。

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